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2023/5/24 ピエール・ボナール《ヴェルノン付近の風景》

ボナールは猫をたくさん描いた画家でそっちも紹介したいけど、今日は風景画を紹介したい。

ピエール・ボナール《ヴェルノン付近の風景》1929年 アーティゾン美術館

ピエール・ボナールはナビ派に属する画家である。ボナールは色彩によって独自の画風を確立した。マティスの時も書いたが、どうも私は色彩が得意な画家に弱いようである。

ゴーギャンの絵画指導に端を発しているナビ派は、アカデミー的な写実主義から離れ、見えた色の印象を重んじて作品制作をした。ボナールの作品もまた、幻想的な色彩のものが多い。この《ヴェルノン付近の風景》は、当時画家の家があった場所の近くらしい。素敵なところに住んでいたんだな〜というのが率直な感想である。私がこの作品で特に好きなのは、水面に映る影が紫色で描かれていて周りの黄緑を引き立てている部分と、地平線から黄緑と青がモヤモヤとして空気遠近法のような効果を生み出している部分である。

幻想的な色使いを得意としたボナールだが、曖昧なグラデーションの中にも色彩学に則った部分や、画面全体の重量、構図などがかなり理論的に散りばめられている。これはかなり持論であるが、パステルカラーやグラデーションのような幻想的な色彩を扱う画家ほど、論理的な画面構成が得意であると思っている。最近のイラストレーションでも色面構成にこだわって細部は相当省略しているような作風が流行っているが、もしかしたらセザンヌ以降近代絵画は写実の理想を捨て、色面構成にずっと全振りしているのかも知れない。

ちなみに、この作品を所蔵するアーティゾン美術館は都内にある。ここのところ国外の美術館、フジタは地方だったのでなかなか今までの文章を読んだところで作品が実際に見られないような作品ばかりだった。先の作品紹介で「やっぱ現物見ないと!」とかイキってたのに見れない作品ばっかり紹介してもね……と思い、今日は「見に行ける作品」としてボナールの《ヴェルノン付近の風景》を紹介した。アーティゾン美術館は所蔵作品が大変素晴らしく、近代以降の西洋画が充実している。ボナールのような、日本での知名度微妙だけど偉大な作家の作品を多数所蔵している。ボナール作品も複数所蔵しているので、常設展も合わせて見てもらいたい。6/31(土)から「ABSTRACTION 抽象絵画の覚醒と展開 セザンヌ、フォーヴィスム、キュビスムから現代へ」というまさしくな展覧会もあるので是非。青騎士や未来派も出るらしい、楽しみ。

アーティゾン美術館はきれいで明るく、ミュージアムショップのアイテムが面白い。アーティゾン美術館の回し者みたいになってるけど、都内でもおすすめできる美術館のひとつだ。梅雨前のわずかな初夏、せっかくなので美術館に行くのも悪くない。

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