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読書感想文 『自然にひそむ数学』

読む前

高専時代から数学は好きな方だった。

数式から面積や体積を計算できたり、速度や距離を計算できることになんとなく
魅力を感じていた。

一方、それから数年が経ち社会人生活を送っていく中で、デザインの世界で自然の中からアイデアを借りてくることが多いことに気づいた。

例えば、建築の世界でいうとMT FUJI ARCHITECTS STUDIO が設計した
「知立の寺子屋 teracoya THANK」

https://osmo-edel.jp/column/2164-2/

この建物は、屋根が懸垂曲線でできている。

懸垂曲線とは、簡単に言うと紐を垂らした時にできる曲線のこと。

つまり、紐の中で力の静的な吊り合いが取れている状態になっている。
設計的な意味としては、決定的な WEEK POINT を作らずに経済的な構造と
することができる。(と僕は考えている。)

また、サグラダ・ファミリアや、ローマなどの水道橋にも使われている構造
でもある。

といったように、自然というのは、僕らに 設計=デザイン のヒントを与えて
くれる。

僕はもっとこのヒントが欲しいと思い、このブルーバックスを手に取った。

見た目はめっちゃつまらなそうで、頭固そうで、途中で心くじける覚悟で
読み始めたが、これが結構やさしく解説してくれるし、定理の証明も載っていたり
と段々と僕の恐怖心は溶けていった。


気づき

・ピラミッドにひそむ黄金比の話

・ピタゴラスの定理

・オイラーの定理

・正多面体は5種類しかないことの証明

・正五角形にひそむ黄金比

・フィボナッチ数列

・黄金角

どれも比較的簡単な数式で証明されていておもしろかった。


その中で感じたのは、数学とは 今見えていないものを明らかにする 作業、
と言えるのではないか、ということ。

例えば、フィボナッチ数列Fn。この数列の n項は、n-2項 と n-1項 を足し合わせることによって表される。

1  1  2  3  5  8  13  21  34  55  89  144・・・n-2   n-1   n   n+1   n+2・・・

5だったら、2と3を足した数。
13だったら、5と8を足した数、となっておりそれが続いていく数列である。

フィボナッチ数列の隣り合う項の比を考える。

n → ∞ となった時、その比は 黄金比 φ となるのである。

ちなみに黄金比 φ ≒ 1.6180339・・・ である。

例えば、89と144 の比は1.6179775・・・なので、この時点でかなり黄金比に
近い。

で、黄金比は自然の中で多く見られ、オウムガイの渦や、植物が葉をつけるときの
角度、ひまわりの種をつける模様、人間の理想的なプロポーションが黄金比で説明
できたりする。

このように、数列自体はちょっとおもしろい作られ方だな、くらいの感想だが、
それを突き詰めていくと、自然の摂理に結びついている。

その突き詰める作業、

『もしかしたら、こうなっているのでは?』

『もしこうだったら?』

という疑問を常に持ちながら、人間の叡智を使って、今目の前に見えていない現象
や法則を見つけていく作業が、数学のおもしろさ、魅力、ロマンと言えるのでは
ないか。

そう考えると、アートの考え方に似ていることに気づく。

パルテノン神殿などの建築、モナリザの絵画に黄金比が隠れている、と言われて
いる。

黄金比が安定感を与えたり、美しく感じるのは遺伝子レベルで我々に組み込まれているからだろう。

そういう意味では、アートと数学 は 自然を通して繋がっていることを意識せざるを得ない。

むしろ、我々が自然の一部であることを思い出すと、それ自体が当たり前である
ことに気づかされる。

いつから僕らが自然とは切り離された存在だと認識するようになったのか、
それ自体に疑問を抱きたくなってくる。


やること

自然を、どこからそう思う、そこからどう思う、というアート的な思考で観察することで数学的に整理できる可能性がある。

それはつまり、再現性があるということなので、デザインに活かすことができる。

そういった観察の目を持つことを心がけよう。


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