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【日本経済新聞要約・考察】第10回 地銀ロスカットでREIT急落、市場はいつ戻る?

※本要約・考察は2020年3月19日の日経新聞の記事をもとに書いております。

〈要約〉

不動産の総合的な値動きを示す東証REIT指数は19日急落し、前日比で18%を越す大幅安となった。大阪取引所は同日、東証REIT指数先物の売買を一時中断する措置を二度もとった。昨日からのREIT指数の急落のきっかけは米株のボラティリティの高さと金利の上昇があげられる。

リスク・パリティ・ファンド(ポートフォリオに占める各資産のリスクの割合が均等になるように分散して保有するファンド)はREITを含めた株式の割合を落としたことで、REIT指数は下がり、1500を下回ってからは地銀によるロスカットの売りが膨らんだ。

一方で、景気回復の見込みがない中、世界各国の長期金利の上昇している。これまでの低金利環境で利回りを追求するために買われたREITには以前ほどの価値がない。

市場のファンダメンタルズを分析するには、まだ時間はかかるものの、動揺が収まれば市場は一転して優良銘柄の選別・物色が始まるだろう。それまでは換金売りは優勢となると考えられる。

〈考察〉

今回のREITに関する記事では「地銀と年度末」と「ドル調達コスト」について着目することにした。

1. 「地銀と年度末」

本記事では、地銀によるロスカットの売りが膨らんだと書かれているが、なぜ損切りに踏み出たのかを考えたところ、年度末による益出し予定だった金融資産を早めに換金売りしたのだと考えていた。しかし、地方銀行には保有資産が購入した価格から20~30%下げたところで強制的に売却をし、損失を確定させなければならないロスカットールールが決められている。これにより、売りが売りを呼び、ここ2日間でREIT指数をズルズルと下げてきたのであろう。

ロスカットルールは従来、地方銀行の資金繰りを守るためにあったものの、負の連鎖を起こしていると考えられる。新型コロナウィルスを受け、地方銀行は業況が悪化した企業や個人事業主への支援を強化し、手数料の免除などを行なっている。ロスカットにより損失を出し、融資の返済猶予を伸ばし、マイナス金利の環境下にある地方銀行の経営は一段と厳しくなっている。

今後、地方銀行の経営破綻が生じた場合、全国各地の銀行に預金者が現金引き出しに殺到するシナリオも想定できる。今回のロスカットルールにより損失を被った地方銀行が今後新型コロナウィルスとどのように対応していくのは注目したい。

2. 「ドル調達コスト」

景気回復の見込みがない中、世界各国の長期金利の上昇している。あらゆる金融資産が売られる中で、ドルの需要は急増している。素人の見解としては、金融資産を売り、現金を確保する動きが活性化することは理解できるものの、ドルに買いが集中する理由が理解しきれない。

安全資産とされるスイスフランや日本円が買われ、円高方向に動くと考えていた。リーマンショック以来となる金融市場に混乱を与える出来事が生じると、ドル需要が高まる。その理由国際的に貿易や売買で利用される通貨は米ドルだからである。

新型コロナウィルスが終息する可能性が見えてきた際には、金利差を意識した円買いが起きると考えられる。2週間前に101.19を記録してから一気に本日110.18円を記録した。日米の金利差とドル円には以前あった相関関係にも変化が起きており、不気味な円安がいつまで続くのか注視したい。

おまけ

今回のコロナショックをみる限りでは、金融市場におけるリスクの量によって投資家の購入する金融商品は以下の図のように動いていくと考えられる。

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今回のコロナショックにより、非常に勉強になったのは上の構図を実際に目の当たりにできたことだと考えている。機関投資家がリスクオン姿勢から一転し、リスクオフになると比較的安全資産な債券などを買う。そしてその先に金利差を考慮した上で、通貨に手を出し。為替レートに変動が生じる(円などを買う人が増える)。

同時に今回のコロナショックでは、金融商品にリスクは感じ、Safe Havenと言われる金にも買いが集中し、価格も2011年以来の$1,600台となった。

しかし、投資家は金(ゴールド)保有で待ち切るのかと思いきや、金融市場にはコロナほどの不透明さを与える現象が起きるとドルの需要が一気に上がるようだ。ドルは貿易の基軸通貨として用いられるため、ドル需要が跳ね上がった。今後、新興国の通貨安はアジア危機に並ぶものとなっており、新興国からの資金流出額はリーマンをも超えている。

素人目からは若干ヒステリックとなっているようにも金融市場だが、ドル需要が高まる中、今後経済危機制御に向けた金融緩和や財政出動が焦点となるだろう。

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