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ピンチをアドリブで乗り越える技 30/100(母音)
自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。
喉を大きく開けて発声
今日は「母音」についてお話ししようと思います。
はい。「あいうえお」についてです。
以前ギリシャ演劇の話(14/100参照)をしましたが、ギリシャ悲劇では、台本に書かれていない「母音」が多く使われます。
「あああいいいいい」という慟哭の音です。
とてつもない境地に直面したとき、人は母音で叫ぶのです。
イギリスの演劇学校の講師であったPatsy Rodenburgは、
「母音は感情の音で、子音は情報を司る」
と唱えています。
ちょっと意味わからないですよね?
日本語は、他の言語と比べて母音を多用するので、更に分かりにくくなっているのですが、母音はお腹の底から発せられる息そのものです。
対して、子音は口の形を変えて、言語化するために用いられる符号であるという考え方です。
まだ言葉を持たない、赤ちゃんがそうであるように、私たちの感情表現は母音に支えられていて、子音は感情ではなく、情報のコミュニケーションを行うためのものです。
例えば、日本語で「ー」を用いる時、これは母音の継続音ですね。
「あー」「うーん」「えー」「おー」
などの感嘆詞は全て母音が主となっています。
「ひー」とか「きー」
も同様で、「h」と「k」が頭に付いてはいますが、主となるのは母音の部分です。
「え?」「あ!」「お!」「う!」
も感嘆詞ですね。
感嘆詞は感動詞とも言われますが、人の感情を表現するものです。
どうでしょう?少しは納得してきましたか?
🎵「あーああー、川の流れのよおーにいー」
って歌うじゃないですか?
母音を感情の音だとした場合、この歌い出しは非常に感情的であると分析します。
そもそも、子音とは、息であって、前回お話しした振動を持ちません。
能狂言では母音のことを「産字・生字(うみじ)」といいますが、これは振動が生じる音という意味で、抑揚が生じるのはこの部分であると考えます。
(あ!そうか、だから「母・子」という漢字を充ててるのか?!)
ためしに、「かーーわーー」と伸ばしてみて下さい。
伸ばしているのは「あーーー」の音であって、ローマ字でいうところの「k」と「w」の部分は伸ばせませんよね?
子音は符号なんです。
シェイクスピアの稽古でも、たとえば、
「To be or not to be(生きるべきか死ぬべきか)」というハムレットの有名なセリフを母音と子音に分けて発声する練習をします。
まずこれを、発音記号に移し替えます。
「tu bi or not tu bi」
(分かりやすくする為、ローマ字的な表記にしてます。正式な発音記号ではありません。)
ですね。これを
「*u *i o* *o* *u *i」
と母音だけに分けて練習したりするわけです。
そうすると、このセリフは比較的、母音を多く含んでいる=感情的であり、説明的ではないという分析をします。
実は、この英語の母音と子音の関係がつかめると、発音と聞き取りが格段にアップします。どうしてもカタカナ英語に聞こえてしまうのは、このせいです。
そーすると…日本語という言語には、すでに感情が多く含まれているから、感情を表に出さない傾向があるんですかね?
いや、同じく母音の多いイタリア語は情熱的ですねぇ。どうなんでしょう。
でも、母音を多く含んでいる言語は、音楽的に優位であるというのは間違いありません。
オペラはやっぱりイタリア語がいいじゃないですか?
それはメロディーの中で、感情をのせて「~」と歌い上げることが出来るからです!
身体を振動させて発する、
母音は感情の音である。
少しはご理解いただけましたでしょうか?
文章オンリーで表現する限界を、今回も感じたのですが、母音=感情というキーワードだけ頭の片隅に置いておいて下さい。
ピンチに陥った時、「ええええ」とか、「そーーです、ねえええ」と言っている時、それは母音を伸ばして、空間に振動を起こしているんです。
そして、その振動を起こす母音こそが、低い重心からの呼吸に繋がる音です。(4/100参照)
感嘆詞もうまく使いこなすことで、心を落ち着けて、丹田にアクセスする(28/100参照)ツールとなり得ます。
母音の振動は相手に伝わりますが、子音は伝わりません。
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