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2023/5/23 サミュエル・プラウト《ため息橋》

昨日絵心はないと書いたけれど、絵を描くことは好きで水彩画はずっと描いていた。もう随分長いこと絵なんて描いてないけど……。そんなこともあって水彩画を見るのはとても好きである。今日は油彩から離れて水彩の作品を紹介をしようと思う。

サミュエル・プラウト《ため息橋》 1839年 大英博物館

サミュエル・プラウト《ため息橋》 1839年 大英博物館

サミュエル・プラウトは日本ではあまり有名ではないが、英国では王室付きにもなった画家である。彼は水彩を専門としていた。英国は水彩画が得意な国である。水彩画は元々、油彩画を描く前の習作に用いられる技法として扱われ、なかなか水彩画自体に「作品」としての価値を認められることはなかった。豊かで美しい自然があり植物園なども整備されていたイギリスでは野外スケッチが発達し、野外での作品制作に最適な技法として水彩画そのものを大切にする土壌が育まれた。そしてターナーの登場により「水彩画といえばイギリス」と言われるまでに水彩画の技法は大成する。

サミュエル・プラウトも王室付き「水彩」画家だったので、イギリスでの水彩画の地位の高さが伺える。プラウトは街角の風景を描くことに秀で、各地の街角を描いている。この《ため息橋》はイタリア・ヴェネツィアの名所の風景であり、彼は他にも多くヴェネツィアの風景を残している。

「ため息橋」はヴェネツィアに今も残る橋で、名前の由来が、囚人が監獄に送られる際にこの橋から見られるのがヴェネツィアの最後の風景であり、囚人がため息をこぼすから、というもの。プラウトの描く《ため息橋》は、夕方なのだろうか、陽が左側の壁にだけ当たり、左右、空と運河、遠くと手前でコントラストが生まれている。石壁や橋の様子は精緻に写し取られ、細部を鑑賞者に伝えている。

私はまだヴェネツィアには行ったことがないが、この作品を見ているとまるでヴェネツィアに行って見てきたかのような気持ちになる。どうも当時の人もそう思ったようで、プラウトの街角の風景シリーズは色々な印刷物に掲載されるほど人気だったようだ。今よりももっと旅行が大変だった時代に、これだけ精緻な街角を描ける画家が重宝されたのは納得である。

久々にじっくり水彩画を見て、なんだか絵筆が懐かしくなった。気分の良い時に一枚くらいまた絵を描いてみようかな?

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