SPEAK NO EVIL / Wayne Shorter
どんな集団の中にあっても、なぜかいつも中心的な存在になる人がいます。小学校6年間で何度も学級委員長に選ばれたり、合コンに参加すれば話題をさらってしまう…。しかも、いつの間にか自然にセンターに立っている。そんな資質に恵まれた人を見ると、これまでの人生において脚光を浴びる機会のなかった私は悔しいやら、羨ましいやら…。
今回ご紹介するサックス奏者:ウェイン・ショーターが学級委員長であったかどうか、合コンでモテたかどうか知りませんが、共演者が誰であろうと自分のスタイルを貫き、リーダーでないにも拘わらず主役になってしまいます。しかし、姿勢として「俺が、俺が…!!」ということは一切ない。与えられたコード進行とリズムに合わせて自然に独自のメロディーを淡々と奏でるのですが、いつしかリーダーをさておいて主役になってしまうような人です。ステージにおいて、不必要なボディー・アクションで目立とうとしたりすることはありませんし、観客にニコニコ愛想を振りまくこともめったにありません。あくまでサックスの生音と旋律の魔力でセンターに立つ人であります。
そんな彼のリーダーアルバム:SPEAK NO EVIL は、魔法のメロディーがふんだんに散りばめられており、次にどんなメロディーになるのか展開の予想がつかない不思議に満ちています。それに触発されてトランペットのフレディー・ハバードも負けじとばかりにへんてこりんなアドリブを吹き鳴らし、その結果、アルバム全体が異様なムードに仕上がっています。それでもこのアルバムはまともな方でありまして、この作品以降、もっともっと変態チックな旋律へと突き進んでいくウェイン・ショーターでありました。
さて、当社がオープンに向けて準備を進めているシェアオフィス、コワーキングスペースSTUDIO 080のコンセプトは“CIEG(チェッグ)”。これはポーランド語で、日本語に翻訳するとステッチ、縫い目、縫い方、刺繍などを意味する言葉です。 AとB、異なるモノや人を縫い付けて、新しいモノ、より大きなモノを創造するのがSTUDIO 080 。
フレディー・ハバードがウェイン・ショーターのメロディに触発されて、これまでにないフレーズを演奏したように、利用者の皆様に出合いと刺激を提供したいと考えています。