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Nervous Fairy-2

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 少しだけ、自分で作った城での過ごし方に慣れてきた、ゴールデンウイークを少しすぎた週末。
 窓も何もかも締め切っていて、それでも課題も創作もできなくて、腐って自分の挑発をいじって晴れた青空を眺めていたらいたら、なぜか風が吹いた。
 締め切っている部屋にだ。
 隙間風かもしれない。しかし、今まで、あたしの毛量の多い長い髪を揺らす風なんて吹いたことがなかった。あたしの髪は、胸より下まで伸びている。これも母に気持ち悪がられている一要因ではある。
 そして、不思議がって、そんなに風が強いのかなと唯一外界との接続である外に出てみた。今なら少し庭で遊んでも母には見つからない。この時間は買い物に行っているか昼寝しているかだ。
「……そうでもないか」
 実際、小屋を出た瞬間に関してはまるで凪で、そこらへんに咲いている草木も特段揺れていない。
 少しだけ自生しているシラーカンパニュラータの細い茎も揺れていない。
 なら、何で締め切った小屋の中に風が吹いたのか。
 と思って、その花に触れた時。

「新刻?」

 と、声がかかった。
 ん?と振り返ると、そこに同級生の男子がいた。教室ではまあまあ話す方の男子。引きこもりの側面は持ちつつも、別に他人が嫌いなわけではなかったあたしは、人並みのコミュニケーション能力くらい持ってる。ただ一人でもいられるってだけ。
「ん?……あれ、篠倉。どうしたの」
 おそらくあたしは教室で会う時みたいになんの表情も浮かべてなかったろう口調で返す。
「いや、今通りかかったらいるからちょっと気になって声かけただけ」
 自転車でもなく徒歩で通りがかった篠倉はそう答える。
「ああ。そうなんだ。帰り?」
「うん。何してたんだよ」
 本当に不思議そうに聞いてくるなぁ。庭いじりくらいするじゃん。
「なんか、締め切った部屋の中に髪揺れるくらいの風が吹いたから」
 あたしは篠倉から目の前の草木に向き直る。彼からしたら、後ろ頭が喋っているようなものだろう。
「そんなに風荒れてるのかなぁって思って外に出てみたら全然吹いてなくて不思議に思ってた」
「へぇ……あのさ」
「ん?何?」
 いつもなら言いたいことは割と言い合っているような仲だ。正直そんなに深いことを話す仲ではないけど。それでも会話量は多い方ではある。
「新刻の髪、綺麗だよな」
 不意に褒め言葉が来てビクッとする。
「……篠倉に褒められても嬉しくないけど、そうかなぁ?」
「うん。個人的な趣味もあるかもだけど」
「ロングヘア、好きなの?」
「そ。ってだけ」
 と、まるでこちらの興味を断ち切るように、それ以上詮索するなとでもいうように言い放ってきた。
「まあ、でも、褒められるのは悪い気はしないか。ありがと」
「いや、そんなことでもないよ。じゃ、また明日」
「ん?なんでまた明日?」
「明日も同じ時間にここ通るからだよ。予備校の帰りなんだ」
「ああ、そゆことか。まあ、タイミングが合えばね」
「へいへい。冷てぇなぁ」
「君に優しくする理由が見当たらない」
「いつも通りだな。んじゃ」
 そう言い放って、ひらひらと後ろ手を翻してさっていくやつ。
 …こんなにあたしをざわつかせて…何がしたかったのだろう?

基本的に物語を作ることしか考えていないしがないアマチュアの文章書きです。(自分で小説書きとか作家とか言えません怖くて)どう届けたいという気持ちはもちろんありますけど、皆さんの受け取りたい形にフィットしてればいいなと。yogiboみたいにw