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tari textile BOOK 後編 #2「I ♡ T」作品NO.10、11

作品NO.10、11 

作品NO.10

 
→経糸:梅(石灰)、梅(おはぐろ)

 緯糸:梅(石灰)、梅(おはぐろ)

 整経本数308本、半反 


作品NO.11

 
→経糸:ウメノキゴケ(木酢酸鉄)、ウメノキゴケ(石灰)、ウメノキゴケ(みょうばん)

 緯糸:ウメノキゴケ(木酢酸鉄)、ウメノキゴケ(石灰)

 整経本数308本、半反

 

 

 それでは、まずこの2つの作品をご覧ください。1つ目の作品はピンクと紫が印象的な、正方形のやや大きめの格子柄。もう1つは白とオレンジ色のしましまが特徴的で、先ほどの格子と比べると小さめで長方形です。

 作者は、この作品を2つでワンセットのものとしてつくりました。

 1つ目の方は、梅の木の枝を使って染色しています。同じ梅の木の枝で染めてから、媒染剤を変えて2色に染め分けました。

 2つ目の方は、梅の木は梅の木でもなんと、その木の表面に生息しているウメノキゴケを使って染色しました。こちらも媒染剤を変えて染め分け、ウメノキゴケの色だけで縞を表現しています。

 そしてこの2つの作品、「梅とウメノキゴケ」、「紅っぽい布と白っぽい布」、「正方形と長方形」、「大きい格子と小さい格子」というふうにペアになっているのです。片方1つだけでもきちんとした作品ではありますが、2つを一緒にしたとき、なんだか1つの時よりも不思議と生き生きした印象になると思いませんか。

 作者はこの2つの作品で、異なる布を組み合わせる面白み、組み合わせることで新たに生まれる化学変化のようなものを、発見することができました。

 

 また、この2つの作品に使用した梅の木とウメノキゴケは、作者の当時の住居「農村滞在施設 棉ばたけ」のすぐ近くで採集したものです。いくら住み慣れたお気に入りの住居のすぐ近くとはいえ、白昼堂々とビニール袋片手に梅林でウメノキゴケを採集している姿は立派な怪しい人でしたが、5年もそこに住むうちに近隣住民の理解も深まったのか、そっとしてくれていたようです。

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