20年前のナンバリングされた「ほぼ日ブックス」
通し番号のついた「ほぼ日ブックス」
「ユニクロ」(杉本貴司)を読み終わって、巻末の参考文献を眺めていたら「個人的なユニクロ主義」(柳井正×糸井重里)が挙げられていました。
「柳井正にもちゃんと話を聞いてあるのだから、糸井重里はやっぱり抜かりないな」「最初は遠し番号があったのか」などと思いながら、検索すると「石川くん」の装丁に見覚えがありました。
10冊のラインナップを見て「個人的なユニクロ主義」と「経済はミステリー」、「ダーリンコラム」もAmazonのマーケットプレイスで安かったので注文しました。
「個人的なユニクロ主義」は951円(711円+送料240円)、「経済はミステリー」は351円(1円+送料350円)、「ダーリンコラム」は586円(246円+送料240円)でした。3冊で1,888円(一冊当たり約630円)。
20年前にはじまった「ほぼ日ブックス」
2001年11月1日に「ほぼ日ブックス第1弾」として創刊された10冊は、カバーのないペーパーバックで、ラベルシールが貼られたデザイン(ラベルシールは印刷されている)で統一されていました。
「ほぼ日刊イトイ新聞」は1998年6月6日にスタートしました。
3年が過ぎてコンテンツがたまり、朝日出版社が単行本化を持ち掛け、「ほぼ日ブランド」をさらに広めたいほぼ日側(当時のアクセス数は1日あたり40万/2016年時点では150万PV)の思惑と一致し、出版することになったのでは、と推測します。
「創刊にあたって」という文章には、「出版とか本とかの文脈だけでものを考えないで、
新しいクリエイティブの場をつくりたい」、「ソフトを作る人を大事にしたい」、「知恵や方法を直接わたそうとするのではなく、読んだ人が、その人の発想を理解して、あとは勝手に魚を釣りにいけるような「釣り針のような本」でありたい」といった想いがつづられていますが、経済活動である以上は「ほぼ日ブランドを広める」が第一義でしょう。
余談ですが、「創刊にあたって」の見出しの1つに「本は、「ご立派の世界」から逃げ出したい」とあります。
「本の敷居を低くしたい」という発想がペーパーバックという装丁につながったのだとすれば、「ウェブメディアが出版に参画するときはペーパーバック装丁にする」は「スマート新書」や、U-NEXTが2023年4月にスタートさせた小説レーベル「100 min. NOVELLA」でも繰り返された「あるある」になりつつあります。
ナンバリングつきの「ほぼ日ブックス」が続かなかった理由
書店の棚になじまなかったから、と推測します。
書店は、雑誌、単行本、新書、文庫、マンガ、参考書、、、と棚がわけられています。
「ほぼ日ブックス」は単行本の棚に並べられますが、ナンバリングつきの「ほぼ日ブックス」は通常の単行本より薄い(「ダーリンコラム」は約200ページで通常の単行本程度にありますが、軽くなることを目指したのでしょう)ので、棚に並べられると他の本の中に埋もれてしまいます(なのでU-NEXT「100 min. NOVELLA」も続かないんじゃないかと危惧しています)。
「ほぼ日ブックス」が最初に10冊刊行したあとに続刊の発行をいつにしていたのかは不明ですが、11月から翌年の7月までの8ヶ月で、通常の単行本として刊行していこうというシフトチェンジが行われたのでしょう。
シフトチェンジが行われた結果、ほぼ日の連載をまとめただけの企画は通らなくなり、予告された「松本人志まじ頭」(松本人志×糸井重里)も予告のまま今にいたっているのでしょう。
「第2弾」として、2002年7月に刊行された「海馬」(池谷裕二×糸井重里)と「調理場という戦場」(斉須政雄)は、「ほぼ日ブックス」と銘打たれているものの、第1弾から継続するナンバリングはなく、カバーが付きにリニューアルされています。
仮に「海馬」がナンバリングつきの「ほぼ日ブックス」の11冊目として刊行されていたとしたらベストセラー(最終的には新潮文庫「夏の100冊」入り)になっていたのでしょうか?
ウェブコンテンツの書籍化は難しい
たとえばブロガー「かんそう」氏がはてなブログでエントリを連発しても、書籍化の打診は「ブログの傑作選」ではなく「文章術」のでした。
いくらページビューを稼いだとしても、ウェブメディアのコンテンツがそのまま書籍になるわけではなさそうです。
簡単じゃねぇんだぞ、と。
ナンバリングつきの「ほぼ日ブックス」リスト
01 「個人的なユニクロ主義」(柳井正×糸井重里)
02 「胸から伝わるっ」(野口美佳×佐藤知代)
03 「ポンペイに学べ」(青柳正規×糸井重里)
04 「経済はミステリー」(末永徹×しりあがり寿)
05 「金魚人」(すそあきこ×みやはらたかお)
06 「石川くん』(枡野浩一×朝倉世界一)
※ 2007年4月に集英社文庫
07 「遥か彼方で働くひとよ』(本田美和子)
08 「あはれといふこと』(小林秀雄)
※「考えるヒント」などで著名な昭和の評論家ではなく、同姓同名のコピーライターの著作。ほぼ日草創期からコラムを連載していた。
09 「カナ式ラテン生活」(湯川カナ)
10 「ダーリンコラム」(糸井重里)
刊行が予告された「ほぼ日ブックス」
「松本人志まじ頭」(松本人志×糸井重里)
「清水ミチコの試供品無料進呈」(清水ミチコ)
「いまよみがえる 論語」(高橋源一郎)
※ 2019年に「一億三千万人のための『論語』教室」が河出新書として刊行された。
「怪傑テレコマン!」(永田ソフト)
「コート・ドール 十皿の料理」(斉須政雄)
※ 1992年に同名の著作が朝日出版社から刊行されている。
※ ほぼ日ブックス第2弾として「調理場という戦場」が刊行されている。
「おいら」(天海祐希)
「社会の夢読み」(大沢真幸)
※「社会の夢読み」をもとにした講演録「社会は絶えず夢を見ている」(2011年、朝日出版社)が出版されている。
「羽生 21世紀の将棋」(保坂和志)
※ 1997年に同名の著作が朝日出版社から刊行されている。
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