読書感想文 『曲線の秘密』

読む前

自然は曲線を創り、人間は直線を創る。

湯川秀樹の言葉。

僕はいま自然から学びたいと思っている。

だったら曲線を学んでみよう、そう思った。


気づき

今回の本で出てきた曲線は、自然界に存在するもののほんの一部だったが、
それを解き明かすのがどれだけ大変だったか、というストーリーも併せて書いて
あるため、読了してみるとこの内容の密度に納得がいく。

むしろ、ピタゴラスの定理の一般化と言われる、フェルマーの最終定理の証明
フェイズは、脳のキャパオーバーしていたので、これくらいで終わってくれて
助かった、という印象。数学を嫌いにさせずにいてくれてありがとう。

本の流れとしては、

・惑星動きを解明するために頑張った

・大航海時代に生きるための時計づくりの執念

・ピタゴラスの定理 → フェルマーの最終定理

という感じだ。


まず惑星の話だが、そもそも普通に生きていて惑星の動きが気になったことが
あまりない。

そこに疑問を抱いたり、抱いたとしても途方も無さすぎて、僕だったら諦める。

それを紀元前の人々が解き明かしていったというのが凄すぎる。

測定器とかいまよりも精度が低いだろうに、どうしていたのだろうか。

ともあれ、太陽を中心に回っているっぽいことを16世紀にコペルニクスが分かったと。

しかも、遠心力の発想が惑星の動きからだったというのが非常におもしろい。

太陽が引力を持っていて太陽を中心に地球が回っている、というのが分かった時点で 『じゃあ、なんで太陽に近づいて行かないんだ?』という疑問から引力と
遠心力が釣り合っている発想が生まれる。

現状を当たり前と思わず疑う姿勢、何か他の力があったとしたら、と考えるアート的発想がやはり数学には必要で、とてもロマンチックである。

数学の立場からすると、アートが数学的思考なのかもしれない。


次に、時計作りの執念の話。

大航海時代、北極星の位置などで緯度は分かったが、経度は出港から何日経ったか
などでしか図れず、海難事故が相次いだらしい。

経度を正確に知るための手段として、時計の開発は要請されたとのこと。

ガリレオが振り子の周期に目を付けたが、それは真の等時性があるとは言えなかった。

その後、ホイヘンスが真の等時性を持つ、サイクロイド振り子を発見した。

時計もないのに、時計が正確かどうかどうやって確かめたのか、気になるところだが。ガリレオはホースから水滴が落ちる感覚と比較していたらしい。

サイクロイドは時間との関係性が強く、粒子が斜面を落ちる時の最速降下線でも
あるという、とても魅力的な曲線である。

サイクロイドが最速降下線であることの証明にトライしてみたが、積分の形を導くまでで、僕の知識の限界を迎えた。

ともかく、数学や物理の概念がなければ、時計の発明はなかったかもしれない。


最後にフェルマーの最終定理だが、この定理自体にどんな意味があるのか、
正直理解できなかった。

ただ、350年の時をかけて数学賢人達がリレーを渡し続け、
1995年にアンドリュー・ワイルズによって証明されたということ自体が、
人間の進歩のあるべき姿を示している、と感じた。

解を導いたアンドリュー・ワイルズは無論すごいのだが、
一方で有名なのは、フェルマーという問いを立てた人の名前である。

もしかすると、良い問いがあれば、誰かが導いてくれる のかもしれない。

これは、時計も同じなのかもしれない。

良い問いを立てることこそ、前進するために必要なことなのではないか。


やること

改めて思ったことがある。

問いを立てる能力は、解を導く能力と同じかそれ以上に重要である。

最近、メロンを一枚のステーキのように切り出して、ナイフとフォークで
食べてみた。


・日常に疑問を持つこと

・もしそれが当たり前ではないのだとしたら?と考えること

・全く逆の立場になりきって考えてみること。


これをしばらくは実践してみる。





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