稽古場の居方、の話01

稽古場の居方。
けいこばの いかた
と読みます。
そのままずばり、「居る」の居と「やり方」の方で、いかた。
学校の教室にも居方はあるし
社員食堂でも居方はあるし
たぶん電車の中でも居方はあるだろう。
(飛行機の中はもっとあるかな)
でも稽古場とか現場以外であんまり使わないかもしれない。
つまりは、「どう居るか」ということで、
”あなたがどんな態度で過ごしているか周りが見ていますよ”
ってことを思い出す言葉。
演劇系のインタビューとかでたまに
「先輩たちの稽古場の居方とかも見ていてすごく勉強になります」
のような使われ方もするし
スタッフの飲み会で「あの役者の現場での居方マジ最悪じゃない?」っていう使われ方もします。
(もちろん、スタッフにも居方はある。し、なんなら飲み会にも居方はある。むしろ大有りだ)

(「稽古場の、居方」というより、「稽古場での、居方」のほうが日本語として正しくないか?という突っ込みはまあ、記事のタイトルの語呂が良かったので許してください。ちなみに演劇人にはどちらでも伝わります)
01、ってしたのは、たぶんこれからも書くだろうなって思ったので、なんとなく。

それは、稽古が始まる何分前くらいに入るかとか
空き時間にストレッチや声出しをするのか、一人すみっこで台本読んでるのか、後輩の自主練を見てあげるのか、とか
出番じゃない時に席からじっと稽古を見てるのか、邪魔にならないところで自主練しているのか、コーヒー飲みながら談笑しているのか、とか
ダメ出しの時にメモをとるか、自分以外へのダメ出しの時にソッポ向いてるのか、とか
何かしてもらった時にお礼を言うのか、当然と思っているのか、使った小道具をもとの場所に戻すのか放置しておくのか、とか
翌日のスケジュールを確認してから帰るのか、人を誘って飲みに行くのか、一人だけでも自主練するのか、とか
まあ一挙手一投足まるっとひっくるめた単語が「居方」なわけですが。
(キャストっぽい項目を挙げてしまったけれど、スタッフの項目はまたセクションごとにもあるので、、、そのうち02とかで書くかもです)

***
でも居方って現場によって変わるんだよなあ、って、ふと思い出したんです。
プロジェクトごとにチームを組む仕事の人には分かりやすいかもですが、
演劇って、劇団じゃない限りは、公演ごとに違う顔ぶれが集まって一つの作品を創り上げるわけで。
稽古初日から千穐楽までの、短くて4,5週間、長い時は半年くらいを、ほとんど毎日、家族よりずっと長く顔つき合わせて仕事して、
千穐楽の翌日からは急にもう一切会わない。解散!ってなる。
みんなが仲良しなカンパニーも、いつまでも他人行儀なカンパニーも、すっごい大所帯で「あの人だれだろう」って思ったままの人がいるカンパニーもあるけど、毎回、稽古初日には新しい顔ぶれで「さあこれから一緒に作品創りましょう」となる。

***
ということは、キャストでもスタッフでも、自分がその中で最年少だったりけっこうベテラン勢に分類されたりする可能性が毎回ある。
屈強な男性スタッフが多くて力仕事を任せられる時もあれば、小柄な女性スタッフばかりの現場で我先にと力仕事を担当せねばならない時もある。

制作さんを始めた頃はもちろん若造で下っ端で、
「元気よく返事して走り回っているのが良くて、なんなら空回っているくらいのほうが先輩たちから可愛がってもらえる」
みたいな時期があった。そのころはそんなこと思ってもいなかったけれど、自分が年を重ねて若い制作助手さんたちが空回っているのを見ると、
なんだか微笑ましくなって応援したくなる。
カンパニーの末っ子ポジションだ。

でも、ある時自分より若い役者さんがたくさん居る現場で、
可愛い女優さんが「キャー!」って叫んだ席に走って行ったら虫がいて、
「この子のために虫を退治せねば!」と思った瞬間から
「このカンパニーでは若い役者さんたちのオカンであらねば」と、気持ちを新たにした時期もあった。

またある時は、若いスタッフが多くて、
分類するならベテランになってしまった自分が
どっかり構えていないと周りを不安にさせてしまうな、と
内心焦りながらも余裕っぽい空気を醸し出していた現場も。

別の現場で仲良しになったキャストやスタッフと久しぶりに一緒の現場になるとうれしいし、だけど久しぶりすぎて距離感が分からなくてちょっとぎこちなかったりする。(タメ語で話してたっけ?どうだっけ?とか思い返したりね)
ちょっぴり気まずいのは、
前の現場では「元気でみんなに率先して話しかけにいく」制作さんをやっていたのに
今回の現場では「ちょっとピリっとした空気を醸し出す」制作さん、みたいに居方を変えないといけない時、
前の現場のテンションを知られていて恥ずかしいな、って思ったりもする(笑)。
例えば制作さんとしてのメインの業務が、
前者はSNS用のコメント動画や稽古場写真なんかを撮る係だったりして、
後者は若い役者が多い現場で学校の先生のように時に厳しくしないといけない全体見る役目、
なんかだと、自分の振舞い方が異なってくる。

制作さんでこれなんだから、
「今回あの人と敵対する役だから稽古場でもあんまり仲良くならないようにしよう」
「今回はみんなのお兄さん的な役だから稽古場でもそういう風にコミュニケーション取ろう」
なんてことを考えないといけない役者さんはもっと変わる。

***
なんでこんな話を書いたかというと、
先日久しぶりに会ったスタッフさんが
「君がすごくいい人だって褒めてたキャスト、去年一緒になった現場では気難しくて全然扱いづらかったけど、今年の現場では本当に面倒見が良くて現場のムードメーカーになってくれて助かったよ。やっと君の言ってた意味が分かった」
って話してくれたから。
好きな役者さんが褒められてると私もうれしい。
久しぶりにあの人の演技を見たくなったな。

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