【日本経済新聞要約・考察】第17回 日本緊急事態宣言一部解除、経済再開による回復速度はいかに、5月の原油はどうなる
※本要約・考察は2020年5月15日の日経新聞の記事をもとに書いております。
〈要約〉
14日夜に日本政府は「新規感染者が直近1週間の合計で10万人あたり0.5人以下に抑えられている」などから、緊急事態宣言を39県で解除することを発表した。再び感染者が増加傾向となれば再び宣言の対象になる機動的な対応だ。
同時に40を超える道府県が事業者への休業要請を緩和する方針を決めた。特定警戒を維持する大阪府なども段階的に休業要請を解除する方針だ。
北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫の8都道府県は特定警戒を維持され、21日をめどに専門家の評価を受け月内には解除する可能性を強調した。加え、感染拡大を防ぐためにも「県をまたぐ移動自粛」を呼びかけた。
経済対策としては、2020年度第二次補正予算案を編成し、雇調金を日額上限1万5000円に引き上げた。加え、資金繰り支援に加え、資本生資金の投入を可能にし、自治体の対策強化の交付金を拡充した。
医療面では来月をめどに1日あたり2−3万人の抗原検査キット供給を目指し、治療薬として注目されている「アビガン」の承認を月内に目指すと話した。
残りの8都道府県の宣言解除には感染状況、医療提供体制、PCR検査の監視体制の3つを明記した。一方で、第2波が懸念される中で、感染者数が倍になるまでの「倍加時間」や感染路不明者の状況を目安に再度宣言の対象にすることも決定した。
〈考察〉
今回の日銀の発表見込みに関する記事を踏まえて「都道府県別GDP」、「Stringency IndexとPMI、経済再開に向けて」そして「経済再開、原油需要と円」について考察をする。
「都道府県別GDP」
今回の発表によって、39の都道府県の緊急事態宣言が解除された。一方でその対象には北海道、千葉、埼玉、東京、神奈川、京都、大阪、兵庫は含まれなかった。内閣府発表によると、日本のGDPの55%近くをこの8都道府県がカバーしている。
協業要請が緩和され、経済の再開が進むものの、日本経済の過半を閉める主要地域は段階的な緩和または休業要請を維持されている。
経済再開に向けた動きは喜ばしいものの、 日本経済の要となる主要都道府県がまだ特定警戒が維持されており日本経済が新型コロナ前に戻るのにもまだまだ時間がかかりそうだ。
「Stringency IndexとPMI、経済再開に向けて」
外出自粛が緩和されることで、2−4月に世界各国で行われたロックダウンにより停止された生産や、落ち込んだ個人消費が回復するかが注目されている。
そこで、オックスフォード大学が発表しているGovernment Response Stringency Index(新型コロナウイルス政府対策指数)と製造業PMIを比較してみる。
PMIとは金融業界大手のSMBC日興証券によると
PMI(Purchasing Managers’ Index:製造業PMI)とは、全米供給管理協会であるISM(Institute for Supply Management)が公表しているアメリカの製造業の業況感を捉える景気指標のひとつです。日本でも購買担当者指数(PMI)として、製造業の購買担当者へのアンケート調査による指標が公表されていますし、ユーロ圏や中国、韓国などでも同様の指数が発表されています。ISMからはNMI(Non-Manufacturing Index:非製造業NMI)も公表されていますが、製造業PMIの方が注目度が高くなっています。
景気判断の方法としては50を上回ると改善、下回ると悪化と判断される。
まず、新型コロナウィルス政府対策指数とは各国政府が発表する休業要請や休校要請、旅行規制などの9つの指標を元に形成されている指数だ。100が最も厳しい状態を示し、0が対策なしを示す。
PMIと対策指数をプロットしたものが以下のグラフだ。3月と4月の傾きには大きな違いがある。そして、逆相関関係にあることもわかる
3月と4月のデータを使って単回帰を行ったところ、以下のような結果となった。2つの数値には逆相関関係が見受けられる。各国政府が対策を厳しくすることに応じて、PMIは0.2528減少する。有意水準も0.1%水準でも満たしている。
経済再開をし、休業要請や休校要請が解除されていくことによって経済の回復は早いかもしれない。
人の流れが一時的に止まった今回の新型コロナウィルスは健康問題とともに経済危機を招いた。しかし、その経済危機は人の流れが再開し始めている現状では、早期回復もシナリオとして想定できる。事実、中国の4月の工業生産は4ヶ月ぶりのプラスとなり、前年同月比で3.9%増加した。
経済再開による経済回復速度が速いのであれば、近日の金融財政政策により貨幣需要が過剰となる可能性があり、日本銀行がインフレ懸念から経済の引き締めを行う可能性がある。政策金利の引き上げなどを行うことも考えられるため、債券を今のうちにポジションを閉じるべきかもしれない。
「Teslaデータ、原油需要と円」
https://twitter.com/elonmusk/status/1261009993588862976
上記のグラフはアメリカのTesla創業者のElon Muskがツイートしたものだ。7日間平均でのTesla車の充電器の利用を表したグラフであり、中国ではTesla車の利用が新型コロナ前の水準に戻りつつあることがわかる。そして、北アメリカや欧州での利用率が上がってきていることがわかる。
Teslaだけではなく、車の利用が増えてきている中で、ガソリンを活用する普通車の利用も増えてきているだろう。工場などの生産活動再開は段階的で行われているもの、原油需要の回復に向かっていると考えられる。
米国の原油在庫は16週ぶりに減少し、原油の需要が増加しており4月に生じた、貯蔵懸念は生じないと考えられる。そのため今月、原油価格がマイナスに転じる事態は生じづらいと考えている。コントラクトが切れる5月19日が近づくことによるロールオーバーによる売りはあるが価格の下落は起きていない。
原油価格は4月以降上昇しているものの、新型コロナ前の半額だ。WTIもドバイ原油も買うには円をドルにする必要がある。そのため、円を売ってドルを買うことから円安圧力のある原油市場だ。
しかし、現在の原油価格は安く国内の需要もまだ回復しきれていない。そのため原油の購入は限定的であり、円安圧力は限定的だと考えられる。