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フェルナンデスギターの倒産と布袋寅泰氏について語る件

昭和のギターオヤジに、悲報です。

先月、2024年の7月半ばにフェルナンデス社が事業停止し、自己破産手続きの申請を始めました。

もう少し正確に言えば、国産エレキギターブランド「FERNANDES」の製造・販売を手がけていたのが株式会社フェルナンデス(埼玉県戸田市)で、主に外注委託(OEM)で製造した自社ブランドのエレキギターやベース、アンプ、エフェクターなどを販売していた会社です。
1980年代には著名アーティストとライセンス契約を結んだり、ギター職人の養成学校を開設するなど業容拡大し、50歳代以上のギターオヤジには馴染みの深いギターブランドでありギターメーカーでした。

と言っても、ギターに興味なければピンときませんよね。
それでは、こんな写真はいかがでしょうか?

写真は2021年夏の東京パラリンピックの開会式で演奏する、布袋寅泰さんとその愛機。
日本が誇る屈指のギタリスト、元BOØWYボウイの布袋さんを象徴するエレキギターで、1985年にフェルナンデス社との協力によって作られたギターです。
(写真のギターはその後に同じデザインで作り続けられている何代目かのもの)

また、個性的なデザインのギターを得意とするフェルナンデス社は、こんな可愛らしいエレキギターも大ヒットさせています。

おとなのさぁどぷれいす 2024/3/31より借用

写真は1990年の NHK紅白歌合戦で、B.B.クイーンズが演奏する『おどるポンポコリン』(アニメ『ちびまる子ちゃん』テーマ)。
ギターの近藤房之助さんが弾いているのは、フェルナンデス社の ZO-3ぞーさんというミニエレキギターです。
見た目はオモチャでも、音質や機能はプロの演奏に耐えるものでバカ売れしました。

さて、その頃の私はといえば、フォーク・ニューミュージック系を愛するアコギ派少年でしたので(当時はアコギという言葉はない)、エレキギターには食指を動かしませんでしたが、GRECOグレコIbanezアイバニーズ(当時はイバニーズ)、Aria Pro2アリアプロ2等、高校生が買える範囲の国産廉価エレキギターが全盛を誇っていた時代でした。

そうした国産ギターメーカーが濫立していたのは、さらに一時代前の1960~70年代の洋楽上陸に刺激されて起こったバンドブーム、GSブーム、フォークブームが原動力となっているわけですが、ギター専業メーカーなどなかった当時、木工職人やタンス職人や電気回路技師が舶来ギターを分解して模倣品を作り、螺鈿らでん細工や鼈甲べっこう細工の職人さんが装飾を施して『国産ギター』の歴史をスタートさせたのだと推察します。
なにしろ、そうした細かい手作業の精巧度では世界一の器用さを誇る民族でしたから…

そんな国産・良心的・協業的廉価ギターですが、2000年代のバンド離れにより売上げが激減。
2010年代からはバンドブームが再来しますが、中華製の廉価・粗悪製品の流通によって手工品の高級ギターは全く売れず。そうした大陸系の廉価ギターがスタンダードとなり、ビギナー層の中高生を始め、趣味として始める大人の需要を全て飲み込んでしまいます。
一方で、昔ちょっと齧っていたリターンプレイヤーの大人は、往年の中古品=ヴィンテージギターに大枚を投じ、昨今の原材料不足による木材高騰と円高も相俟って、中古ギター市場の相場は10年前から5割以上も高騰しているようです。

そんな中で、日本人のベテラン職人が手作業で丁寧に削りだしているギターが、大量流通に乗る術はありません…
気の毒で残念で寂しいですが、時代ときの流れは残酷ですね。

さて、ここで終わってもよいわけですが、私にしては文字数が少なめのようですので、余談を一つ…

先に東京パラリンピック開会式の写真を紹介しました布袋寅泰さんと、その愛用ギター。
その独特のデザイン、俗に『水道管』と呼ばれていますが、あの幾何学模様が如何に生まれたか?のエピソードです。

若い頃の布袋さんは、仲間とバンドを組んで、或いはソロのギタリストとしてあちこちのライブハウスに出演し、『対バン』を繰り返す日々。
他のバンドが次々に売れていって、ライバル視していたギタリストが会う度に新しいギターを買い替えていくのを横目に、自身は古びれた安物の黒いエレキギターを使い続けている。
ある時、若気の至りか、見栄を張って新しいギターを買ったように見せかけようと部屋にあった白いビニルテープを貼ってみたところ、なかなかカッコいい。
それで日を追う毎にビニルテープを貼り替えてみたり貼り足してみたりするうちに、不規則に縦横に貼ることであの模様が…、という次第だとか(諸説あり)

そういえば自分も、中学2年生の時に買ってもらった Morris W20というシンプルなアコギに、市販のキラキラ光る星マークのステッカーを貼ってみたものの、今イチしっくりこなくて虚しくてすぐに剝がしたりしていたような…

白いビニルテープ1本を駆使して、あの芸術的な模様を編み出した布袋さん、アンタはエラい!

最後に、2024/7/17の ORICON NEWSより、フェルナンデス社倒産の報に触れた布袋寅泰氏の激白記事を紹介しておきます。

ギタリスト・布袋寅泰(62)が17日、自身のSNSを更新し、独創的なデザインの自身のギターを生み出し、先日事業停止、破産が報じられたギターメーカー・フェルナンデスへの思いを明かした。
布袋は「僕のギタリストとしての歴史に欠かせない布袋モデルは、コンコルドヘッドにEMGのピックアップと手描きの幾何学模様ペイントという、それまでのテレキャスターのイメージを一新する斬新な発想のもと、1985年にフェルナンデスの協力のもと誕生しました」と、自身のギターのルーツを説明。
「そして初期布袋モデルの開発にも関わった松崎淳氏がフェルナンデスから独立しZODIACWORKSを立ち上げたのが1992年。時代と共に変化する僕のプレイスタイルを更新し続けることができたのは、フェルナンデス社と松崎氏を初め多くの方々の支えと協力があったからこそと感謝しています」と、礼を述べた。
 布袋は続けて、「松崎氏の訃報が届いたのが2022年。そして先日フェルナンデスの事を知り、とても寂しく残念に思います」と、先日、事業停止、破産が報じられたフェルナンデスへの思い、松崎氏の訃報によって23年に閉業を余儀なくされた「ZODIACWORKS」への気持ちを明かした。
 一方で、「先人たちの意志を継ぎ次世代のプレイヤーたちに繋げると同時に、ジャパニーズ・クラフツマンシップの技と力を世界に伝えたいという思いと共に準備してきた新たなギターブランド"Zodiac NEO"プロジェクトがローンチされました」と、その意志を継ぐプロジェクトが立ち上がっていることを明かし、「フェルナンデスとの出会いからもうすぐ50年。時代が変わろうとも、ギターの魅力は普遍的で色褪せることはない、と僕たちは信じます」と結んだ。

ええ話しですねぇ…

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