ピンチをアドリブで乗り越える技 15/100(型)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


型であって、感情は関係ありません

前回の話では、『I Love You / I Hate You』とは、一種の型であり、そこに感情は要らないというお話をしました。

今日はその「型と感情」の話を少しさせていただきます。

例えば狂言には、『笑う型』と『泣く型』という代表的な型があります。
この時、演者はべつに楽しい感情や悲しい感情を持つ必要はありません。ただ単にこの型を行うことによって、観客に楽しさ、もしくは悲しみが伝わります。それが、重要なのであって、演者の感情はあまり重要ではありません。

しかし、難しいのは、型だけを忠実に行っていると、それはまさしく『型通り』になってしまいます。

うん?

ちょっと言い方が違うかもしれませんね。
正確には、型を忠実にやることが大前提なのですが、

「それによって自分自身に起こる変化に傾聴せず、頑なになっていると
『型通り』になってしまう」

でしょうか?

イギリスの演劇学校でも、思考は常に柔軟に持っていなければならないと教わります。

周りや相手の様子に傾聴をし、そこにリアクションをする
という演技の原点を実現するには、柔軟さが求められます。変化に気づく柔軟さ、そしてそれに対してリアクションを起こす柔軟さ、です。

そういえば、演劇学校ではいつもいつも

『膝を柔らかく』

と言われます。身体的に、膝が固まっていると重心が上がったり、動きが滑らかでなくなるし、怪我にもつながるということなんですが…
もしかしたらこれって、「柔軟であれ」という前提条件を忘れない為のリマインダーなのかもしれませんね。

話を『笑う型』『泣く型』に戻しましょう、
この型、初めはちょっと恥ずかしいのを我慢して、型としてただただ行います。でも、そうして型を行っていると、自分の気分にも変化がおとづれるものです。

型で笑っていると、なんとなく気持ちも晴れやかになってきます。
そのときに、その気持ちの変化をシャットアウトしてしまうと、『型通り』となるのでしょう。中身のない演技というのはそういうものなのかもしれません。

型、とは別に能狂言や武道で言われる型に限ったことではありません。例えば、シェークスピアの古文の読み方、ミュージカルの歌やステップ、この辺も型だと思います。

わたしはこれを『アウトサイド・イン』『インサイド・アウト』と呼んでいます。型から入る、つまり殻を作っておいて、その後で中身を充実させるのを『アウトサイド・イン』。逆に、先に中身を充実させる手法を『インサイド・アウト』としているんですが、これに関してはまた改めて今度詳しく!

ピンチに陥った時、あなたが使える型って何でしょうか?

わたしがこれまでにご紹介してきたツールに限らず、型っていろいろな形があると思います。
ピンチ禍で思考停止してしまった時、まずは少し無理矢理にでも、型を使ってみてはどうでしょうか?そうして変化を招いてみましょう、そうすると気分も変わってくるのです。

ある意味、脳を騙してるのかもしれませんが、型は気分を変えてくれます。

何か自分の中に変化が生じたのであれば、それを否定するのではなく、柔軟に、その変化に身を任せてピンチから抜け出す糸口としましょう。

でもこれって実はとっても勇気の要ることです。

自分に起きている変化を聞き取る傾聴力、そしてそれを受け入れ

「えいやっ!」

と、一歩踏み出す度胸、その両方が備わってなくてはなりません。

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