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2023/05/18 フランツ・ヴィンターハルター《侍女に囲まれたウジェニー皇后》

今日は急に暑くなったせいか体調が優れずPCに向かう元気がないのでスマホから書いています。いつもとフォーマットが微妙に違ったらごめんなさい

フランツ・ヴィンターハルター《侍女に囲まれたウジェニー皇后》1855年 コンピエーニュ城

フランツ・ヴィンターハルター《侍女に囲まれたウジェニー皇后》1855年 コンピエーニュ城
好きな肖像画家をひとり挙げなさいと問われたら真っ先にヴィンターハルターの名前を出すと決めているくらい、私は彼の絵が好きである。ヴィンターハルターの名は、シシィの愛称で知られたオーストリア皇妃エリーザベトの肖像画のほうで聞いたことがあるひとも多いかもしれない。私が今日紹介した作品に描かれているのはフランス、ナポレオン三世の皇后ウジェニーだし、ほかにもイギリスのヴィクトリア女王や帝政ロシアの大公妃などなど、ヴィンターハルターの顧客は当時の欧州を掌握する高位貴族たちだった。

なのでとにかく肖像画に登場する女性たちの服装のきらびやかなこと!最上級の素材と手間暇が掛けられた素晴らしいドレス、ジュエリー、ヘアスタイル、どれもがヴィンターハルターの筆致で精緻に描き取られており、当時の服飾の資料としても扱える。《侍女に囲まれたウジェニー皇后》は、皇后とその侍女たちの華麗な装いがひしめき合っていて、隅から隅まで見ていて飽きない。こんな豪華な人々がそぞろ歩いていたなんて、欧州王室恐るべし。ちなみにヴィンターハルターが活躍したのは日本でいうと江戸末期なので、当時外交でこういう人たちと会った日本人はさぞ面食らっただろうなぁと思う。

そして私がヴィンターハルターのこの絵が好きなのは、どの女性も美しく煌びやかに描いているものの、依頼主であり最高位のウジェニー皇后がさりげなく、でもしっかりひと際輝いて描かれているところ。ヴィンターハルターの肖像画家としての「手腕」が発揮されている部分だなと思う。ただ依頼主を美しく描くだけでなく、満足してもらえるような仕掛けもきっちりできるところが、彼が王侯貴族から引っ張りだこの肖像画家だった理由だろう。

先述したように、ヴィンターハルターの手による肖像画の中の女性たちは皆本当に煌びやかである。それが富の象徴だったり政略結婚の手段だったりあるいは政治的プロパガンダとして利用されていたり、そういう事情は加味する必要がある。それはそれとして、やはり肖像画を描いてもらうにはその時の最上級を見せたいという気持ちは、現代の私たちにもわかる気持ちである。今でこそ少なくなったけど、写真館で家族写真撮るときはもちろんお洒落するし、なんならプリクラですら撮るって分かってたらお洒落する。ポーズもとる。「画面の向こう」という意識は、肖像画の時代から連綿と学習されたものらしい、とヴィンターハルターの作品を見ながら思う。

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