【人生を彩る——TM34ができるまで——】(3)
離岸流にさらわれた経験はあるだろうか。
いつの間にか沖に流されていて、岸が遠くに見える恐怖。
今、正にそんな心境だ。
意図せずTM34という岸がかなり遠くに見える。
『TM34』は、親友と2人ではじめた。
そのTM34の片割れから、「今回のオールインワンジェルの開発経緯や流れを記すべき」と助言され、この『TM34ができるまで』を書き始めた。
後日談だが、彼からすれば商品が生まれたときからで良かったらしい。
変なところで真面目な性格が仇となり、「はじまりは?」「きっかけは?」と遡りすぎてしまい、現在遠い沖にいる訳だ。
ここまで来たら岸まで書き続けるしかない。
お暇なときにお付き合いいただければ幸せです。
さて、コロナ禍で自分に何ができるのかともがき、自分探しをしていたときの話。
驚いたことがたくさんある。
それは自分自身を知ることに繋がった。
「金儲けしようとしてて気持ち悪い」
そう言われたときも驚いた。
何をしようとして、こう言われてしまったのか、その内容は口外せずにいくが、自分にはまったくその気がなかった。しかし、ひとりふたりではなく何人にもそう言われたのだ。
苦境をどうにかみんなで楽しく乗り切るための行動だと自分では思っていた。
だが、気持ち悪いと感じる人がいる。
驚いた。
驚いたし、悲しかったし、悔しかったし、勉強になった。
毎日飯を食べるためにはじめた役者という仕事が、「金のためじゃない!」と憤る自分いた。
矛盾なんだけど、本音だ。
「役者なのにダサい」とも言われた。
それについては同意する。
役者をはじめた20年前は、もっとはっきり、くっきり線引きされていた。
舞台役者は舞台だけ、映画俳優は映画だけ、テレビはテレビ、雑誌はモデル、声は声優、アイドルはアイドル。
自分も「役者は役者だけで生きるべきだ!」と息巻いて活動してきた。
媚びないぞと。
誕生日イベントなんて役者がするもんじゃない!ダサい!という時代だった。
今じゃ当たり前になっているけれど、自分も悩み続けて、37歳ではじめて開催した。心の中で少しだけダサいと思いながらの開催だった。今は違う。時代も人も変化する。
まぁ、誰かから見れば、マインクラフトのゲーム実況をするおじさんはダサいであろうと思う。
コロナ禍にならなければやらなかったと自分でも思う。
家から一歩も出れないとき。
芝居じゃなくてもいい。
何か届けられないか?
表現をする方法が今の時代にはたくさんある。
当然、それで金儲けできたら素晴らしいかもしれない。役者が役者以外をするなんてダサいと言われるかもしれない。
けどそんなことより、何もできない自分が嫌だった。何でもいいから創りたかった。届けたかった。ただただ仕事が奪われて、何もすることができず、味わいたくもない無力を感じる日々を終わらせたかった。
これも、本音だった。
(4)につづく。
いつもサポートありがとうございます。余す所なく血肉に変えて、彩りを返せるよう精進します。心より深謝。