Nervous Fairy-22"dARK leap"

 

←←←←←←←←←←←←←←

 目が覚めると、まだ全然早朝、6時前だった。
 隣の想はまだすやすやと寝息を立てている。
「…おはよ」
 起きないように小声でそう告げて、這い出るようにしてベッドを出る。
 このチャンスは、もしかしたら。
 起こさないように部屋を出て、階下に行くと、案の定、リビングから音がする。
「……おはよう」
「あら結城。早いじゃない」
 やはり、母が台所仕事をしていた。もう朝食の仕込みぐらいまではしているのか。コーヒーメーカーは動いていない。二杯分くらい作るか。
「なんか、目、冷めちゃって」
「新刻ちゃんは?」
「まだ寝てるよ」
「……ふーん?」
 不敵な笑みを、キッチンに入ってコーヒーメーカの準備をする俺に投げ飛ばしてくる。
「…なんだよ」
「寝てるんじゃない?とかじゃなくて、寝てる、って、あんた、昨夜一緒に寝たでしょ」
「……しくった」
「あはー!まじ!?まじ!?初の彼女!?」
「違うよ!そんなんじゃないわ!昨日あんなことあったし、1人っきりにすんのもなぁって思ってたら、向こうからそういう話があったから、受け入れただけで……」
 昨夜の寝たふりをしていた時にあった一瞬の出来事を思い出すが、隠し通す。
「……あのさ、絶対言わないし軽ーくでいいけど、喧嘩でもしたの?ご家族と」
「……絶対言うなよ」
 洗い物をしている母が話しかけてくる。その背後でコーヒーを作り始める俺。
「絶対言わない。聞いたら忘れる」
「……兄に乱暴されたの。たまたま俺が飯とかコピー用紙買ってきた帰りに横通ったら、悲鳴聞こえて飛び込んだら、あいつに馬乗りになって服脱がしてた」
「……はぁ!?ちょっと、警察案件じゃん!」
「そうなんだけど、想が何言ってもそうはしないって言うから。俺が勝手にするわけにもいかないし」
「それはそうかもだけど……」
「絶対言うなよ。もしここに長くいることになれば本人から言わせるから。流石に事情説明もなく長期滞在は本人がまず気まずいだろうし、そうなりそうだったら俺から促すから」
「……ほんと、お父さん似たわねぇ。良かった、あたしに似なくて」
「親父はまぁ、そうかもなぁ。でも似て損のない父親ではないと思うよ」
「それ、それそうよね!」
「相変わらずラブラブだなおい。あ、洗濯するんだよな。回してくるわ。出かけるなら早い方がいいだろ」
「あ、うん。お願いー」
 そう言って俺は脱衣所手前の洗濯機に向かって洗剤何やらを投入していると。
「…んー」
 と言う声とともに、背かに重みと温度がじんわりとくる。腰に腕が回された。
「ちょっと、寝ぼけてんのか、想」
「……だって寒くて起きちゃったんだもん」
「だもん、じゃない。恋人でもなんでもねーんだぞ」
「そうだけど…10秒だけ」
「はいはい」
 と、迂闊に受け入れた俺が馬鹿だった。
「あ、結城これも追加でおね……」
 と、リビングから話しかけながら玲子が出てきた。言葉が切れた理由はわかる。
「がう!」
 と言って手に持ったタオルをこっちにパスしてきた。時に腕が解かれて背中からも温度がなくなった。
「お、おう。って、おかん!?違うからな!?こいつ寝ぼけてるだけだからな!?」
「だって寒いんだもんだってー」
「聞いてんじゃねぇ!微妙に違うし!」
 その間、慌ただしく若干の寝癖のある長い髪を手櫛で直していく。
「あ、あの、お母さん、その、お、おはようございます」
「おはよ、新刻ちゃん。あ、今日行きたいところ後で教えてねー!」
 と言って、リビングの扉を閉めてキッチンに戻ったのだろう。
「本当に。思ったより迂闊だな想は」
「…だって起きたらいないんだもん。先に起きてしようと思ってたのに」
「ん?何を?」
「…あ…えと……起こそうと思ってたの」
「なんでだよ」
「昨日、結城が先に寝たから」
「だから?」
「早起き見せつけようと思って」
「何その意味のわかんない競争。よし。あとはしばらく待とう」
「干すの、良かったら手伝うよ」
「お、サンキュ」
 それからはコーヒーを一人分追加して、想は母に行きたいところを相談したりしていたら朝食の出来上がるタイミングで父が起きてきた。賑やかになってきたので会話もそれなりに弾む。
 なんか変な予感みたいものがあって、俺は想と洗濯物をベランダに干した後で、朝食まで出かける準備しとく?と伺うとそうすると言うので、部屋に戻って、財布だけ取ってキッチンへ向かう。
 その隙が、予感をそっち側に的中させるとは思わなかった。
「おかん、ちょっと一瞬いい?」
 小声で話しかけた。父には聞かれたくはなかったからだ。
「ん?何よ」
「しっ。これ」
 その言葉とともに、3枚差し出した。
「……なんで」
「昨日の夜、さっきの件とか諸々含めて話した結果なんだけど、2人さえよかったら、しばらく新刻置いてやって欲しいんだ。完全に住むってことはないけど、例えば出入りとか」
「何言ってんの。そんなの当たり前じゃない」
「だから、そうじゃなく……は?」
「あんたの言う通り、さっきの話本人からあってからだけど、1週間とか10日でどうかなる問題じゃないじゃない。一切内容は話していないけど、お父さんも同意済みよ」
「…まじか」
「そう。で、これは何?」
「一応いつもアクセの売りげから入れてるのにプラスアルファで、一旦倍。あとでもう一万渡すから」
「何よこれ」
「想の生活費とかあるだろ?それだよ」
「あんたが出すの?」
「とりあえず、とりあえずだから。事情も話せてない想に金渡させる気か?」
「まあ、それは、確かに?」
「とりあえずのフォローだから、使い道とかはまかすからとりあえず受け取っといて」
「……はーい。ほんっとお父さんに似ててなんかずるいよね、あんたって」
 はい?

基本的に物語を作ることしか考えていないしがないアマチュアの文章書きです。(自分で小説書きとか作家とか言えません怖くて)どう届けたいという気持ちはもちろんありますけど、皆さんの受け取りたい形にフィットしてればいいなと。yogiboみたいにw