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Q.あのマネキンが着ている服の意図を答えよ。

街を歩いていると、ふとポッカリ空いた空き地を目にして「あれ?此処この前まで何があったんだっけ?」と思うことはありませんか?

余程思い入れがない限り、毎日歩いている道でも昨日まで何があったか思い出せない、なんてことよくある話だと思います。

私もあまり物覚えがいい方ではないのでそんなことしょっちゅうあるわけなのですが、一応これでも6年ほどアパレル業界にいたので(学生時代を含めると約10年!)道ゆく人の服装や、お店のディスプレイなどは自然と目で追ってしまいます。


今日はそんな私がこの1年翻弄され続けた、あるお店の策略(なのかどうかすら不明)と、そこから感じたある視点についてお話をしたいと思います。


・・・



フリーランスで仕事を請け負っている私は、一週間のうち3社のクライアント企業を行き来しています。

3社は基本出社ベースなのでそれぞれの会社に週に1日以上は顔を出すわけですが、そのうちの1社に通う際、あるショッピングモールを通り抜けて会社に向かいます。


先にも書きましたが、私は歩いているときなるべくその土地で出会う人や、通りすがりの人、街中のショーウィンドウなどには目を配るようにしています。
これはアパレル時代の名残もありますが、同じブランドでも土地によって売れるものは様々で、お店の店頭や歩いている人のファッションを見ると大体その土地柄や住んでいる人の傾向なんかが見えてくるのです。

大体いつも開店している時間に通るので、私は顔を左右に振りながら、「あぁ、今年はアースカラーが流行ってるのかな」「パイピングのアウターは若年層のモールではよく見るけど此処ではあまり見ないな」なんて自分流に売り場を考察しながら通り抜けることが楽しみであり毎週の日課となっていました。




さて、時は戻り2020年3月。
私は黒の細いサスペンダー付きのタイトスカートを購入しました。
全然違うところで買ったものでしたが、いつも通るこのモールの中にあるお店にも、よく似たデザインのスカートが可愛くコーディネートされていました。(しかも一番よく目に付く所のマネキンが着ていた!)

その時は、「コーディネートの参考にしよう」と思い、くすんだブルーのニットと合わせたマネキンを横目にクライアント先に向かいました。


そして4月。
急速に拡大するコロナウイルスの感染拡大に歯止めをかけるため、政府が緊急事態宣言を発令。
大阪の街から人が消え、街はガランと異常な静けさに包まれていました。

もちろんこのモールも全ての店が休業。
客も店員も誰もいない、異様なモール内を通って私はクライアント先に向かうことになったのです。
テナントによってはホコリがかぶらないように商品を全て売り場から引いたり、上から布を被せたりしていました。


ふと、私と同じスカートを着たあのマネキンが気になりお店に目をやると、1ヶ月前と同じコーディネートで、同じ場所にポツンと立っていました。


この時私は、「コロナ禍とは言え1ヶ月も同じコーディネートを着せているなんて、余程このスカートはトレンドなのかしら」と少し驚いたものの、へぇ、と思った程度で通り過ぎました。

なぜ私が少し驚いたのかを補足しますと、私がアパレルで働いていた頃恐ろしい私の上司……もとい、尊敬する上司に、一週間以上マネキンのコーディネートを変えなかったらドチャクソに怒られた経験があるからです。
逆にめちゃくちゃに流行っている商品だけは一週間以上着せ続けることが許されていました。

その感覚が残っていた私は、そんなに流行りきっているものを買ってしまった後悔を少し感じながら、モールを後にしました。(※流行りすぎると翌年着にくくなるのでトレンドすぎるものは避けたい派なのです。。)


さて、春物をろくに買わないまま気づいたら夏物のバーゲン、と行った6月に、ようやく街に人が戻ってくるようになりました。
自粛明けのショップは春物から夏物へと入れ替えに大忙しです。


慌しくもこの異常な季節の進み方と、毎年人為的に作られるトレンドが全く通用しないこの非常事態に少しだけドキドキしながら、私は自粛前と変わらずクライアント先に向かっていました。


「・・・ん?」


思わず声が出たかもしれません。
私が見たあのお店では、変わらず同じマネキンが同じコーディネートを纏っていたのです。

違ったのは、合わせたトップスがニットからTシャツに代わっていただけ。
スカートは色すらも3ヶ月前と全く同じ。
え、なんで?素直にそう思いました。


とはいえ秋冬の人気商品が素材を少し変えて春夏品番で新作として登場することは決して珍しくないので、そういうことなのだろうか。
それか、異常にあのスカートがあのお店では売れるかな?
それともただ何も考えないままあのスカートを着せ続けているのか……。

あんな一番客の目を引く位置のマネキンが?まさか!!


いくら緊急事態宣言で例年と流れが違うとはいえ、明らかに3、4ヶ月もずっと同じコーディネートなんておかしい。
なぜ?意図は?どういう効果があるんだろう?


・・・


察しのいい人はお気づきかもしれませんが、このお店のマネキンはなんとまだ同じコーディネートを着続けています。
(途中黒のスカートがカーキに変わったりはしていましたが)


完全に私はこの約1年間、自分の好きなどのお店よりこのお店を気にして見てしまいました。

どんな客層で、店頭に出している商品は何で、どんなブランドで、、、
気づけば名も知らないお店から、今一番(ある意味)気になるお店に変わってしまったのです。


さて、冒頭でお話しした「気づいたら何かがなくなっている」という話ですが、この話から学べることは2つあると思います。

①普段の生活のなかで、アンテナを張って生活すること。

②前と後の「なぜ」を考えること。


1つ目のアンテナを張るという事ですが、世界は思っている以上に目まぐるしいスピードで流れて行ってしまっています。少し前に鬼滅鬼滅で溢れていたのに鬼滅の次はと呪術廻戦に変わり、今はにわかにモルカーが影を潜めています。

全ての事柄を拾っていくことは難しいですが、それでもアンテナを張って情報を自分からキャッチしにいくのと行かないのでは雲泥の差です。
情報があふれる今だからこそ、待ちの姿勢では「此処に何があったか思い出せない」そんな状態になってしまいます。


2つ目はの前後の「なぜ」は、「なぜこの場所にこの建物があったのか」と、「なぜ次にこの建物が立つのか」ということです。

物事にはほとんどのことに何かしらの理由があります。(全てとはあえて言いません。本当に意味のないこともあるので)
私はこの理由を考え、思考を巡らせることこそに価値があると思っています。ぶっちゃけ何が立っていたのか覚えていなかったら調べたらいいだけです。でも、その理由を考えるか考えないかは意識しないとできないことです。



このスカートのように「私には信じられない」ことでも、

もしかしたら、めちゃくちゃ売れる商品なのかもしれない。

もしかしたら、人手不足でマネキンを変えられないのかもしれない。

もしかしたら、在庫がめちゃくちゃ余っていて仕方なくなのかもしれない。

もしかしたら、もしかしたら、、


と、違う視点で物事を考えてみるといろんな可能性が出てきます。
小さな日常の些細な出来事でも視点や価値観を広げる機会は無限にあるのです。


こういうチャンスに気づけたら、きっと少しだけ面白い人生になるかもしれません。



1月24日
アサイハルカ

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