見出し画像

薬師丸ひろ子「Woman”Wの悲劇”より」

いろいろな方々が絶賛されてるこの曲ですが、わたしにとっても神曲です。

https://www.youtube.com/watch?v=56qIgzffiB4

松本隆作詞、呉田軽穂ことユーミン作曲、松任谷正隆編曲。


ユーミンご自身2018年にサカナクションの山口一郎さんとの対談で、「薬師丸ひろ子さんの「Woman “Wの悲劇”より」っていう曲があるんですけど、同じコンビなんだけど、松本隆さんと。それは人に書いた中でも神曲だと思ってる。」って話してるくらい。

(https://www.tfm.co.jp/lock/bbb/smartphone/index.php?itemid=11254)

音楽的には、特にサビの部分、

ああ、時の河を渡る船に
オールはない 流されてく
横たわった 髪に胸に
降り積もるわ 星の破片(かけら)

のロングトーン(冒頭の「ああ」だったり、「時の河を」の「を」の部分)が全てテンションノートになってるところが大好きです。

わたしがネットで見つけた限りでは、その点も含めて、この尾崎陽子さんの解説が無茶苦茶楽しかったです。

そして、上記の山口一郎さんとの対談中でユーミンが言ってるとおり、この時期の薬師丸ひろ子の歌唱が実に素晴らしい。真っ直ぐに伸びるハイトーンが、真っ直ぐに歌を聴き手の心に突き刺してくるようで、本当に聴き入ってしまいます。

しかし、わたしにとってのこの神曲の真髄は、松本隆の詞です。

もう行かないで そばにいて
窓のそばで腕を組んで
雪のような星が降るわ
素敵ね

という冒頭をはじめ、いわゆるAメロ部分は、歌の主人公たる女性の「現実的な状況におけるセリフ」になっている一方で、サビ(特に1番)

ああ、時の河を渡る船に
オールはない 流されてく
横たわった 髪に胸に
降り積もるわ 星の破片(かけら)

なんですか、これは!美しすぎるでしょ!主人公の心情についての直接的な描写は一切なく、想像上の情景描写だけで、主人公の心情を描き出す。こういう手法って日本に限らないのかも知れませんが、日本古来の和歌がやってきたような情景描写に心理表現を託す(「ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ」みたいな)、というスタイルの現代版最高傑作ですよ、これは。

素晴らしいです。いつ聴いても。ほんとうに。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?