【音楽文】Thank you,ROCK BANDS!&ROCK BAND!〜好きになって良かった…8兆回そう思える、UNISON SQUARE GARDENのトリビュートライブ〜【再掲】

※この記事は2019年に投稿サイト「音楽文」に掲載された記事を加筆・修正したものです。




UNISON SQUARE GARDENは、この7月で結成15周年を迎えた。舞洲での記念ライブ「プログラム15th」も、記憶に新しいだろう。


そんな彼らをお祝いするために、実力派アーティストがユニゾンの楽曲をカバーしたトリビュートアルバム「Thank you, ROCK BANDS! 〜UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album〜」が発売されて1ヶ月が経った。

  
そんなときに僕は、日々生活している大阪を飛び出して、東京の新木場STUDIO COASTにいた。

8月28日…今日この場でトリビュートに参加したアーティストを、ゲストに迎えてのライブが始まる。
それを見届けるために東京にやって来た。

 
15年間やってきたユニゾンのライブは、大きく分けて2つある。

ワンマンか対バン形式か…その2種類だけだった。
けれども、今回だけは違う。

ユニゾンが演奏する楽曲に、各アーティストが参加するのだ。

 
その事実に対して、一体どんなライブなるのか…全く想像がつかないまま、当日を迎えることになった。

少なくとも自分にとっては、ユニゾンを好きになって、初めての経験だった。

僕は15年かけて作られてきた、揺るぎない彼らのスタイルが大好きだ。

だからこそ、期待と不安が入り混じりながら、会場に入った。
 
ステージ中央にはキーボード、奥にはドラムセットが2つ…他にも普段見かけることのない楽器が、ステージ上で音を鳴らす。

そんな光景を目にするだけで、いつもとは異なるライブになることが予想できたし、逆にどんなライブになるのかますます予想ができなくなった。
  
そして、開演時刻の19時を迎える。

会場の照明が消え、普段通りに登場SEである「絵の具」が…流れなかった。
 
登場したのは、パスピエの成田ハネダ(key.)だった。

ユニゾンではない、ゲストアーティストの登場に、思わず会場が静まり返る。

そんな僕らを横目に、軽快なピアノソロを披露していく成田ハネダ。

そして、その演奏が終わると…
 
聞き覚えのあるメロディが。そう、ここで「絵の具」のピアノ演奏とともに、本日の主役であるUNISON SQUARE GARDENが登場した。

圧巻の演出に、思わず心の中で驚嘆の声をあげてしまう。

だが、驚くべきはそれだけではなかった。
  
成田のピアノの演奏から入るこの曲は、彼らがトリビュートでカバーしたものではない。

1曲目は「harmonized finale」。誰もが予想しなかった曲が登場したのだ。

当然、会場からは大歓声が巻き起こる。

近くで見た、斎藤宏介(Gt.&Vo.)のニヤっと笑うしたり顔は、今でも忘れられない。

そのまま2番に突入すると、パスピエの大胡田なつき(Vo.)が歌いながら登場する。

そのとき僕は、このライブの意味にようやく気づく。
 
パスピエから出演する最後の1人である、三澤勝洸(Gt.)が登場すると、そこからは、もう怒涛の展開だった。

鈴木貴雄(Dr.)のお約束の「1.2.3.4!」のカウントが追加された、トリビュートでカバーした曲「場違いハミングバード」

斎藤宏介がハンドマイク片手に、大胡田とともに歌う、パスピエの代表曲「S.S」

息もつかせぬ展開はいつも通りだが、内容は普段とまるで異なっていた。
 
それはパスピエが退場しても変わらない。


続いて登場したのは、a flood of circleの佐々木亮介(Gt.&Vo.)。

ビール片手に登場する様は、ユニゾンのライブではお目にかかれないロックな光景。

挨拶がわりといわんばかりに、激しいパフォーマンスで、a flood of circleの楽曲である「シーガル」を歌いあげる。

そして、佐々木自身が歌うことを熱望した曲、「WINDOW開ける」。

普段のライブではありえない、サビでの大合唱もこの日ばかりは心地の良いものに聞こえた。

斎藤の嬉しそうな笑顔を見て、ああ、今日はお祭りなんだなと再認識させられた。

最後は、トリビュートでもカバーした完全無欠のロックンロール「フルカラープログラム 」

原曲の虹を描いた先の太陽みたいな歌声は、観客の心を否が応にも熱くたぎらせていた。

きっと最初で最後だろう。ユニゾンのライブで、客席にダイブしたアーティストは。

でも、だからこそ…このライブは何も恐れずに楽しめるものだと教えてくれたような気がした。


 
3組目、THE BACK HORNの山田将司(Vo.)が登場する。さながら地獄を表現したような演奏の「BUSTER DICE MISERY」は、山田の妖艶な歌声と絶妙にマッチしていた。

菅波栄純(Gt.)も登場し、ユニゾンの3人がバンドを始めた当時、THE BACK HORNの新曲だった「涙がこぼれたら」を披露する。

そして、トリビュートでもカバーした「シャンデリア・ワルツ」は、原曲とは声質がまるで違うはずなのに、同じように背中を押してくれる熱を持った何かを感じさせられた。


 
4組目に現れたのは、the pillowsの山中さわお。田淵智也(Ba.)に「元気か!」、斎藤宏介に「相変わらず可愛いな!」なんて言えるぐらいには、風格を兼ね備えた雰囲気が印象的で。

僕らにとっては聞き覚えのある前奏とともに、pillowsの名曲である「RUNNERS HIGH」が披露されると、カラオケで練習を繰り返したという「Cheap Cheap Endroll」を迫力あるパフォーマンスで歌いきる。

圧巻なのが、「シューゲイザースピーカー」だった。命をすり減らすように歌う姿は、田淵智也が影響されるだけの力強さが込められていた。

"どんなヒットソングでも 救えない命"があるからこそ、"音楽は今日も息をする"…聞き慣れたフレーズがどこまでも僕らに突き刺さっていく。


 
いよいよライブも佳境になった場面で登場したのは、東京スカパラダイスオーケストラ。

今回のライブでは、唯一全員での参加。

12人が並ぶ姿は壮観だった。

鈴木貴雄と茂木欣一(Dr.)のドラムソロの後に披露した、スカパラの「Paradise Has No Border」はお祝いにふさわしい盛り上がりを見せてくれた。

バチバチに仲が悪いなんて形容するユニゾンの3人が、ステージ中央に集まってキメる光景なんて多分一生見れない。

初めて演奏された「愛があるかい?」

その合間に歌われた「白と黒のモントゥーノ」

トリビュートアルバム収録曲の「桜のあと(all quartets lead to the?」

その至る所にユニゾンへの愛とスカパラへのリクペストが散りばめられていて、言葉では形容しきれない多幸感に満ち溢れていた。

ひとつだけ言えるのは、12人が本当に楽しそうな顔で演奏をしていたこと。


 
この豪華なアーティストの最後を飾ったのは、ユニゾンとの親交も深い、LiSAだった。

自身が歌うことを望みながらも、みんなのために違う選択をし、トリビュートには収録されなかった「オトノバ中間試験」を颯爽と登場して歌う。

"息継ぎがてんでないじゃんか"の部分で田淵に詰め寄る場面は盛大に笑ったし。

"あのね歌ってるのは怪奇怪奇な斎ちゃんなんで 呆れるまでユニゾンに任せといて"

という素敵すぎるアレンジに

どこまでも彼らに任せていきたい…そう改めて思わせてくれた。

誰もが聞きたかったLiSAの「Rising Hope」は、斎藤宏介の声も入り混じって、言葉もいらないぐらいの感動に打ち震えた。

思わず「最高…」って呟くぐらいには。

ライブの最後を締めくくる「オリオンをなぞる」は、まさにこの日の集大成で。

普段から田淵の楽曲を歌う彼女だから出来たことだが、ユニゾンの曲なんだけど、それだけじゃない…2組の魅力を存分に引き出したパフォーマンスを魅せられた。
 
最後の鈴木貴雄が15回ドラムを鳴らす姿に、終わりを感じるとともに、今日この場所に居合わせた幸せを存分に噛み締めていた。
   
僕が気づかされたこのライブの意味は、とてもユニゾンらしさに溢れていると思う。

今年は初めて彼らが「祝ってくれ!」と周囲を巻き込んで、様々なことを企画していく年になった。

それは、いつも通りの揺るぎない「自分のため」のものだし、彼らが誰かのために演奏することはおそらくありえない。
 
でも、周囲を巻き込んで、みんなから祝ってもらって…そんななか適当な企画や演奏で、3人が納得するわけがない。

あくまで「自分のため」であることは、きっと変わらないけれども。
 
自分たちが楽しむために、あれだけの曲数を練習して臨むし、必要があればそれを増やすことも厭わない。

それは、祝ってくれるゲストが気持ち良く参加してくれるためでもあるし、僕ら観客が最高に楽しめるために必要だと感じているからだと思う。
 
自分たちが楽しむことのなかには、そういった繋がりを、限りなく大切にすることも含まれているんだ。

少しまわりくどいかもしれないけど、彼らなりの「祝われる側の矜持」を垣間見た気がする。

ただ祝われるだけなんて、普段の彼らからは確かに考えられないことだ。
 
そんな思いを込めて、企画したトリビュートライブ。

終演後のアンコールで、斎藤宏介は目に見えて疲労していた。こんなに疲れた彼を見たのは初めてだった。

それだけ凄まじいライブだったことを物語っていた。
 
そんななかでも、あくまで通常通りの演奏を披露したのはさすがだし、ついに終盤で登場した「プログラムcontined(15th style)」は、このお祝いムードをより一層高めてくれたと思う。

普段はあまり3人に言葉をかけない僕も、思わず「おめでとう!」と叫んでしまうぐらいには。
 
こんな唯一無二の素敵なライブは、多分そうそう開催されない。

アンコールのMC、斎藤宏介は「今日だけでUNISON SQUARE GARDENで良かったって、8兆回ぐらい思いました」と言った。

それは僕らも同じで。

UNISON SQUARE GARDENを好きで良かったって、8兆回ぐらい思えた時間だった。
 
そんな素敵なライブを作り上げるために、UNISON SQUARE GARDENを祝うために、集まってくれたアーティストには感謝してもし足りない。

でも、同じように15年間変わらずに歩き続けてくれて、今日と言う日を迎えてくれたユニゾンの3人にも感謝の気持ちを伝えたい。
 
だから、僕はこう言うんだ。


  
Thank you,ROCK BANDS!&ROCK BAND!






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というわけで、今回は3年前に行われたトリビュートライブ1日目の音楽文を再投稿しました。

記念すべき私の初遠征でした。

基本的にロックバンドは街に来るものだと思っているので、ライブ参加が日常になってからも遠出をすることはあまりなく、関西圏内に範囲を収めて楽しんでいました。

それでも、15周年イヤーの催しは非常に豪華で、BsSs0や ftH7…繁忙期に行われたイベントにことごとく参加できず悔しい思いをしたこともあり、何としてもこのライブだけは参加したいと初の遠征を決め込むこととなりました。

仕事が閑散期だったこともありますが、他のイベントでやった曲は多々あれど、他アーティストと同じステージに立つことが今後どれほどあるのか…この貴重な機会を逃したかったのが本音で、今まで自重していた遠征を解禁するには十分すぎる理由でした。

結局2日あるうちのどちらかしか行けそうになかったので、馴染みあるアーティストが多かった1日目を選んで応募し、何とかチケットもゲットすることができました。

初の遠征、時間の潰し方がわからずに苦労したり、充電がライブ終わった後に切れてしまって、これホテル着けるんか…なんて思ったりしたけれども、そこでSNSのフォロワーと会ってお話もしたり、楽しい思い出もたくさんできました。うん、いい日でしたね。

肝心のライブも最高で…聞きたかった曲、聞けると期待していた曲、聞けると思っていなかった曲、自分の望みを全て満たしてくれるライブに笑顔こぼれまくりでした。

個人的なベストシーンはやはりスカパラとLiSAでしょうか。

「Paradise Has No Border」でステージ中央に駆けてくる鈴木貴雄なんて、もう一生見られないかもしれないし、ユニゾン3人でキメる場面はもはや奇跡でしかなかったです。

思わずそのシーンをiPhoneの待ち受けにしていたのはここだけの話にして欲しいし、未だに職場のUNCITYのカレンダーでその写真の日が来るとニマニマしそうになっちゃいますね。

「オトノバ中間試験」の

"あのね歌ってるのは怪奇怪奇な斎ちゃんなんで 呆れるまでユニゾンに任せといて"

この歌詞アレンジは見事でしかなかったし、ユニゾンに対するリスペクトしかなくて最高過ぎます。

何より「Rising Hope」は伝説すぎるので、あれ1回で終わるのはもったいなさすぎます。

「S.S」もだけど、女性の高音曲歌う斎藤宏介の魔力って何なんでしょうね…。

文としては、何気にライブレポ形式で書いた初の文な気がしますね。

全7アーティスト=19曲の内容をどうコンパクトにまとめようか…そこに意識を集中していたような記憶があります。

当時は帰りの飛行機でバンバン文字にすることができていましたが、最近はよく考えて打つようになったなぁ…何だかめっちゃ体力使うようになった。

多分書ける幅が広がったこともあるんだろうけど、前みたいにいい意味で深く考えずに書く文っていうのとどこかで執筆してみたいですね。

とはいえ、割と短い文面で具体的に書けているので、ライブの雰囲気を伝える場面はけっこう嫌いじゃないです。

ちなみに今回の加筆で、この文を書いた後言葉にできた思いちょこちょこ書き足しています。

前回の舞洲もですが、時期的にちょうど3年前の今日開催されたライブでもあったり。

大体音楽文は直近で書くことが多かった関係で、1度時期を合わせると、その後の文も同じように合わせやすくなります。

せっかくなので、今後はできる限り開催日や発売日に投稿できるようにスケジュールを組んでいこうと思います。

まあ継続できるかは現状わかりませんが。もし難しければ…

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