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雨音を聞きながら、想う

 ここしばらく陽射しの届かない日々が続くなと思っているうちに、そのまま梅雨入りが発表されてしまった。大抵梅雨に入る前には「走り梅雨」という天気のぐずつく期間があったりするもので、通常ならその後晴れ間の続く期間を経てから本格的な梅雨に入るものなのだが、どうやら今年はこの走り梅雨が長引いたまま、ズルズルとなし崩し的に梅雨へと入った格好らしい。この天気のメリハリのなさというかだらしなさが、まるで休日の自分と重なってしまい、なんだかむず痒さを覚えてならない。

 そんな不快感を振り払うべく、休日である今日、久々に文章を打ち込んでいる。もちろん、日本酒という相棒を呷りながら。今日も今日とて、引き続き雨粒の叩く音が鳴り止まない中、ふとネットで適当に『梅雨 旬の食材』と検索してみると、食材の名前があれよあれよと連なって出てくる。
ナスやピーマンはよく味噌炒めにするし、トマトだってチーズを合わせてカプレーゼにしたりするし……などと一人呟きながら眺めていたら、ふとトウモロコシの名前を見て、マウスを動かしていた手が止まった。そういえば、もう何年も食べていない事に気付いたからだ。

 別にトウモロコシが嫌いなワケではない。むしろ好きな部類だ。醤油を塗って焼いた時のあの香ばしさ、黄色い粒を噛んだ時に溢れる甘み。小学生の頃とかは、よく夏の時期に食べていた記憶がある。毎日頻繁にという程ではないのだけど、友達とゲームボーイのポケモンをプレイしながら食べたり、幼馴染の女子と夏休みの宿題の休憩時間にクレヨンしんちゃんを観ながら食べたり、何かと印象深い思い出のお供にいる事が多いから、そう思えてしまうのかもしれない。

 それがどうだ、今ではめっきり食べなくなってしまった。もちろんここ数年蔓延ったアレで屋外のイベントというか屋台に寄る機会が減ったのもあるし、そもそも友達なども結婚するなどして一緒に食べ歩く機会が無くなってしまったのも大きい。けれども一番の理由は、あのトウモロコシの粒にある。そう、トウモロコシをかぶりついたあと必ずといっていい程残る、あの歯詰まりだ。歯と歯の間に挟まるトウモロコシの皮を取るのに、毎度四苦八苦してしまう。小さい頃はさして気にならなかったのに、高校生大学生と年を重ねるうちに、それが億劫と思えるようになってしまった。

 これもまた、大人になった弊害というものなのだろうか。だとしたら、少しばかり悲しい。誰かこの一手間を楽しく思えさせる方法などを知ってる方がいたら、是非教えて頂きたい。あるいは、かぶりついても粒や皮が歯に詰まらないようなトウモロコシを開発して欲しい。

 とりとめもなくネットを観ながら適当に叩いているうちに、雨音が聞こえなくなった。どうやら雨が止んだらしいので、夕飯でも買いにスーパーに出かけよう。
 せっかくだし、久々にとうもろこしでもあれば買ってみよう。そしておやつ代わりに、目一杯かぶりついてやるんだ。
 未だ憂い気に覆い続ける曇天ごと、かぶりつくつもりで。

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