見出し画像

貴女は「ブレードランナー2049」で今すぐオフメキシコを開拓なさい



" I saw a miracle delivered. "

(本編中のとある人物の台詞からの引用)




ようこそいらっしゃいました。わたくしは毎日大量のテキストを執筆していますが誰にも読ませるつもりはありません。しかし、阿呆共とファッション腐女子が溢れかえるこの世界に傑作「ブレードランナー2049」が生まれたにもかかわらず、これが真の女の中の女のための映画であるという事実が隠蔽されていることを知り、わたくしは貴女に徹底的に分からせるためにこの記事を公開することとしました。

ちなみに、更新を停止するなどと弱音を吐いた前任者は多次元宇宙刑に処し解任済みです。


「アンタら『最新型』は……」
 モートン氏は苦労して立ち上がりながら、背後のKに呟いた。
「……オレらをただ見下してはしゃいでるだけだ」
 ブラスターを手にしたKが無言で見守る前で、モートン氏は首を巡らせ、そして振り返り、Kに向かって静かに怒りの言葉を続けた。
「何故って、アンタらは奇跡の一つも見たことが無えからだよ」
 モートン氏がKを見つめた。巨魁の目に悪戯を楽しむかのような不可解な表情が浮かんだが、次の瞬間、それは悲しみを湛えた決意に変わった。モートン氏はKに向かって無謀な突進の第一歩を踏み出した。Kはモートン氏にブラスターを向け、仕方なくタップ撃ちした。
 轟音が室内を揺るがした。ド派手な銃声に比べるとまるで冗談のように小さな銃創とともにモートン氏の胸を貫いた二つの銃弾はしかし、瞬時に彼の体内を破壊した。モートン氏はその場に崩れ落ちた。
 Kは床に倒れた「解任」直後のモートン氏をしばし見おろした……タイレル社が皆様に送るネクサス8の新機能! 避けられぬ死を目前にして戯言を吐きバンザイ突撃! ……愚にもつかぬ考えを止め、Kは腹ペコ仕事の最後の段階に取り掛かった。 



きちんと鍛え直しなさい


せっかくこのようにわたくしが貴女に分からせようとしているにもかかわらず、貴女ときたら「何で劇場公開から1か月近くもたった今頃?」などと疑問を呈するどころか、「ライアンゴズリングとジャレッドレトな上に老ハリソンまで盛ってきて、あたしだけを殺す映画ですかってwwwそんなん何も言われんでも観に行くわwwwww」といった緩み切った態度で劇場に臨んだ挙句、ウトウト舟をこぎながら2時間40分の上映時間を耐え抜いた自分を褒めるといった自惚れた態度で劇場を後にし、たった一回鑑賞しただけの阿呆共が書いたネット上の最速ネタバレレビューのたぐいを読んで満足して二度とこの傑作を観賞しようともせず、スマホゲーのガチャに現を抜かしているのです。そのような貴女の振る舞いは、鬼畜メガネの祖にしてアーキタイプであるワイルド7の草波勝隊長のことすら全く知ろうとせずに嬉々として鬼畜メガネについて語るが如きファッション腐女子の振る舞いそのものです。かくの如きファッション腐女子は、ある日オフメキシコのバーでカウンターに佇むベニチオ・デル・トロ様を発見するやいなや周囲の状況も確認しないまま真っ先にトロ様に駆け寄ろうとするため、途端にバーで始まったシカリオ共とトロ様との銃撃戦に巻き込まれあっというまに流れ弾でスイスチーズにされて死に、無残な屍をバーの床に横たえるのです……トロ様のための肉盾にすらなれず……本来の貴女は、トロ様を狙う卑劣なスナイパーの背後に亡霊のように現れナイフでその喉を掻き切り続けざまにシカリオを満載してバーの前に乗りつけたカルテルのトヨタハイラックスに平然とグレネードランチャーを叩き込んで一網打尽に皆殺ししてから悠々とバーの入り口をくぐってカウンターに向かいバーテンに横目でトロ様を指し示してクールにオーダーする……「彼に一杯おごるわ」……注文をしていないのに目の前に現れたショットグラスを見て、トロ様はやや離れた所に立つ貴女に気付き、貴女はトロ様に謎めいた微笑で答える……そういうオフメキシコに相応しい女だったはずです。なのに、貴女はいつからウェイランド湯谷の戯言に惑わされ、御粗末なファッション腐女子の振る舞いに及ぶようになったのですか。今すぐ反省してきちんと鍛えなおすとここで約束なさい。

ですから、貴女が「ブレードランナー2049」できちん鍛えなおして再びオフメキシコを開拓するためには、わたくしの言葉を聞く必要があります。わたくしは劇場公開以来、週1~2回のペースで鑑賞しており、すなわち計算によると大体5回くらい鑑賞したことを意味します。このように真の女の本能に基づき真の女のための映画を繰り返したわたくしの書くレビューは、一回見ただけの阿呆共とは根本的に異なりとても信頼できることが貴女には理解できるでしょう。

貴女は、わたくしの言葉を通じてこの映画に対する認識を根本から改めなさい。わたくしが登場人物について説明するだけで、「ブレードランナー2049」が真の女のための映画であることを貴女は認識するはずです。



登場人物


    「ラ・ラ・ランド」に引き続き、今作の彼は、真の女が好む真のライアンゴズリングです。その点について今作は保証できます。「K」の意味は良く分かりませんが、その意味をあれこれ詮索するファッション腐女子の振る舞いに及ぶ必要はありません。わたくしの推測では、「KARATE」や「KILU BILU」といった強いワードを連想させる文字を適当に付けたのだと思われます。原作者ディックも好んでKを自称していました。

ジョイ   Kと同居するパートナー。超絶ブラック職業に疲弊するKにひたすら寄り添い、K本人よりも誰よりも彼のことを理解しようとする、真の女です。

ラヴ    下記のウォレスの有能秘書。撃つ・刺す・殴る・蹴るという真の女の四大基本ムーブを高水準で鍛え上げた、真の女です。

ウォレス  天才科学者。「合成農業」の技術を開発して世界を飢饉から救った英雄であり、今作のL.A.では、誰もがウォレス社製のディストピア飯で飢えを凌いでいます。倒産したタイレル社に代わって今作で人造人間「レプリカント」を製造しているのもウォレス社です。ですが彼は、ファッション腐女子そのものの恐るべき野望を秘めていたのです……

女子    「マダム」とも呼ばれる、Kの上司。明らかにアルコホールの問題を抱えている上に、ライアンゴズリングとファックしたくてしたくて仕方がないことを隠そうともしないこの者に対し、貴女はこの者がファッション腐女子であるとの判断を下すかもしれません。ですがこの者もまた、真の女の価値が問われる女と女の対決を通じ、自らが真の女であることを証明しました。

デカード  前作「ブレードランナー」の主人公。歳とったせいで人の話をよく聞かずにすぐ発砲するようになってしまいましたが、30年の空白の間に真の女が好む男の基本ムーブであるパンチを鍛え上げて再登場しました。

あの女   みどり児を生みし、あの女です。あの女の存在と不在がこの作品の通奏低音となっています。


このような真の女を描く傑作を何故繰り返し鑑賞していないのですか。貴女は自分の胸に手を当てて反省する必要があります。



前作くらい先に見なさい


まず貴女はこのことを覚えておきなさい。この世界には三種類の人間しかいません。すなわち、阿呆共、ファッション腐女子、そして真の女です。言うまでもなく、世界のほぼ半分は阿呆共で占められています。残りの半分もまたファッション腐女子が大半であり、真の女の数は少ないのです。

ですから、真の女だけがその真価を理解できる真の女の中の女のための映画は興行的にコケることがよくあります。前作「ブレードランナー」も劇場公開時にはほとんどその存在を黙殺されましたが、長い年月を経て真の女がその評価を世界に広めたのです。

そして、貴女はわたくしに言われるまで気付かなかったかもしれませんが、今作「ブレードランナー2049」は、本家の評判に便乗して作られた、客が誤解しやすいタイトルを意図的に付けた低予算パチモン映画ではなく、前作「ブレードランナー」の正統続編です。そのことに貴女が独力で気づかなかったとしても、そこまで落ち込む必要はありません。ウェイランド湯谷の支配は日々巧妙さと過酷さを増しており、映画製作者が不用意に「2」をタイトルに付けてしまうと、わたくしたちの世界ではこれが「リミックス」に変換されてしまうというプロトコルが蔓延しているのです。こうお話している間にも、「デスティニー」は「鎌倉物語」に変換されようとしています。このようにして新作映画が続編なのかパチモンなのかをタイトルから判断できなくさせる力がこの世界を支配しているという事実を貴女は直視し、胸に刻みなさい。そして、「2」が「リミックス」に変換される世界において、続編のタイトルに「2」ではなく「2049」すなわち計算によれば2の11乗プラス1というナンバーを付し、もって映画タイトル変換機構の計算負荷限界を突破することでウェイランド湯谷の支配の目を欺くという今作の映画製作者の作戦は、なかなかに優れているものといえるでしょう。

このように貴女は「ブレードランナー2049」が「ブレードランナー」の続編であるという厳然たる事実を目の当たりにしたのですから、きちんと「ブレードランナー」を鑑賞し、その真価を理解した上で劇場に挑戦しなさい。「ブレードランナー」を鑑賞しても楽しめないのであれば、そのまま自宅でファッション腐女子よろしく乏しい蓄えをスマホゲーのガチャにつぎ込んでウェイランド湯谷の支配に服従していればよろしいのです。



前作と比べるのは阿呆共とファッション腐女子だけです


わたくしがこれだけ説明しても貴女は「ブレランが評価されたのは『デッカードはレプリカントなのか』といった哲学的テーマが」などといった阿呆共の戯言に惑わされ「若い頃のハリソンには興味ないから」という理由で小難しそうな前作の鑑賞を避けて劇場に突撃した結果、無残な屍を晒すかもしれません。

ですから、貴女はこのことをよく考える必要があります。阿呆共の戯言が正しいのであれば、「ブレードランナー」は「デッカードはレプリカントなのか」みたいな話を阿呆共がこねくり回すネタにすぎず、そんな作品の続編をわざわざ30年もたってから作ったところでまた興行成績が惨敗するだけです。そのような続編を巨大予算をかけて制作するでしょうか。

答えは明確です。「ブレードランナー」は真の女のための映画であり、そして、長い歳月を経て、今この時代に再び、興行上のリスクを抱えてでも真の女のための映画を生み出すべくして、真の女が好む真の映画監督であるドゥニ・ヴィルヌーヴの手によって、傑作が生みだされたのです。ですから貴女は、今この時代のこの世界に続編が作られたことの意味を理解しなさい。

前作「ブレードランナー」は、端的に言えば、暴力刑事デカードが過酷な世界の中で葛藤し、真の女が好む真のハリソンフォードに覚醒する物語でした。ですがわたくしは、それに止まらず、真の女の中の女の義務として、ネット上の阿呆共が誰一人として指摘しない事実を平然と指摘します。覚悟なさい。

それは世界のあり方についてです。前作「ブレードランナー」が公開された栄光の80年代において、「ブレードランナー」の世界の2019年はまだ、未来において到来する可能性のあった、リアルな、魅力的であると同時に正直言えば到来してほしくない不吉な予言としての未来のあり方を示したものでした。

ですが、今のこの時代のこの世界はどうでしょうか。あり得た2019年の到来はウェイランド湯谷の未来改変能力によって歪められ、わたくしたちは2019年を目前として、どう転んでもあと2年で「ブレードランナー」の世界に到達するとは思えない2017年を生きているのです。本来あるべき2019年が到来してしまっては事前に「ブレードランナー」で予習し鍛え上げた真の女たちによってその支配体制が破壊されることを恐れたウェイランド湯谷による陰謀の存在を、真の女である貴女の研ぎ澄まされた嗅覚は感じ取ったでしょう。その邪悪な陰謀により、わたくしたちの世界ではスマホやネットといったものを通じガチャ課金の金額によってネット社会のステータスが上昇するかのような幻想があたかも事実のように語られ、その結果阿呆共とファッション腐女子は自発的な奴隷と化しているのです。こうして、本来あり得た未来だったはずの「ブレードランナー」は、2017年現在、「あり得ない現在」となっているのです。

にもかかわらず、「あり得ない現在」の続編として「ブレードランナー2049」が制作されました。その意味をきちんと考えなさい。つまり、作品の立ち位置とかそういったことです。

貴女は薄々感づいているはずです。インフルエンサーとユーチューバーで溢れかえる世界、真の女の中の女であるティプトリーが「接続された女」で最悪の形で予言した未来を更に徹底的にカリカチュアした世界が恐るべきことにわたくしたちが生きる現実になってしまったことを……真の女のドラマである「ブレードランナー」が生み出された栄光の80年代……カセットテープ……スターロード……ハッセルホフ……ストレンジャーシングス……そして、言うまでもなくサイバーパンクです。そういったものが確かに関連していることを。

故に、「ブレードランナー2049」は誕生しました。「ブレードランナー」があり得ない現在となってもなおかつ現在もその価値をいささかも損なっていないということは、すなわち、長い歳月を経て「ブレードランナー」は神話となったということです。サイバーパンクL.A.は神話世界であり、「ブレードランナー2049」は今のこの時代のこの世界に生きる真の女のために制作された、真の女たちが織りなす神話のアップデートなのです。

だから貴女は、今作と前作を比較するようなことをする必要はありません。神話と現在の神話を比較するなどということは全く立ち位置が異なる作品同士を比較することであり、完全にファッション腐女子の振る舞いそのものであると貴女は理解したはずです。今作を見てもなお「デッカードはレプリカントか否か」みたいな戯言を弄するのは阿呆共だけであり、真の女が好むヴィルヌーヴはそのような戯言を完全にどうでもいいことにする映画として今作を作ったことを、今作を鑑賞した貴女は一発で分かったことでしょう。

真の女である貴女に対して得意げに「そんな世界の在り方がどうとかみたいなことを考えて映画を見るのは『人類とは……クジラとは……』みたいなことを考えて映画を見るのと一緒じゃん」などと言ってくる阿呆共に遭遇したら、こう言っておやりなさい。「貴様の生存の条件を規定しているのは、クジラか、それとも世界か」と。真の女が自発的奴隷となることを拒否して過酷な世界で生きる以上、その生存の条件を探るためには世界のあり方について常に考えることは当然と言えます。

いいですか。貴女は真の女とはなにかという問いかけと、この世界についての問いかけを決して忘れてはなりません。そのことを肝に銘じて「ブレードランナー2049」を鑑賞し自らを鍛えるのです。



苦痛を知りなさい


貴女は鑑賞を通じて目撃します。真の女が拳を固め、KOROSHIの刃を振るうとき、そこに生じる苦痛は貴女にとっても身を切るような切実な苦痛として伝わってくるのです。ファッション腐女子そのもののウォレスが命をいいように弄んで行うKISSと、真の女が放つKOROSHIのKISSとでは、貴女に伝わってくる切実さが全く異なるということが貴女には分かったはずです。真の女を前にしては、阿呆共が量産してファッション腐女子が黙々と摂取するエンターテイメントとして消費可能な暴力など存在し得ないのです。

そして貴女は、そのような切実さの根源を忘れてはなりません。ウォレスのようなファッション腐女子が安全な場所でヌクヌクと命を弄ぶ一方、わが身を顧みず過酷なオフメキシコの戦場に身を晒す真の女たちに貴女は愛おしさを感じ、真の女たちが傷付き倒れるときに切実な苦痛を感じることでしょう。そこでは、人間かレプリカントか、あるいはそれ以外の存在であるかといった区別が全く無意味であり、重要なのは、真の女であるか否かというただ一点のみだということを理解しなさい。

つまり、そのような切実な痛みをもたらす愛おしさこそが真の女の極めて重要なファクターの一つなのです。これが真の女の真のKAWAIIです。今この世界では、阿呆共はポルノとして消費することができないKAWAIIに対して執拗な迫害を行い、ファッション腐女子は完全メイクの上で量産型着回しコーデとマスクを着用して外出するよう要求する同調圧力を使い真の女の真のKAWAIIを排除するのが当たり前となっています。ウェイランド湯谷の支配がそのような世界を生み出しているのです。貴女が真の女であれば、生きるためにこの世界に立ち向かうこと、そして、そのための武器、オフメキシコを開拓するコルトやウィンチェスターが必要です。

わたくしは真の女を導く真の女の中の女なので、貴女にKAWAIIとはどういうことであるかを徹底的に叩き込むことに躊躇することはありません。観念しておとなしく次の曲を鑑賞なさい。


Joni Mitchell ~ Big Yellow Taxi + Both Sides Now (BBC - 1969)


もし貴女の中に真の女の魂が眠っているのであれば、真の女の中の女である偉大なるジョニ・ミッチェルがKAWAIIを有しており、一方で、世の中の阿呆共がジョニ・ミッチェルをブス呼ばわりすることを本能で感じ取ったでしょう。阿呆共が好んで使用する「ブス」とは所詮は記号であること、それに対し、KAWAIIは記号ではないということに十分注意を払いなさい。

貴女がKAWAIIのセンスを有しているのであれば、続けて次のような曲を鑑賞し継続的に鍛えていくのが良いでしょう。


Joni Mitchell - In France They Kiss On Main Street



ですから、貴女が真の女として生きるのであれば、自らKAWAIIであることに躊躇してはなりません。貴女がこの世界で生きる上で、阿呆共の迫害に屈して媚びを売る必要も、ファッション腐女子の同調圧力に屈して自撮り画像を盛る必要も全くないと、真の女であるわたくしは自信をもって断言します。真のKAWAIIが真の女として生きることの必須条件であると、「ブレードランナー2049」は教えてくれるのです。

以上のとおり、貴女が「ブレードランナー2049」で自らを鍛えるのは、今この時代のこの世界に生きる貴女の義務であることが完全に証明されました。真の女が5回くらい鑑賞してレビューしたからです。だから、貴女は繰り返し鑑賞するのです……貴女は必ず手にしなければなりません……オフメキシコを開拓するKOROSHIのナイフ……サイバーパンクL.A.神話世界の中で輝きを放つ真のKAWAIIを……