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ピンチをアドリブで乗り越える技 39/100(即興術07) -5Steps 3/4

自問自答を繰り返しながら、
アドリブと演技の関係を
追求していってみようと思い立ちました。
100回(?!)連載にて、お送りします。


5ステップス 〜その参〜

先週に引き続き、即興の基本となる「5ステップス」をご紹介します。
1. Environment
2. Relationship
3. Conflict

そして、次は
4. Escalation
です。

まずは前回のconflictのおさらいですが、
キャラクターの立ち位置の「ずれ」が、
物語の立ち上がる瞬間です。

その直前には、大抵の場合において、フラグが立ちます。
いやいやいや、、、そこはツッコめよ、と思うところ、
それがだいたいフラグです。

例えば、
「あ、もう直ぐ隣なんで30秒ほどです」(いや、近すぎやろ)

「かしこまりました。チーズケーキもオススメしてるんですが、ご一緒にいかがですか?美味しすぎて、もうわたし今週毎日食べちゃってるんです!」(毎日って)

ちなみに、このふたつどちらが良いかというと、
「あ、もう直ぐ隣なんで30秒ほどです」
の方は、面白い設定ですがあまりお勧めできない、上級者向けになります。

これには例えば、

「そうですか、それでは30秒ほどの保冷剤お入れしときます」(どういう量やねん)

のように、フラグに乗っかって、ボケを畳み掛けることによって、何となく面白くは出来ますし、ズレを生じさせることが出来たように見えますが、じつは一見地味な

「かしこまりました。チーズケーキもオススメしてるんですが、ご一緒にいかがですか?美味しすぎて、もうわたし今週毎日食べちゃってるんです!」
からの
「いや、わたしチーズ苦手なんで大丈夫です。」

のほうが圧倒的にシーン構成としては容易です。

何が違うかお分かりでしょうか?

どちらも、ズレを生じさせることは出来てますが、30秒の方は、事象に関するズレで、ふたりの立ち位置のズレではありません。

このシナリオだと、関係性は同列なので、更に何かしら別のズレを探していかなくてなりません。

物語を成立させるには、人物同士の関係性におけるズレを探すほうが、圧倒的に広がりやすいです。

何故かというと、即興術05(37/100参照)の通り、登場人物が同類同士になってしまうと、会話のベースが同意になってしまうからです。

対話が成立するためには、適度な差異が必要です。
「はい、そうですね」と、すべてに関して同意していたのでは、会話が花開きません。

これって多分、日常の会話にも言えることですよね。
(すべてに同意してもらうことに快感を覚える方々も多いですが…)

さあ、空気、関係性、ズレまで来ました。
では、次の展開、4つ目へ進みましょう。

「いや、わたしチーズ苦手なんで大丈夫です。」

への返答として、

「いえいえ、チーズ苦手な方にもとても人気なんですよ。全然チーズっぽくなくて!」

と返すのはどうですか?あり?
一見すると、チーズケーキであるということ自体を否定する、「Yes, and」に反する一言のように思われますが、
「チーズっぽくないチーズケーキ」と言っているだけで、前提は肯定しつつ、更に「ずれ」を大きくしています。

これが4つ目の、Escalationです。

「エスカレートする」って言いますよね?あのEscalationです。

3で確立させたズレをベースに、その差異を大きくして「増幅」させます。それによって、流れと勢いが生まれ、物語が進展していきます。

ここまで来ると、あとは比較的自然に展開していきます。

「いやいや、チーズっぽくないって、チーズケーキとしてどうなんですか?」
「でもだから、毎日食べちゃうんですよね。濃厚すぎるチーズケーキって、流行ってますけど?バスクとか?だいたいバスクって何?バスケ?みたいな感じじゃないですか。このチーズケーキは本当にあっさりしてるんですよ。」
「バスクは、スペインのバスク地方という所の…」
「本当に軽いんです!ほら!持ってみて下さい!」
「いえ、結構で…」
「ね!ほぼ空気!これはもう空気、雲ですよ雲!バス雲チーズケーキ!」

2人の登場人物の立ち位置に差異を作ったことによって、会話が廻り始めました。

どうしても客にチーズケーキを食べて欲しい店員

どうしても食べたくない客

会話が続かない時、他の話題に活路を見出しがちですが、少し遡って、ズレを見つけます。そして、そこを掘り下げることによって、会話は自ずと展開していくものです。

ピンチに陥った時は、これを逆手にとって、それ以上の差異を生まないように、するべきなのかもしれません。

さて、ここからが一番の悩みどころです。

「5ステップス」の最後、Conclusionへ続きます。



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