【短編】いい気分!【今日は何の日 : 0711 セブンイレブンの日】


「遅いよお兄ちゃん! 溶けるかと思ったじゃん!!」
「大丈夫だ、いくら暑くても、人間は溶けない」 

 今日は、仕事終わりに妹とセブンイレブンで待ち合わせる。
 理由は至ってシンプルだ。

『今日は何の日』が『セブンイレブンの日』だからだ。

 先日ボーナスが出たので、『セブンイレブンの日』にちなんで、妹に『セブンで10000円まで好きなもの買ってやる』と言ったら大喜びだった。
 妹は、俺がセブンに着く前に、もう既に何を買うかを調べていたようだ。

「お兄ちゃん、制限時間とかあるの? どうせなら動画とか撮る? ユーチューバー的な?」

 何だか、予想以上にノリノリだった。

「一応、お酒とか私が食べたり飲んだりできないものは買わない縛りで行こうと思うんだけど」
「好きにしていいぞ。思う存分買うといいさ」
「はぁーい!!」

 俺の言葉を聞いて、元気いっぱいに店内に駆け出していく妹の背中を見送りながら、俺は俺で、家の不足品をいくつか買うために店内を物色するのだった。

「うわぁー……なんか予想以上に色々買えるんですけどぉー!!」

 店員さんも顔見知りなのと、この時間丁度俺達しか客がいなかったので、妹は大はしゃぎだが、特に注意することもしない。
 とにかく、『セブンイレブンの日』を、セブンイレブンで心行くまで買い物をしてもらおう。

「お兄ちゃん! 決まった! これで多分9976円!!」

 カゴにして、7つ。
 かなり色々詰め込んだものだ。
 安いものだと駄菓子から、高いものだと携帯の充電器なども入っている。
 こうして見ると、10000円って、かなり色々な物がコンビニでは買えるんだな……。
 と、自分でいいだしておいて、なんだが、思わず感心してしまう。

「……えーと10890円です」

 そして、申し訳なさそうに響く店員さんの声。

「でしょうね」
「なに? どゆこと!?」

 妹が携帯片手に必死に計算していたが、大方の予想通り、やっぱり計算ミスをしていた妹だった。

「約束は10000円までだから、890円分は返してきて下さい」
「えぇっ!? いいじゃん、890円くらい!!」
「ダメです」
「うぐぅ……」

 俺の言葉に、がっくりと肩を落としながら、しぶしぶ三つの商品を棚に返しに行く妹なのだった。

「いやぁ……セブンイレブンを満喫したよ! ありがとう、お兄ちゃん!」
「それは良かったな」

 思い付きでいいだした『セブンイレブンで10000円使ってみた』は、妹のお陰で、楽しい規格になったようだった。

 一応動画を撮影していたのだが、ブレブレの上、色々問題映像が多かったので、ネットの海に後悔するには至らず、パソコンの肥やしになるのであった。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?