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テキストカラテ私論

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サイバーパンクニンジャアクション小説「ニンジャスレイヤー」の構造・形式面について、素人なりに独自見解を述べます。また、「逆噴射文体」についても考えてみます。
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#DHTLS

【2018年エイプリルフール企画】 エミリー・ウィズ・アイアンドレス ~センパイポカリプス・ナウ!~ 第2048話

【2018年エイプリルフール企画】 エミリー・ウィズ・アイアンドレス ~センパイポカリプス・ナウ!~ 第2048話

 もう時間がない。アイアンドレスの敗北と私の孤独な死は目の前に迫っていた。今このコクピットにセンパイがいないことはもちろん悲しいけど、そのことは私の心に悲しみよりもずっと大きな安らぎをもたらしていた。これまで多くの、けれどかけがえのない時間をいっしょに過ごしたセンパイ……パートナーの私と手を重ねて共に運命重騎兵アイアンドレスを操縦しカイジュウとの絶望的な戦いに身をささげてきたオニヤシャ=センパイは

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【ペケロッパ・カルト】 破 # 10、急

【ペケロッパ・カルト】 破 # 10、急

(承前)

# 10
「Wasshoi!」 

 何やらアルケミーと会話していたニンジャスレイヤーが突如として咆哮し、一瞬姿を消した。再び姿を現したニンジャスレイヤーは右手でアルケミーの顔面をわしづかみにし、その頭部をコンクリート柱に叩きつけていた。そしてニンジャスレイヤーの背に何本もの結晶の槍が突き刺さった。ヒロコの視界が露光過多になった。

 何もかもが白くなったヒロコの視界の中で、ニンジャス

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【ペケロッパ・カルト】 破 # 7~9

【ペケロッパ・カルト】 破 # 7~9

(承前)

# 7
 生まれて初めて足を踏み入れるヤクザバーの店内は、想像していたよりもずっと清潔で、そして無機質だった。腹に響く重低音のビートに乗せたエンカの店内BGM。左手から奥にかけての壁際に並んだボックス席はすべて人数比1対2のヤクザとゲイシャで埋まっている。ミラーボールで照らされるフロアには金属ポール。

 店内に数歩足を踏み入れたところで、突然コトブキが立ち止まった。ヒロコはコトブキの

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【ペケロッパ・カルト】 破 #4~6

【ペケロッパ・カルト】 破 #4~6

(承前)

# 4 
 先制アイサツを決めたニンジャスレイヤーの隣にコルヴェットが並び立ち、傾げた帽子の鍔の先端を右手でつまみ、アイサツした。「ドーモ。コルヴェットです」二人のニンジャは、新たにピザタキにエントリーしたロボットじみた外見の異様な二人のニンジャと対峙した。ペケロッパ・カルトの手の者であることは、状況のみならずあの外見からも明白だ。

 「ヒロコ=サン、こっちへ」コトブキはソネを小脇に

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【ペケロッパ・カルト】 破 #1~3

【ペケロッパ・カルト】 破 #1~3

(承前)



# 1
 場末の薄汚い外観のピザ屋「ピザタキ」に連れてこられたことで、ヒロコの困惑はこの日の頂点に達した。

 もう4度目になる今朝、哀れなペケロッパ・カルト信者を「保護」しようと悪戦苦闘していたところで助太刀に現れたのは、あの変わった、綺麗な人だった。その人は、見た目からは想像もつかない腕力を発揮して、たちまちペケロッパ信者の手首を縛りあげた。その時は驚きよりも嬉しさがはるかに

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【ペケロッパ・カルト】 序

【ペケロッパ・カルト】 序

 晴れ間を覗かせる早朝のネオサイタマ東部、オールド・カメ・ストリート。そのメインストリートは、ストリートの中央に公園を兼ねた幅広の緑地帯を備えた、ネオサイタマの典型的なマーケットストリートである。緑地帯を挟んで南北に伸びる細い二本の舗装路に新鮮な食材をメインとした露店が並び、多くの買い物客が行き交う。舗装路に面した店舗のいくつかは軽食堂で、通勤通学途中にそこで朝食を済ませる者も多い。

 緑地帯に

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めんどくさいから、過去作の再掲で済ませたい

めんどくさいから、過去作の再掲で済ませたい

(承前)

はいどうもー。モンハンもそれなりにやったんで、そろそろ再始動します。前回は忍殺のテキストについて理屈っぽい話に終始しちゃったんで、今回は実践編。どうやって書くかのその先、どういうプラクティスしたら書けるようになるのかについて私見ですけど色々話していきたいと思います。

ところで先日行われた「ニンジャスレイヤー222」コン、以前よりも小説作品が増えてて喜ばしい限りです。だけどね、正直、全

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我々はそろそろ、真剣に嘘松について考えるべきではないか

我々はそろそろ、真剣に嘘松について考えるべきではないか

文体とは、「作者の流儀、彼独特の抑揚、彼の語彙、ある文章に直面したとき、これはオースティンのものであって、ディケンズのものではないと、読者に叫ばせるような何ものか」のことであるーーウラジーミル・ナボコフ

はいどうもー。前任者解任とか色々あって間が空いちゃいましたが、今回も忍殺文体の構造や技巧なんかの面について解説です。忍殺や逆噴射文体の表面的な言葉遣いはマネできても、なんか本家のようなグルーヴに

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