自宅で感じる熱量とノスタルジーの夏 〜ザ50回転ズ 11時55分をテーマに~
”あの娘にキスを今 できるのは風だけ”
ザ50回転ズ "11時55分"
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未だに研究室は完全再開とはいかず、自宅での作業が続いている。
関東地方はいつの間にか梅雨入り、雨粒が家の天井を打ち付ける音、夏の足音がきこえてくる。
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23歳にとっての夏とはなんだろう
男女で海で騒いだり、花火をしたり、ちょっとしたドキドキがあったり
男子校出身の筆者は、そうした夏を想像できない
中高時代に妄想していた、誰もいない日差しの照り付ける校庭、蒸し暑さとは裏腹にどこか爽やかな夏
見知らぬあの娘に思いをはせる夏
妄想の世界の夏
どこかノスタルジックな、ロマンチックな、ピュアで湿気のある夏を想像してしまうクセがある
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暇を持て余している平日
無観客ライブを求めてYoutubeサーフィンをしていたところ、ある動画に出会った
ザ50回転ズ、日本で一番熱いといっても過言ではないロックンロールバンド
配信されたのは3月5日、気づくのに遅すぎた
ここからは、ぜひ動画を見ながら、副音声的に読んでいただきたい
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無観客のライブハウスを一回り
知らないけどなぜかテンションのあがるSE
ステージ中央に輝く提灯
続々とステージにあがってくる、おかっぱ3人組
始まりは激しめのナンバー
ノーカットの手振れしまくりのカメラワーク
ボーカル・ダニーの関西弁のストレートな熱い声
コールアンドレスポンス込みの軽快なMC
ここまで、10分30秒
おふざけ感のある、The ザ50回転ズという感じの雰囲気
所詮にわかファンの僕だが、これだけでも十分満足な、熱いライブだ
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10分35秒、Gの優しいコードが響く
”大変な時代です、本当に
本当に心から思ってること、生放送でいうのもあれなんですが
ロックンロールの力の及ばぬ世界もあったり
でも具体的に、(正確に聞き取れず)
一番大事ですが
俺たちみたいに、休んでる人の娯楽になるべきロックンロールも
ここにあるんだぜ”
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この熱量と、軽快さからにじみでてくる優しさ
ダニーの笑顔が、その感情を余計に煽ってくる
すでに視界が滲んできているが、追い打ちをかける
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”普通 こういうMCの後ぶっ飛ばすナンバーやるんですけどもね
あの、ロマンチックなナンバーやってしまうんです”
”やってしまうんです”という、どこかこっぱずかしさがある言葉
僕の中に、一気にノスタルジックでピュアな感情が込み上げてきたDコード
”11時55分という歌です”
11分55秒のことだった
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どこか懐かしい、優しさ溢れるコード進行のイントロ
”悲しいほど晴れた 8月の校庭に
夏がだるそうに 昼寝をしているよ”
”あの娘にキスを今 できるのは風だけ
夏が魔法をかけた 11時55分”
決してキラキラした夏じゃないかもしれない
でも、その純情と熱量
ノスタルジックな気持ちと、涙がポロリと溢れる夜
23歳になっても、いや、いつまでも
”そんな夏を想像する夏”でいたいものだ
そんな大学院生活である。
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