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きっと、もう、わかりあえない

久しぶりに再会した人に、
「君はね、やっぱりどこか危うい感じがするんだよ」と言われた。
「そうして身なりを整え、まともなことを言い、他人を思いやるような行いをしていても、いつ、何をしでかすかわからない、そういう危うさがある」というのだ。

 四十を過ぎた今、私がそんな気配を漂わせているとすれば、それはただ自己の統制がとれていないだけのことであり、恥ずべきこと以外の何ものでもない。
 私は惨めな気持ちになった。

 男は「そこがいいんだけどね」と言ってニヤリと笑った。
 この人は、いつからこんな笑みを浮かべるようになったのだろう。昔はこんな笑い方しなかったのに。昔は、とそこまで考えて「昔は」なんて、まるですごい年寄りになったみたいだと思った。

 カウンターに飾られた豪奢な百合の花が、甘ったるい匂いを放っていた。

 男が話し続けている。

 自分のこと
 自分のこと
 自分のこと

 私の相槌がおざなりなことに気付く様子もなく、さも楽しそうに「自分のこと」を話し続けている。
 ふと、私がここで急に倒れても、この人は話しを止めないのではないかと思った。そんなことを考えている自分が可笑しくなって、小さく笑った。
 すると男は「なあ、そうだろう。お前もそう思うよなあ」と言って嬉しそうに笑った。

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