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【人生を彩る——TM34ができるまで——】(1)
無力感。
それが始まりだった。
カメラロールを遡ってみると、はじめの一歩は2020年4月7日。
YouTubeでのゲーム実況ためにサムネイルを作っていた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/112720301/picture_pc_1365ce37af608b5fa73975e41129babe.png?width=800)
今から24年前——1999年。
当時21歳。
『救急戦隊ゴーゴーファイブ』で、役者としての人生がはじまった。
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当時は夢も現実も何も見えていなかった。
考えたことすらなかった。
ただ、「誰かと違うことがしたい!」という気持ちだけは、人一倍強かったように思う。
いま考えてみれば、その性格が導いてくれた場所が、「役者」という職業だったのかもしれない。
とはいえ、演技未経験で役者の知識も無く、なんの取り柄も特技ない男が、オーディションを受けてスーパー戦隊に合格するなんて奇跡でしかない。
巨大な運と何かの巡り合わせが生んだ大奇跡だ。
合格の理由が長身であれば両親に、長髪であれば散髪代がなかった自分に——いや、理由はどうであれ、出演できたことに、いまでも心から感謝している。
しかし奇跡も束の間、番組が終わってからの生活は困難の連続だった。
ただただテレビに映れて喜び、変身して喜び、「誰かと違うこと」ができたつもりで喜んでいた男は、当然の報いを受けた。
仕事がない。
現在45歳。今でこそ有難いことに様々な作品と役に携われたことに幸せを感じている。ゴーゴーファイブの流れで言えば三大特撮制覇という光栄なこともあり、役者としての人生に、自信や誇りみたいなものが少しはある。
が、役者をはじめてから最初の10年ぐらいは、演技云々よりも、その日のご飯を食べることに必死だった。
食っていけなかった。
当たり前だ。
何も出来なかったのだから。
誰の所為でもない。
ただの実力不足。
仕事が欲しいから演技が上手くなりたい。
「演技が上手くなりたい」は「毎日ちゃんとご飯が食べたい」だった。
奇跡からはじまった役者人生は「下積み」と呼ばれる日々に突入した。
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高校を卒業して何も考えずに就職をした。
なんとなくの勢いで仕事を辞めて、バイトをしながらなんとなく楽しく生きていた。
そして22歳でようやくまともに自分の人生を考えた。
苦労自慢でも武勇伝でもない。
すべての人間が日々当たり前にする努力をした。
毎日ご飯を食べるために努力をした。
選んだ仕事・役者(演技)のことを勉強する努力をした。
クズな生活もした。
失敗も沢山した。
だけど努力は必死にした。
そして少しづつではあるが積み重ねた。
いつのまにかご飯のためだけではなく、創り出したいものもが自分の中に生まれた。届けたいものが生まれた。表現したいものが生まれた。どんなことよりも演技や作品を考えることに無我夢中になった。
あっという間に20年以上の人生を使っていた。
それほどまでにのめり込める「役者」という職業に巡り合い、続けられていることに感謝しながら、もがき続ける人生だった。
しかしその人生は、未知のウイルスの前では、ある意味無力だと感じた。
誤解はしないでほしい。
エンターテイメントが無力だという訳ではない。
自分が出演した作品、演じた役が無力だという訳ではない。
作品や役を観てくれた皆様に何も届けられていないという訳でも、役者は無力だという訳ではない。
自分自身が人間としてあまりにも社会に対して無知で、何とも繋がれていなかったと悟った。
そして、自分自身がとてつもなく無力だと感じた。
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無力感。
それが始まりだった。
そして、『TM34』が生まれた。
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(2)へつづく
谷口賢志
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