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貢献・感謝・成長のサイクルによってサービス業界に「働きがい」を生み出していく

株式会社thanXi(サンクシィ)CEOの吉田です。
2021年8月、私たちは株式会社thanXi(サンクシィ)を設立し、自走するサービス組織をつくる成長支援クラウド「CANaYELL(カナエル)」をリリースします。
代表を務める私は、2014年に株式会社ジリオンを設立し、「大衆ビストロジル」「シナトラ」「GONZO」等といった飲食店を都内で約15店舗経営してきました。おかげさまで、店舗の顧客満足度、社内の従業員満足度も業界1位※を表彰していただく会社へと成長することができました。

そんな私たちが、なぜ全く畑違いのテクノロジーの世界で挑戦をするのか。このnoteではその背景をお伝えしたいと思います。

※株式会社MS&Consulting社調べの顧客満足度調査で再来店意思/他人紹介意思という項目で2019年全国1位の75%という評価を獲得。株式会社リンクアンドモチベーション社2021年調べの従業員満足度調査で、飲食業界の中では1位となるスコア72.4トリプルA評価を獲得。

お客様の幸せと働く人の誇りに満ちた飲食業界

私が飲食業界で働くきっかけとなったのは、大学時代に先輩に誘われ、当時恵比寿にあったZESTというお店を訪れた夜です。恵比寿駅から5分ほど歩くと、突然現れる工場を改造したようなかっこいい店舗。3階建て420席という店内は、お客さんでいっぱいで、どの席にいる人も楽しそうに食事とお酒を楽しんでいました。働くスタッフの表情は誇りに満ちていて、オーダーに応える「YES!」という声が、にぎやかな店内に響いていました。

「こんなにも幸せな時間と空間を創り出せる飲食という仕事をしたい」と決意した夜が、私のキャリアのスタート地点でした。飲食業界で働く人の多くが、きっとこんな原体験を持っているのではないでしょうか。
お客様として、サービス提供者として、心が震えるような感動の瞬間を経験し、その瞬間をいくつも創り出すことを目指して、飲食業界で働いているのだと思います。お客様の笑顔やお客様や仲間からの感謝、を働くモチベーションにしている人が多いのが、飲食業界だと思います。

飲食業界は今、働く人にとって魅力的な業界だろうか

一方で、飲食業界で長年企業を経営してきたからこそ、生まれた疑問もあります。それは「飲食業界は、働く人にとって魅力的な業界だろうか」ということです。私自身が飲食業の経営者でもあり、自戒も込めた問いです。

例えば新卒採用市場においては、人気企業ランキング等で飲食業界の企業が上位に来ることは、まずありません。
あえて言葉にしますが「ブラックな業界」というイメージが先行してしまっており、新卒で飲食業界を志望する人は、学生時代に飲食業界でのアルバイトを経験し、そのやりがいを体験している人に限られてしまっているという現状です。

また中途採用市場においては、行き場を失いかけている求職者が増加しています。私自身、ジリオンの経営者として中途採用の面接をする際にも、自身の保有スキルや、次のステージでの意志や希望を言語化できない人に多く出会います。

欠員率は全業界平均の2.2倍、全業界最低水準の給与・待遇、コロナ禍によってさらに加速する人材流出。
飲食業界を一つの国として例えるならば、出生率が低く、平均寿命が短い国になってしまいつつある。そんな強烈な危機感を、私は抱いています。

一番大切にしたいことが、後回しにされてきた

業界全体が地盤沈下してきてしまった要因は、様々なことが考えられると思います。その中で、私が最も大きな要因を挙げるとするならば、顧客満足(CS)や従業員満足(ES)よりも、売上や利益や出店数を優先させてきてしまったこと、だと思います。

この20年の間に、例えば飲食業界では、大規模なM&Aも生まれ、数々の上場企業が誕生しました。業界自体の信用を高め、業界に投資価値があることを証明すべく、産業規模自体を大きくするべく、大手が業界を牽引してきてくれました。
ただ、その一方で会社が追いかけるKPIが売上や利益や出店数になり、働く人が大切にしたいCSやESの優先度が下がってしまったのだと思います。

企業が大切にしたいことと、働く人が大切にしたいことのズレ。
それが他業界よりも顕著に大きくなってしまったことが、業界全体の魅力低下に繋がっていると、私は考えています。
飲食業界で働く人は、人と直接コミュニケーションをとる仕事を選んで働いているので、貢献や感謝が大きなモチベーションになります。また「いつか独立して自分で店をやりたい!」という夢を抱いて業界で働く人も多く、成長できる環境も重要な要素の一つです。

私が飲食店を経営してきて改めて実感するのは、例えば会社の年商が10億円を超えたとして、それが仕事のモチベーションに繋がるスタッフは少ないということです。もちろん喜んでいないわけではありません。
けれど、それよりも、自分が働く店に対するお客様からの評価が高まることの方が、スタッフはよっぽど嬉しい。美味しかった、楽しかった、感動した、という笑顔や声をいただくことの方が、モチベーションに繋がるのです。

この業界で働く人は、業界や仕事が好きだから働き始めた人がほとんどです。人と接することが好きで、貢献や感謝や成長がモチベーションの源泉になる人たち。
けれど、業界では、売上や利益や出店数がKPIとして優先されてきて、働く人が大切にしたいことが大切にされてこなかった、というのが私の現状認識です。

私自身も長く飲食のスタッフとして働いた経験があります。今も、各店の店長を通じて、店舗の様子を知る中で、改めて飲食という仕事の尊さ、かけがえのなさを感じます。
売上や利益は企業経営をする上でとても大切なことですが、それはあくまで結果であって、飲食で働く私たちのスタート地点は、売上や利益ではなかったはず。
お客様の笑顔、それに向かって仲間たちと力を合わせた一体感。
「どうすればお客様に素敵な時間を過ごしてもらえるか」、ただそれだけに本気になって仕事に打ち込んだ時間。
こんなにも夢中になれる仕事は、他にはなかなかない、と私は思います。

飲食業界にいる私たちが一番大切にしなければいけないことは、この清々しい「働きがい」ではないだろうか。
働いていて楽しい、そしてちゃんと成長できる、この業界で働くことが未来に繋がるという「希望」ではないだろうか、そう思うのです。

貢献し、感謝され、成長していくというサイクルを生み出す

私が経営するジリオンでは、これまで1度も店舗拡大を目標に掲げたことはありません。売上や利益ではなくCSを評価基準にし、それが結果的にジリオンという会社を選んで働いている人のESに繋がったという手応えがあります。
店舗数を目標にしたことはありませんが、お客様からの期待に応え、スタッフが活躍する場を増やしていこうという思いの先に、店舗数・従業員数の増加がありました。

店舗が増えていき、会社が大きくなっていく中で、大切にしたいことが伝わりにくくなっていくという実感がありました。同じ時間・空間を過ごしていれば、言わなくても伝わっていたことが、意図的に伝えようとしなければ伝わらない。
売上や利益が目標ではない、とにかくCSだけを大切に、そう伝え続け、働く人の思いを傾聴し、環境を整備していくことでESへと繋げていく。会社規模が大きくなればなるほど、その重要性は増していきました。

私たち自身が自社の文化創り・環境創りに注力する中で、傾聴や称賛によるやりがいの創出や成長支援の仕組み創りは、1社だけ、1店舗だけで解決できる課題ではないと思うようになりました。
「先輩の背中を見て学ぶ慣習」や、業務特性としての「定性的な評価の難しさ」が横たわっている状況の中、業界全体として人事やHRの機能が発達してこなかったという状況は否めません。
そしてそれは飲食業界にとどまらず、対人感情労働という意味ではサービス業界全体の課題でもあります。

お客様や仲間に貢献し、感謝され、成長していくという好循環を生み出していく。日々の仕事にやりがいを感じて、また明日もいいサービスをしようと思える環境を創っていく。
人と人が触れ合う中で、笑顔や感動を得られるサービス業界の仕事から、人が離れていかないように。
その魅力を今以上に引き出し、「おもてなし」という世界的に見ても高水準でブランド化している日本の資産を、もっと活かしていけるように。
そんな思いで、私たちは「CANaYELL(カナエル)」開発という挑戦を始めたのです。

サービス業界を起点に、日本社会の課題解決に挑む

「CANaYELL(カナエル)」は、従業員の働きがいが、顧客満足を生み出し、業績向上に繋がるという「ES-CSサイクル」の構築を目指します
サービス業界での対人感情労働におけるスキル向上とモチベーション管理は、その難しさゆえにずっと後回しにされてきた課題です。そこにデータとテクノロジーの力を投入することで、「働きがい」や「成長」を定量化し、自発的・自動的に人が働きがいを実感して、成長し、組織成果に貢献する好循環へと転換していきます。

日本人の仕事満足度は、世界最低水準だという国際調査の結果があります。日本で数千万人が働くサービス業界から、その現状を変えていきたい。
私たち自身がサービス業界で長く働いてきたからこそ、サービス業界の仕事のかけがえのなさ、日本の国際競争力になりうるポテンシャルの高さ、そこで働く人たちの純粋で一途な想いを知っています。
そして、これまで会社が与えてきたものと、働く人が求めてきたものに大きなギャップがあることも痛感しています。給与や休日というその場しのぎの待遇の改善だけでは、本質的な課題解決にはつながりません。
有限なパイの配分に苦心するよりも、働く人が本質的に求める「働きがい」や「成長」という無限の価値を、テクノロジーによって可視化していきたいのです。

無いものを生み出すのではなく、見えなくなってしまっている「働きがい」や「成長」を定量化して見えるようにする。
それこそが、業界が陥っている悪循環を断ち切り、好循環へと転化する起点になるのです。

多くの日本人が感じる「働きがいの低さ」、国際基準で評価される「生産性の低さ」、そのことによって生み出される「労働は苦役なり」という概念や、社会の閉塞感。それを、1700万人が働くサービス業界から変えていきたい。
街のいたるところにあるサービス業の店舗は、お客様である全ての人に好影響を及ぼすポテンシャルを持っています。働きがいに満ちた人たちが提供する最高のサービスは、訪れる人に活力と笑顔を届けることができます。

サービス業界を「働きがい」と「成長」に満ちた業界にすることができれば、必ず世界は変えていける。
そして顧客満足と従業員満足が好循環する「CS-ESサイクル」は、サービス業界のみならず、全ての業界・仕事に適用できる仕組みだと思います。

この挑戦を、まずはサービス業界で。
そしてその先には、社会全体の働きがい・生きがいへと繋げていきたいと思っています。

最後に

サービス業界全体で、無人化や省力化を進めようとする流れがあります。それ自体は全く否定するつもりはありません。ただ、「人が必要なくなる」という認識は、間違いだと思っています。むしろ、サービス業界で働く人の価値は、より高まっていくでしょう。

人と人が触れ合い、笑顔と感動が生まれる。
そんな時間を創り出すのは、人の気持ちを思いやる最高のサービスであり、おもてなしです。全て、人が創り出すものです。

サービス業界で働く魅力を、その場しのぎの給与や待遇で補おうとすることは、本来この業界が持つ魅力を、安売りするような行為だと思います。最高の時間と空間を演出できた時に、仕事終わりに仲間とかわす乾杯に、この業界で働く醍醐味がつまっています。

業界で働く魅力を安売りするのではなく、「働きがい」と「成長」をしっかりと感じられる業界にする。
飲食業界やサービス業界で働いてきたマネージャーや経営者と一緒に、この業界で働く喜びを、働く人たちみんなに届けていきたい。
そんな思いで「CANaYELL(カナエル)」をリリースします。

私たちが愛するこの業界・この仕事を、もっと最高の業界・仕事に変えていきましょう。