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ピンチをアドリブで乗り越える技 31/100(子音)

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


振動は相手に伝わります

私は子供の頃、狂言師である父親が家で稽古している側に行き、ふと近くの家具に置いたとき、それがじんじんと震えているのを感じ、不思議に思った記憶があります。

腹式呼吸でしっかりと、お腹から発声された母音には、空間全体を振動させるエネルギーがあります。

そういえば、子守唄も「ー」を多用してますよね?それが安心感を与えるのかもしれません。

古い歌には産字「ー」が多いです。メロディー(抑揚)をつけやすいということも、もちろんありますが、日本語の先人たちは、この母音の振動の力に気がついていたのかもしれませんね。

今日は、「子音」の話になります。

お休み前の投稿ですので、多少複雑な話をします。ご自分で色々と検証して、楽しんでみて下さい!

前回の通り、「子音は言語化して、情報を伝えるための符号」です。でも、イギリスの演劇学校では、この子音にも、さまざまな性格があると考えます。

鋭い音の子音、破裂音の子音、丸いイメージの子音などです。

一緒に子音の持つイメージについて考えてみましょう。

ここでは親近感を持って見やすくするために、日本語表記にするので、母音がついた音になってしまいまっています。

例えば、「サ」ならばローマ字の「sa」だと思っていただき、「a」の母音を除いた「s」単独の音をイメージして下さい。

まず、鋭い音の子音、
サ行、ザ行
シャ行、ジャ行
や行
ですかね?

これらは、口の形と舌を使って、狭い通路を作り、そこに空気を勢いよく通して、発声する子音です。
「さすが」「やめて」「射的」

次に、舌の破裂音の子音、
カ行、ガ行
キャ行、ギャ行
タ行、ダ行
チャ行、ジャ行(同列です!)
ナ行

これらの子音は、舌を口内にあてて、それを話すことで破裂音を生じさせてます。
パーカッション的ですね。
「覚悟」「ちがう」「なにさ」

同じ破裂音でも、唇を使った破裂音、
バ行、パ行、
マ行

そう、腹話術では不可能と言われてた子音で、これを克服したのが、いっこく堂さんです!(たしか…)

これらは、唇を開く破裂音ではありますが、「パ」と「マ」どちらも口の動きは全く同じですね!さらに強く息を当てて、素早く唇を離すのが「パ」ってイメージでしょうか?

そっか、だから「パパ」より「ママ」のほうが言いやすいのか!

続いて、丸いイメージの子音は、
ラ行、リャ業

どちらも、舌を巻いて発音するので、包容力のある感じがします。
ちなみに、私の実感では、イギリス英語の「L(舌の破裂)」と「R」のちょうど中間の位置に、舌を置いて発音するのが、日本語のラ行です。
「瑠璃」「蘭」

あと、ふたつです。

ハ行は、頼りないですよね、特に何もしていなくて、口を少し開けて息を吐けば、ハ行の音になります。

母音をつけると、「はあ」「ひい」「ふう」「へえ」「ほお」、ちょっと腑抜けな、気のないイメージの単語になりますね。

これ、ピンチ禍ではあまり相手によくない印象を与えるかもしれませんね。

最後に、ワ行。
ワ行といっても子音的に「w」を使うのは「わ」と「を」だけですね。昔は「うぃ」「うぇ」的な、「w」を使ったふたつの音があったようですが、現代では使われていません。

それでいうと、口語では「を」も「お」に取って代わられていますね。「を」が消滅する日も近いのかもしれません。

「ん」は「ナ行」の子音です。

文字通り、唇を輪にして発音しますが、一番口の周りの筋肉を使う子音かもしれません。

やっと最後まで辿り着きました。お疲れ様でした。

英語だと、これらの子音がすべて絶妙に違います。
例えば、「s」は日本語のサ行よりも更に舌を縦に丸めて鋭く発音します。日本語のさ行は、英語の「s」と「sh」の中間ぐらいですかね?

あと、「th」「f」「v」も日本語には全くない子音ですね。

結構大変だったと思いますが、実はこれでも私なりに日本語に置き換えて省略してるので、英語の発音記号で子音を分けると、もっと多岐にわたります!

ご興味のある方は調べてみて下さい。

さて、ここからが本題です。

子音の性格によって、単語のイメージが変わってきます。
たとえば、

「すみませんでした!」と「申し訳ございませんでした。」

「Sumimasendeshita」のほうが「s」が多く使われているので、少し鋭い音になってませんか?

「moushiwakegozaimasendeshita」は唇を多く使ってますね。でも、なんなら舌はほぼ全く動かさなくても言えちゃいますね!

「すみませんでした」には勢いがある反面、言い様によっては、刺すような攻撃的印象を与えるかもしれません。

「申し訳ございませんでした」は、舌は平伏しているけど、唇は一生懸命動いてるイメージで、文脈だけでなく、発生の動きとしてもこちらのほうが、深い謝罪に感じられるかもしれません!

ついでにもう一つぐらい検証してみますか。
「ちょっと・しばらく・少々お待ちいただけますか?」

あ、「っ」に関しての話をしてませんでしたね…今日はやめましょう。(すでに濁点に関しての話も省いてるんです!)

「ちょっと、しばらく、しょうしょう」あなたはどの音にどんなイメージをお持ちでしょうか?

「しばらく」が一番、筋肉を使いますね。「しょうしょう」は省エネな感じ。

こういうのって、方言別にみるとどうなんでしょーね?

最後にもう一つ、面白い着眼点をご紹介します。

バンっ

と拳銃で撃たれて、死に際のダイイングメッセージ。

ドラマなどでよくあるシーンですが、このときの発音はどうするか?

よくあるのが、モゴモゴと何言ってるのか聞き取れないような演技です。
でも、もしあなたが本当に死にそうだったら、できるだけ滑舌良く喋ろうと努力すると思いませんか?

もう死ぬって時に、一番聞きたくない返答は

「え?もう一回言って?」

ですよね。

出来るだけはっきりと喋ろうとするが、筋力が低下していたり、肺活量が弱っているから、うまく発音できていない、

という意思と、それを阻害する状況をふまえた演技が、本来は求められます。

これまで、3回にわたって発声のお話をしてきました。

来週からは、演技の基本中の基本、本幹ともいえる「意思」の話をしようか、それとも「即興」について詳しく掘り下げていくか。
ご要望あれば、コメントいただきたいです!

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