ALUMNI STORY Spiber株式会社 織田 隆太郎(農学研究科卒)さん
自己紹介:1996年広島県出身、2022年に東北大学農学研究科を卒業
※こちらの収録は2023年4月に行われたものです
織田龍太郎です。僕はまだ社会人2年目で、このような機会をいただけるだけでも嬉しいなと思っています。出身は広島県で、経歴が複雑なのですが、高専卒で科学系、生物系の珍しい学科にいました。その後、3年次の編入で静岡大学に行き、東北大の大学院で農学研究科というところにいて、昨年卒業しました。
私を表すタグとしては2つあって、1つ目は「#人と自然が好き」というところで、今は山形県鶴岡市にいて、いろんな人や自然と関わって楽しんでいます。2つ目が「#やらない後悔よりやる後悔」ということで、人生は一度だけなので、やろうと思ったことに関してはチャレンジするようにしています。
大学入学前:高専では野球、大学では旅にハマり、世界一周を経験!
中学生の時から振り返っていくと、父の仕事の関係で転勤があって、鹿児島では9年間と一番長い生活をしていました。ある時学校でセミナーがあって、質問をした時に、あなたは大物になると講師に言われて、それが根拠のない自信に繋がっていて、今でもそう思うことができています。
その後、高専に行って、愛媛に5年間滞在していました。そこでは野球部のキャプテンとして、3年間で完全燃焼しました。高専ではあと2年間時間があったので、兄の影響もあって旅にハマりました。好奇心があって、新しい場所を求めて、北上して静岡大学に行き、そこでも旅にハマって、国内をずっと旅していました。
大学院に行く前に、海外で世界一周をしているバックパッカーに会い、その人に影響を受け、トラベラーになりました。1年間休学をして、世界一周し、出国前にワーホリを2つとって、ビザとしてはドイツとニュージーランドに3,4ヶ月ずつぐらいいて、それぞれの国での経験が、今の考え方にもつながっています。ドイツでは、2週間ぐらい、電波も通じない田舎で、現地の家族と過ごして、親切な人がいて、自然があって、物質的には全く豊かではないけれど、自分的には本当に幸せでした。自分探し的な意味もあったので、人生の目的や将来を考えながら旅をしていました。その後、北欧やアメリカにも行って、ひたすらヒッチハイクをしたり、英語学習も兼ねてニュージーランドの最北端から最南端まで行ったり、農業のバイトも経験したりしていました。本当に色々な人と関わって、1年間で27か国ぐらい行きました。
大学入学後:麹菌の研究や農業にも取り組みながら、起業にもチャレンジ!
その後、復学して、東北大学大学院に進みました。東北地方に行ったことないなとか、あと都会はちょっと苦手だしな、ということで、軽いノリもあって東北大を選びました。新青葉山のキャンパスで、微生物学を専攻していました。
新青葉山のユニバーシティハウスに住んでいて、坂が急だったので、スノボをよくしていました。麹菌の微生物学が専門で、研究室に入って、チャリで青葉山に登り、ひたすら研究をするという生活を送っていました。
また、雨宮キャンパスの前に明善寮があって、そこに住んでいたのですが、農業がすごい好きだったので、農の可能性にすごくときめいて、明善寮の前に畑を作り、コンポストボックスも設置して、ひとりで上杉農園という名前をつけて、農業を営んでいました。
この時から生きる軸というのが固まっていて、スライドは旅した後に作った資料になるのですが、人生の目標はどうするのか、その達成方法は何か、みたいなことを考えました。当たり前ではあるのですが、幸せだったと思えるような人生を送りたい、その達成方法として、人に感謝される必要があるなと考えて、それが働くことで得られるなと、軸が構築された時期でもありました。
その後、ビジネスで課題解決を目指す学生向けの完全オンライン起業講座「ゼロイチゼミ」に参加し、起業という文字に憧れだったこともあってVEXにも入部しました。また、農業と人と自然が好きだったので、農家を巡っていたときに、ある農家さんに休学しちゃいなよと言われて、確かに就活、就職する前に一度そういう経験をしておきたいと思い、時期としてはレアだったのですが、大学院の2年の後期で休学をしました。
「農ある暮らしの提唱」をし、今の時代からは遡るビジネスだったのですが、日々感謝を感じて、幸せを感じるハードルを下げるという理念で活動していました。
結果的に起業には至らなかったのですが、ビジネスとしてはシンプルで、家庭菜園にアクセスしやすくして、有機農家と消費者の連携をする、仲介のECとしての機能を考えていました。ビジコンとかには出ていたのですが、マネタイズやメンバー面で思い悩み、あっという間に1年が過ぎ、大学院の後期に復学しました。
研究はどんな職業にも繋がると考えていたので、研究ではPDCAをひたすら回して取り組んでいました。
就職活動時:大手企業に魅力を感じず、バイオスタートアップ企業に入社
就活では、大手企業の商品開発などで、90できているものを100にするような仕事にあまり魅力を感じなかったので、もっともっとベンチャー気質の会社にいきたいなと思っていました。
卒業間近だったのですが、現職のSpiberという会社に12月に出会って、会社説明会を受け、修論の発表の次の日に面接があって、そのまま内定をいただく形で就活を終えました。
Spiberの理念にとても共感できて、もうここしかないなと実感し、面接を受けました。私が探していた本質的な幸せというところで、Spiberは人類の持続的なウェルビーイングに貢献すると謳っています。ビジョンドリブンな会社で、ソリューションとして人工のタンパク質素材を扱っていて、それが私の専門分野でもあったので、かなりマッチしていると思い、4月からジョインすることになりました。
現在の仕事内容:Spiberで研究者としてサステナブルな社会の実現を目指す
簡単に、会社のことも説明させていただければと思います。Spiberは慶應大発ベンチャーで、山形県鶴岡市にあって、創業から実は15年経っているのですが、4月には社員数が300人を超える規模となっています。
鶴岡市は、2001年に慶応大学の先端生命科学研究所を誘致し、田園風景の中にサイエンスパークとしてベンチャー企業や研究機関が集っています。仙台の10分の1ぐらいの都市にもかかわらず、7つのスタートアップが生まれています。
周りは田舎で、田んぼに囲まれているのですが、スタートアップが集まっているサイエンスパークがあり、その一角にSpiberがあります。
「Spiber」は、まあ文字通り「Spider」と「Fiber」を掛け合わせた言葉で、昔は蜘蛛を全世界から集め、ゲノム解析と物性試験を行うことをやっていました。
現在は蜘蛛の糸にヒントを得て、独自の人工タンパク質素材である「ブリュード・プロテイン(Brewed Protein)」を開発・販売しています。ブリュード・プロテインは微生物発酵、遺伝子組み換え、たんぱく質の設計などバイオテクノロジーを融合して作り出しています。色々な応用例があるのですが、分子のデザインをして、粉末として溶媒に溶かして、色んな物性の材料を作っています。
繊維、樹脂、フィルム、ゲルへの加工のほか、複合材料への展開も可能ですが、衣料品向けで実用化が進んでいて、GoldwinさんやTHE NORTH FACEさんと連携してダウンジャケットなどを既に発売しています。
2023年の秋冬では、量産体制も整えて、3000着ぐらいの販売規模を予定しているので、東京などの複数店舗で販売されるような形となり、着々と規模を拡大しています。
ブリュード・プロテインの何がすごいかというと、2つあって、カシミヤと同等レベルの素材にも関わらず、環境負荷が少ないということが1つ目になります。
もう1つは、生分解性というところで、タンパク質をベースとしているので、石油由来製品によるマイクロプラスチックの海洋流出による環境課題解決への貢献も期待されます。
Spiderでは、循環型の廃棄物ゼロ社会の実現を目指し、衣料や農業の廃棄物を、微生物発酵で新たなタンパク質を生産する際の原料に転換する「バイオスフィア・サーキュレーション(生物圏循環)」システムの研究開発を進めていて、職場で僕の隣にいる人が実験台で研究しているところで、今まさに進んでいます。
ブリュード・プロテインは軽くて丈夫なため、車のパーツに使われていたりもします。
また、資生堂からマスカラが出たり、様々な製品に起用されています。
説明させていただいている通り、分野はすごい横断的なのですが、分子デザインから製品にするところまで自社で完結しているということが一番の強みで、分野は横断的に研究開発のサイクルがどんどん加速しているということで、本当に色々な人と携わることができて面白さを感じています。研究機質の人からインターナショナルな人もいて面白いなと思っています。 スライドはラボの写真で、液体培養をしている機械になります。
僕はパイロットスケールで培養を行っています。
Spiberはどんどん規模を拡大していて、タイでも数100トンのスケールでできていて、更に規模の大きいアメリカとも連携していて、というようなフェーズになっています。
もう一つ会社の特徴として、自分の給与を自分で決めるという、ユニークな取り組みがあります。
ウェルビーイングを謳っている会社なので、自分のウェルビーイングと、会社自体の持続可能性を、社員一人一人が考えて、家庭の状況だったり、自分の評価、仕事への考え方を、みんなが考えて公開して、みんなの給料もみんなが見れるシステムになっています。このやり方については、色んな議論と意見があって、本当に面白いなと思っています。
僕はSpiberにジョインして、1年しか経っていないのですが、インタラクティブに動きまくるということと、「Taiwa-cafe」というものに取り組んできました。
まずインタラクティブに動き回るということで、1on1を重ねました。代表や副代表を含め、20人ぐらいと話していて、SlackでDMを飛ばせば、みんな会ってくれるので、スタートアップ、小さな会社としてはいいなと思っていて、世界中から集まっている社員とコミュニケーションを取れて、すごくいい経験になっているなと感じています。
もう一つが「Taiwa-cafe」ということで、写真にあるように、話をする場を作っているのですが、いま10回ほど主催として開催していて、実際に取締役の方にも参加いただいたりして、色々な話をしています。
話す内容としては、哲学チックなところもあるのですが、ウェルビーイングとは何かとか、給与制度とか、表現したいこと、夢などを語れる場にしています。目的としては、その人らしく生きるということを目指していて、職場の心理的安全性はすごく大事だと感じているので、それによって生まれる、その人の強み、弱みを知って、それを楽しむ場づくりというのを試みてやっています。
今はまだまだ少ないですが、社員の7,8%の方に参加いただいていて、アーリーアダプターと言われるのが14%ぐらいだと思うので、すぐに達成したいなと思い、社内でもかなり活発に動いています。
会社がビジョンとして掲げるウェルビーイングに貢献するために「Taiwa-cafe」をやっています。
会社に入ってみて、僕は「幸せ」や「ウェルビーイング」に関心が高い方なのですが、ビジョンドリブンの中でも、人によってすごく差があるなと感じていて、タンパク質だけに興味がある人もいるので、一言で言い表せないぐらい面白い会社だなと思っています。
あとは、メンタルでもフィジカルでも、自分のケアをすることは健康の面で、本当に大事だな感じていて、日々の仕事への取り組み方が、一年後、三年、四年後に影響してくるなと思ったので、少しずつ計算して日々の業務に取り組んでいます。
インタラクションとしては、微生物のプロが集まるような会社なので、研究チックなところから味噌を作ってみたり、全社の15%ぐらいは海外の社員なので、ド田舎に外国籍の方がいるのが結構面白くて、一緒にお花見をしたり、居酒屋に行ったりみたいなことをしています。
今後貢献していきたいこと:フロンティアな存在であり続けたい!
最後に展望になりますが、Spiberには本当に色んな人がいて、素敵なビジョンのもと、専門の分野だけに留まらず、生き方や考え方の点で常に何かフロンティアであり続けたい、リーディングカンパニーであり続けたいと考えています。
今やっていることが何に繋がるのかはわからないですが、今だけに集中したら、今後に絶対につながると思っているので、「Connecting the dots」ということで、とりあえず今のことを頑張りたいなと思っています。
正直、何年会社にいるかは自分でもわからないのですが、サーキュラーエコノミー的なことにも関心が高く、海外の視点で学びたいなと思っていて、Spiberに入らなかったら、オランダにいた可能性もあったのではないかと自分で思っていることもあるので、2年以内には海外に行きたいなとも考えています。ご清聴ありがとうございました。
ご興味がある方は、Spiber株式会社の採用サイトをご覧下さい!
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