数学というメガネをかける
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感想
本当か偽か、もやもやする情報が社会にあふれている。情報はやっかいだ。手で触れられない。臭いも嗅げない。賞味期限もない。
ではどうするのか。頭のなかで触るのだ。
あるデータを見せられた時、私たちは考える。考えるが限界は来る。そんなときに数学というメガネは視界を広げる。
運動量と健康の関係性を表すデータを医者が見せてきたとしよう。たとえば、こんなふうに。
健康診断を受けるために問診票を書いていると「あなたは週に何日運動をしていますか?」という問いを見つけた。選択肢は0~1日、2~3日、4日以上だ。「テレワークだから出勤すらしていないな。土日も家で動画を見ているだけだし。せいぜい買い物くらいだ」とAさんは思った。0~1日を選んで問診票を医者に提出した。後日、医者はAさんに言った。「週に4日以上運動している人に比べて、0~1日の人は高齢になってからの医療費が増す傾向にあります。この機に運動をはじめてみてはいかがでしょうか」Aさんも確かにと思い、自分にもできる運動を探し始めた。
さて、この医者の言っていることは正しいか。
数学のメガネは違和感を見出す。冷蔵庫を開けてみかんを取り出したときにカビが生えているのを発見する感覚と同じだ。
「やばい、なにかおかしい!!」
カビを見つければ、その部分だけを包丁で切り離して、残りの部分を食べられる。そうでなければ腹を下す。
この医者が言っているように、運動と医療費の間には相関関係がある。気温が高いほどアイスクリームは売れるというような関係のことだ。ただ相関関係では不十分だ。相関関係は情報空間内にあるカビだ。あらゆるデータに住み着き、それを腐らせる。
運動すると健康になって医療費が下がる人もいる。そうでない人もいる。運動と健康には因果関係があるのか。「重力がある、だからりんごが木から地面に落ちる」のように「運動する、だから健康になる」と言えるのか。
数学のメガネは情報の中にあるカビを発見する。それは今後ますます情報の真偽を自分で確かめる必要のある時代にぴったりな道具だろう。
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