色彩の権利{R/G/B/A:1.0.3}

{R/G/B/A:1.0.3}

 放課後部が、24日金曜日のクリスマスパーティ開催を決定したその翌日以降、その面々は午前中にexamのResult Review、昼からは24日の準備を押し進める日々が続いた。真燈は全体進行を仕切りつつ、明吏と奏慧が飾り付けの資材や食料などの手配班、都と更叉は手配班の準備した資材で飾り付けや小道具(?)の製作担当となり全体で準備を進めていった。時折、2年の部員である宮津家武雪も加わって、準備は特段大きなトラブルもなく、至って順調に進んだ。
 そして迎えた当日。終業式にあたるクロージング・セレモニーを終え、まずは宮津家を含む4人の部員と2名の部外者たちが部室に集まっていた。飾りもセッティングされた料理たちも、なかなかに豪華なものだった
「よっしゃ!とりあえずここまでの準備できたね!?」
 真燈が楽しみで仕方ないとでも言うようなテンションで檄を飛ばすと、「このあと届くものと、今予定している追加の買い出し以外は大丈夫じゃないですかね?」と明吏が返答した。
「んじゃあ、このあと、あと15分くらいで、ゲストにも知らせてるスタート時間なのですが、その前にここにいるメンツでちょっと」
 と、真燈が仕切り始めた。
「お?事実上の部長。スピーチか?」
 宮津家のガヤが飛ぶ。
「まあ、年内最後の部室での部活だしね。終わった後も時間あれば総括的なことするかもだけど、時間分からないので、先にひとつ」
 真燈が少し背筋を治して、座っていた長テーブルの席から立ち上がった。他のメンツは座って聴く体制を整える。姿勢を正した。
「まずは、奏慧に更叉ちゃん、今年は入部ありがとう。こんな意味不明な部活だから、後輩なんてできんのかなーと思ってはじまった4月からの新学期だったんだけど、元から知り合いの奏慧があっさり入ってくれて、さらに更叉ちゃんまで。篠坂もそうだけど。で、そこからまた繋がって、都くんも来てくれるようになりました。男子2人はまだ正式な部員ではないけれど、いつか部員にして見せるぜ。じゃないとあたしらが引退した後、校則的に部活としての体が保てなくなるってのもあるしね。新入生から何人か入ってくれればいいんだけど、それは今は当てにできないので。数合わせだけでもいいんで、来年こそはよろしく」
 珍しく部長らしくしゃんとしている真燈に、明吏は少し感心ながら、その話を聴いていた。
「てなわけで来年、本来ならうちらは夏過ぎかな?の引退までになっちゃうんだけど、そのつもりはなくしつこく居続けるつもりなので、卒業まで、よろしく。ってなわけでそろそろゲストも来るね。準備OKってことで」
「はい」
 答えたのは明吏だ。
「よし、それじゃあ、まずは実行部隊だけで軽く乾杯!楽しもうねー!」
「おー!」
 なんだかんだでみんなノリノリだ。少しだけ飲み物にみんな口をつけつつ、軽く談笑が始まっていく。懸念していたことは本当にないのだろうか、と明吏はまだどこかで警戒していた。
「…明吏、まだ警戒?」と声をかけてきたのは奏慧だった。
「まあ一応。なさそうだからそこまでじゃないけど」
「……心配性め」
「うっせ。無防備よりましってことで」
「それはそうだけど」
 と、そんなことを話しているとドアがノックされた。さて、みんなが誘ってきたゲストも交えて、いよいよ本番が始まる。

 その日のゲストは、当初真燈が想定していた人数よりも多く、彼女にとって意外な事に8名にも及んだ。普段部室に集まる人数として5〜7名程度なので、15人ほどともなるととても賑やかに感じられる。それは真燈にとって嬉しい想定外だったようで、彼女はどこかとても満足げにはしゃいでいるようだった。
「えっと、放課後部のみんな!声かけてくれた人たち、まだいる?遅れてくる予定の人とか?」
 時刻はゲストに告知していた14時30分から5分ほど経過していたため、一旦真燈の確認が入った。
 聞き届けた部員プラスアルファの面子は揃って「だーいじょーぶでーす!」と返答する。
「よし、じゃあ、面識ない人もいるけどみんな参加ありがとうございます!好きに過ごしてくださいね!メリークリスマース!」
「メリークリスマース!」
 全員が真燈の掛け声に呼応して、いよいよパーティがはじまった。
「あ、お話中すんません、真燈先輩。多分買い出しあるんで、先に紹介しておきます」
 楽しそうに自分のゲストと会話をしていた真燈のペースを身はぁらった明吏がそう差し込むと、「あ、うん!」と自分の方の会話を一旦切り上げて明吏に向き直った。
 すると、明吏と都の他に3人の生徒がいた。うち2人は女子生徒だ。
「えっとまず、みんな僕と都のクラスメイトなんですけど、まずはこいつが弥代潤哉」
 と、明吏が男子生徒から紹介を始める。
「サッカー部所属で、人見知りしないっすね」
「ほう!いいね!」
「よろしくっす」
「んで女子2人、こっち、ベリーショートの方が万ゆりあで、髪長い方が、壱岐凪咲って言います」
「よろしくお願いします!」
「お言葉に甘えてお邪魔しまーす!」
 万と壱岐の2人は、紹介のあった順にあいさつをする。
「んで3人とも、こちらが、現時点実質放課後部部長の京野 真燈先輩な」
「よろしくねーみんな!あんま時間ないかもだけど、どうぞお好きに!」
「はい!」
「ありがとうございます」
「たーのしみまーす!」
 3人は思い思いに返事を返すと、ヒラヒラと手を振る真燈に一礼した。
「楽にしてねー。二学期最後の1日楽しみましょー!」
「あ、それで真燈先輩、紹介も終わったんであと都に任せて行ってこようかと」
「いく?」
「買い出しっす。今のうちに行っといたほうがいいかなと」
「あ、ああそっか。あ、でもちょいまち。2人とも!」
「ん?」
 先ほどまで真燈と談笑していた2人の男女が声をかけられて真燈の方に振り向く。
「こちら、あたしのクラスメイトの深川純菜と三枝和成。どっちも仲良いんだけど、ここカップルね」
「へぇ!そうなんですか。あ、一年の篠坂明吏って言います。よろしくです」
「よろしく…あ、いつも真燈が言ってるのってこの子か」
「そう。もう3人いるけど、そっちは追々」
「へー。あ、深川です。よく真燈の話に出るからどんな子かなーって思ったんだけど、思ってたよりまともそう」
「どういう意味よ」
「真燈に気に入られる人って、大抵どっか変じゃん」
「自分たちのこと棚にあげるな。まったく」
「真燈の相手面倒だろ、篠坂くん」
 三枝がなんの遠慮もなくそのものズバリと訊いてきた。
「んー。それもそうですけど、何より疲れますね」
「あははは。さすが、よくわかってる」
「どういう意味だ三枝ぁ!」
「まんまだよ」
 軽くど付き合う2人。カップルでいながらこのテンションということは、3人は相当仲がいいのだろうと、明吏には見てとれた。
「あ、でそうだ。買い出しね」
「はい。深川先輩、三枝先輩一旦失礼します」
「うん。実行部隊は大変だねぇ。じゃあ、また後で」
「はい」
 すると2人は席を外して宮津家の方に歩み寄っていった。知り合いのようだった。
 すると真燈は明李を手招きしながら、数ほ人の輪の中から離れ、空いた空間の方に移動する。
「ごめんね、始まったばっかりなのに」
「いえいえ、後で焦るよりは。予定より飲み物ちょっと多めとお菓子少し足しますかね?」
「そうだねぇ。みんなこの後夕飯あるだろうし、食べ物はそこまでじゃなくてもいいかもね。個包装にすれば余っても配れるからそっちメインで行こう」
「はい。予算は?」
「これで!」
 と、明吏は真燈から紙幣を数枚を預かった。
「領収書はいつも通りでいいですよね」
「うん。1人で行く?大丈夫?行こうか?」
「何言ってんすか。主催はちゃんとどっしり構えていてくださいよまったく」
「じゃ、担当通り奏慧と行く?」
「んー…」
 と、明吏は背後の参加者の輪の中から奏慧を探し、見つけるとその様子を捉えてややしてから、改めて真燈に向き直る。奏慧がこちらの視線に気付いた様子はない。彼女もなかなか楽しそうに更叉とともにゲストのクラスメイトと思しき生徒と談笑していた。
「いや、1人でいいですよ。近いですし、そんなに時間もかかりませんし」
「都くんは?」
「んー…あいつ連れてくと、まだ、弥代が若干気まずくなるかなーと。万・壱岐ペアと、そんなにめちゃめちゃ喋る印象ないですし、けど都は普段から仲良いし、やつがいればまあ気まずくもないでしょうし」
「ん。わかった。あれ?宮津家は?」
「部員でもなく部室出入りしてたわけでもないのに準備手伝ってくれた彼女さんと一緒なのに連れ出せるわけないじゃないですか。何言ってんすか。アホですね」
「ぐぬう……でもそう言ってくれるならま、あかりんのお言葉に甘えるわ。代わりに一つ二つ、個人的に欲しいの買ってきていいよ」
「お、ありがとうございます。じゃ、行ってきますね」
 あかりん呼びへの違和感は一旦封印した。
「ごめん、よろしく」
「いえいえ。全然」
 そういうと、明吏はすーっ…と気配を消して、自分の鞄の中から、これまでの準備でも使ってきた大きめの、自分の財布も入ったトートバッグと学生証をシュッと取り出し見つからないように部室を抜け出した。隠密行動は、家での事情もあり昔から得意だった。
 真燈以外の誰かが自分の行動にめざとく目をつけていれば追いかけて出てくるかと思い、扉を閉め切って一瞬中の様子を音で伺うが、そんな変化はないようだった。想定通り。少し寂しい?いや、ない、ない。そのまま早足で、部室から距離を取って、そそくさと階段を降りる。運動部の声や、吹奏楽部の演奏の音が混ざり合って、いかにも放課後!という雰囲気は2期最終日となっても変わらない。というか、むしろ普段よりも活気付いているようにも感じられる。放課後部は今日で年内最後の活動になるだろうが、運動部の大半や文化部でもいくつかの部は、年内の最終活動可能日まで動くのだろう。学校のカリキュラムの方も、決して楽ではないはずなのに、ご苦労なことである。明吏は、そんな青春を過ごす生命力に勝手に感心した。
 部室が、クリスマスバージョンの飾りつけ効果と、実質冬休みがスタートしたという開放感によるみんなの高めのテンションもあって、つい心持ち、夕方から夜の雰囲気になってしまうが、まだ時刻は15時を回っていない。いくらクリスマスイヴと言えど、まだまだ陽は空に輝いているし、今日がまだ昼下がりと言っていい時間であることを主張してくる。雰囲気と先入観とはそんな錯覚を覚えさせる。ある意味恐ろしいものだ。
 そんなことを思いながら、明吏は昇降口を出る。念のため預かった予算をきちんと持っているかの最終確認をして問題ないことを把握して、校門のIDリーダーを問題なく通過した。

基本的に物語を作ることしか考えていないしがないアマチュアの文章書きです。(自分で小説書きとか作家とか言えません怖くて)どう届けたいという気持ちはもちろんありますけど、皆さんの受け取りたい形にフィットしてればいいなと。yogiboみたいにw