見出し画像

【日記】 割れたのは...

真夜中を見上げた瞬間、乾いた地面へダイビング。
心が一瞬割れたが、元に戻った。
スマホが割れた。画面が割れた。

どこか痩せ細ったあなたを手に持つ。感触はもう覚えていない。もうすぐ梅雨だが、それでも明るく振る舞う様にする。そんなあなたはおやすみモードかな。いや、むしろ冷たい水溜まりが良かったのか。どっちみち画面以外は割れずに済んだらしい。

綺麗に割れたおかげか、再起動すると、見事なまでの唐草模様がライトアップされる。スマホが豪華になったみたい。西洋風な絢爛さを身につけたのも束の間、あらあらフリック入力しているうちに体温も取り戻したみたい。よかった。

何気なく再び使い始めて思ったが、割れたおかげで豪華絢爛になったわけではないみたい。どうやらあなたの豪華さはすでに持ち合わせていたみたいだけど、落とすまで全然気付かなかった。誰からか連絡が来ると緑色に点滅するのね。動画を開けば人がいるのね。何か思いつけば、すぐにメモを取れるのね。

この世は既に飽和状態。何事においても基準のハードルが一昔前より少し高い状態でスタートしなければならない。全く当たり前のように思っていたけど、あなたは豪華な技術を持った一流の選手だったのね。落としてよかった。「当たり前じゃないからなこの状況!」みたいなね。

改めて、落としてよかった。そして、落としたことで見えてきた、本来のスマホの豪華さに、別に語りたいことなんてないくらいある程度満足している自分の本音とが重なり合った。本来そうだよな、あなたはそうだよな、ごめんごめん。

本当は自分の中にある、「周囲への期待」と「不自然な向上心」が割れたのかな。

あなたを使い始めて約1年。とうとうこの日がやってきた。ある意味待ちわびたXデー。思えば、私はスマホを代々割ってきた。

でも、なぜか今回に限っては、割れた瞬間の受け入れるスピードが異常に早かった。それは金曜日の夜だったからなのか、経験が増えてきたからなのか。スマホへの執着が減ってきたからなのか。

私はこの日、少しだけオジさんに近づいた気がした。それはそれはとても自然な拾い方で何食わぬ顔で駅へと向かった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?