見出し画像

Tengo veinte años.

 毎年10月になると外国語学習意欲が高まる。NHKラジオ講座の新学期が始まるからだ。6ヶ月が一サイクルで10月から始まる講座は3月まで続く。周りにスペイン語を話す人が多いこともあり、今年はスペイン語のテキストを購入した。
 NHKラジオの入門講座は毎回短い会話とその解説からなる。各回の会話は半年間を通して一つのストーリーになっている。物語の展開を追いながら文法事項を学習することができる。
 どの言語でも、最初の数回のうちに主人公の自己紹介がある。年齢、出身地、職業など、内容はどの言語も似通っている。初心者向けにシンプルな構文と単語を使うので、それだけ各言語の特徴が際立つ。
 スペイン語のテキストの第一課の会話のなかに気になる表現があった。

Tengo veinte años.(わたしは20歳です)

3単語からなるとてもシンプルな文だが、英語と比べてみると両語の違いが顕著にわかる。英語ではこうゆう場合、I am twenty years oldというだろう。二つの文を比べてまず目につくのは、単語数の違いだ。英語が5単語かけて言うことを、スペイン語は3単語で言う。だとすれば、英語の文にあって、スペイン語の文にはないものがあるはずだ。
 実は、スペイン語の文には英語のIにあたる語がない。スペイン語では動詞の形で主語を表示することができるので、英語のように代名詞を主語としておく必要がないのだ。文頭のtengoという単語は、「持っている」という意味の単語tenerの直説法現在の一人称の形だ。スペイン語は動詞の形で時制や主語を表示する。tenerは主語が「わたし」であればtengo、「あなた」であればtienes、「あの人」であればtiene。複数になると「わたしたち」ならtenemos、「あなたたち」ならtenéis、「あの人たち」ならtienenといった具合に形を変える。
 時制と主語に応じて動詞が形を変えることを活用という。英語の動詞に活用がないわけではない。例えば、useという単語は主語がIならuse、sheならusesというふうに形を変える。しかし、she/he以外の場合、I/you/we/they use the car(わたし/あなた(たち)/わたしたち/あの人たちはその車を使う)というふうに現在形なら全て同じ形になる。つまり、英語は動詞の形によって主語を判断することができない。だから主語、Iがいる。翻ってスペイン語は全ての場合に異なる動詞の形が割り振られている。そのためわざわざ主語を代名詞で表示する必要がない。これがこの文からわかる英語とスペイン語の最も顕著な違いだ。
 英文I am twenty years oldとスペイン語文Tengo veinte añosにはもう一つ大きな違いがある。スペイン語の文を一語ずつ英語にそのまま置き換えてみると、(I) have twenty yearsとすることができる。つまり英語は「わたしは20歳です」と言っているのに対し、スペイン語は「わたしは20年を持っています」と言っている。英語とスペイン語では年齢を言う表現に用いる構文も違うということだ。ちなみに、フランス語ではJ'ai vingt ansという。これもI have twenty yearsに対応する文だ。他の言語と比較してみると、英語の文法的特徴がよくわかって面白い。

アラバマ大学のキャンパス。変わり始めた葉っぱの色に微かに紅葉(fall color)の気配を感じる


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?