月ミるなレポート⑮
シスターフッド月ミるな
ずっと昔にどこか遠い世界で起こったこと。
るな研を訪れた僕らを迎えてくれたのは山根博士とともに早くから月ミるなの研究にたずさわってきた芹沢博士だった。
芹沢博士は月ミるなが親しみやすさやあたたか味を感じさせる良き友として作られたことや人に夢を与えることを大きなよろこびとしていることを話してくれた。
そのときはまだ月ミるなはフィクションの中にしかいなかった。
いまから十三年前。ひとりの少女が時間の流れを躍びました。彼女の名は月ミるな。ワンピースの似合うごく普通の女の子でした。
泣いても笑っても月ミるな
月ミるなはオーバーサイズのスーツケースにたくさんの手紙と手羽先を詰め込んだ。
月ミるなは「公共性」という言葉の呪縛によってインターネットの中で浮遊する存在となり時折視聴者をひきずり込んだ。
月ミるなは卒業式を抜けてろむとプリクラ♪
月ミるなが猫づいている。月ミるなはとっても美猫で猫背のすばらしい丸味かげんは筆舌に尽くしがたいほど美しかった。ちょっと冷たい目線がよけい彼女の美しさをきわだたせた。
エサをあげようとすると「ふうふうっ」とキバをむき出し威嚇する。めったやたらに近づくと爪でひっかく。
かつて人間達がくれた食べ物を何の疑念も持たず食べてしまったトラウマ。
No.2072の名札が震えてる。月ミるなはおしっこを我慢していた。
サイエンス・コーポレーションで月ミるなの頭蓋骨が売っている。¥80000。良心的である気がする。
アゴの骨は外れないようにコメカミのところからバネが渡されている。メモ用紙をはさんで使えるし蚊取線香にもなる。
息をひそめて生命の音を待つ忘れられた死体。
月ミるながNHKスペシャル-映像世紀プレミアム第18集「ナチス狂気の集団」を見始めた。
月ミるなにとって”やさしい”は呪いだった。”やさしい”に感じる都合のよさ、あるいは何かを隠しているような違和感が気持ち悪かった。
大人が自分にとって都合の良い子どもを”よいこ”と呼ぶのに似ている気がした。
月ミるなはステキな子にあなたはステキだと言う、気に入らない子にいじわるしない、好きな子をよろこばせる。
キリストのいうそれと比べれば閉鎖的だけれど、血が通った”やさしい”。人間達はそれをシスターフッドと呼んだ。
月ミるながうさぎのいる部屋でマツイキラりを抱きしめた。
ヲチ軍定時報告
”今日は朝の6時に起きました。朝ゴハンはミソ汁がおかわり出来るので本当にうれしいです。そして体操の訓練がありました。お昼は僕の大好きなカレーライスでした。おかわりを3回しました。そして次の訓練はヲチ軍十ヶ条暗記訓練でした。まったく覚えられませんでした。”
月ミるなはドスのきいた声で「貴様っそれでも軍人かぁぁ!!」と叫び頬をぶん殴ります。殴られた方はとってもシャワーな気分になります。
月ミるなはユニットバスで泣きました。
今日はねぇるなお姉ちゃんとピクニックに行ったの。それでねおっきな葉っぱがあってね、お面とか風車とかを作ったの。キャンディも食べたよ。
CMの月ミるなに恋しちゃってそのコピーを所有する。
ヘンタイよいおじさんは月ミるなの大切なおともだちです。月ミるなは変態のおともだちを大切に守ってやるのです。
月ミるなは核戦争が起こったD56世界から逃れてきたボートピープル。
皆さんにはお世話になりました。月ミるなはこの世界から旅立ちます。その前に皆さんの中から月ミるなに関する記憶を消さなければなりません。
月ミ亭るなをち
月ミは街の子 いけない子
夜になっても帰りません
心に暗闇 くちびるに嘘
見上げてごらん 夜の月
淋しからずや悪を説く君
美しい夜も なつかしい夜も
醜い夜も みんなつめこんで
月ミは遠くに行きました