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New Zealandがくれた宝もの 6 Heavy Weighted Nymph ヘビイウェイテッド ニンフ

 夕方、シンイチと2人でブレイカウェイプールに出かけた。
チェックのシャツにオイルドジャケットをはおった30才前後の釣り人が、すでに上流を流していた。
仕事を終えてからやってきた、地元の人だろうか?
ニュージーランドでは、夕方5時にはピタリと仕事を終える。
釣り具屋もスーパーマーケットも5時きっかりには閉まってしまうのだ。
 ツランギに住む釣り好きにとっては、たまらなく良いシステムだ。
5時きっかりには仕事が終わるということは、遅くとも5時半にはポイントに入ることが可能なのだ。
しかも、夏は夜9時頃まで明るいのだから、毎日3時間はたっぷり釣りができるのである。
それも60cmクラスの魚を狙う釣りが!

 シンイチが流し始めて3投目で魚をストライクした。
プール下流部の真ん中あたり、少し緩やかになっている部分だ。
シンイチは大きく弧を描くロッドを、全体重をかけてささえている。
私は川から上がり、カメラを手に駆け寄った。
魚は数回ジャンプを繰り返した後、河原に寄せらてランディング。
50cm程のシャープなプロポーションのレインボウだ。
精悍な顔をしている。
ようやく、トンガリロリバーで釣ることが出来た。
パシ、パシ、と記念の撮影をして、名残惜しげにリリース。

 その後もまたシンイチがストライク。
もう、いちいち駆け寄っている場合ではない。
私だって釣りたいのだ。
シンイチがこれも無事ランディングし、一人で写真を撮っているのを尻目にキャストをし続けた。
が、今日はどうも調子が悪い。
ラインは伸びてくれないし、バックキャストの際、フライを地面にたたいてすぐになくしてしまう。
フライを結び直したり、ティペットを付け替えたりしている時間のほうが長いのだ。
挙句の果てには、右からの強い風で重いニンフが、コンコンと帽子や背中にあたるのだ。
時には顔に向かって飛んでくる。
「もう、ヤダー。」
7時40分、辺りがようやく暗くなった。

 たてつづけに魚を2本も釣ってしまったシンイチが、満面の笑みをおさえつつ、私に冷静に言った。
「ニンフのウェイトが重すぎるのと、リーダーを長くとりすぎているのが敗因ではないか。」
確かにその通りかもしれない。
昨日まで使っていた、日本で巻いてきたニンフはもうすべて、なくしてしまっていた。
ツランギの釣り具屋で買った、地元の人が使っている超ヘビィーウェイテッドニンフしか残っていないのだ。
私のタックルと力では、その超ヘビィーウェイテッドニンフを操るのは、どうやら限界があるようだった。

 翌朝、ツランギのショッピングモールにある釣具屋「スポーティングライフ」にタイイングセットとマテリアルを買いに行った。
まさか、こんな事態になるとは予測していなかったので、タイイングツールを日本から用意してこなかったのだ。
ニンフの微妙な重さの違いが、釣果のカギになるとは。
私が扱えるちょうどよい重さのニンフは、店には売っていないので自力で巻くしかないのだ。
 店先のショーウィンドウには、10ポンドはあるかと思われる、特大レインボウの剥製がディスプレイされていた。
体全体が真っ赤に染まった、これが虹鱒かと疑うほど厳しい鼻曲がりの顔だ。

 広い店内には、壁に沿ってフライフィッシング用品、サッカーなどのスポーツ用品、そして奥にはハンティング用のライフルが並んでいた。
この辺りでは釣りの他にも、オポッサムや兎、鴨、鹿などを狙うハンティングも盛んなようだ。
店には朝から早速、昨日の釣果を報告に来ている地元の釣師がいた。
どうも、レイクタウポでのナイトフィッシングでいいサイズが上がったらしい。
 その話しに聞き耳をたてながら、私たちは店内を見て回った。
2階のタイイングルームからもう一人の店員が降りてきて、フライのショウケースに、巻いたグローバグをゴロゴロゴロと入れた。
どれも重そうなものばかりだ。
店員はこちらをチラリとも見ずに、また2階へ戻って行った。

 私たちは選んだものをカウンターに持って行くと、愛想のいいお兄さんが
「Cach a fish?」と、声を掛けてきた。
昨日ブレイカウェイで2本キャッチしたと告げると、キラリと瞳を輝かせ、
「他にも2人、同じ場所で2本ほどあがったらしいよ。」と、言った。
やはり昨日は、おとといの雨のおかげでプールに魚が入っていたようだ。

7.Friend へつづく

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