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硯考 漢字用とかな用の墨

今回は、かなに漢字用の墨を使うとどうなるかについて考えてみました。
漢字用として古梅園の紅花墨(三星)、かな用として古梅園のかな用櫻形を使用しました。

これら二つの墨の大きな違いは価格を別とすると、原料となる煤粒子の違いです。一般にかな用の油煙墨漢字用に比べて微粒子で、さらっとしてのびが良いという特徴があります。漢字用は粒子はそれほど細かくなく粘性も高い傾向があります。

漢字用の墨がかなで使えないということはありません。その差はどこにあるのでしょうか。ここでは字形よりも線を中心に考えたいと思います。線の色は濃い、薄い、中間色、かすれなどがあります。実際に書いて比較してみることにします。
ここでは、筆はイタチの面相筆、紙はかな用の加工紙を使用しました。


漢字用墨とかな用墨の比較

写真では濃い線はそれほど差が見られません。2本目の中間色では明らかに紅花墨のほうはかすれが強くなっており、中間色がきれいに出ていません。3本目のかすれも強く出ています。

このように、かな用の墨では中間色がきれいに表現できるのに対して、漢字用の墨は、濃い墨から中間色の表現が弱く、急にかすれに入っていくことが分かります。つまり濃い線からしだいに薄い線に移るときの線表現に大きな差が出てくることになります。これは作品全体を見た時にも印象を異にするはずです。全体の立体感にかなり影響を与えそうです。

このように、漢字用の墨とかな用の墨には表現に差が出てくるため、どちらがい良いということではなく、作品に合った表現を使いこなすことのほうがが大切のような気がします。

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