「もう明日が待っている」鈴木おさむ
帯には以下のように書かれている。
(1)本書の概要
SMAPのブレーンとして「SMAP×SMAP」だけでなくラジオ、コンサートにも関わっていた鈴木おさむが書いているのだから、帯には「小説SMAP」とあるけれど、限りなくノンフィクションに近い。
関わりが深いことは知っていたけれど、メンバーが記者会見で話した内容も、メンバー自身が話したことをもとに鈴木氏がをまとめていたとあり、私の見積もりより深く関わっていた。
本書では、そんな著者がSMAP全体の動きの中で特に印象深かったであろう、モリクンの脱退、タクヤの結婚、5人旅、東日本大震災、2016年1月18日といった出来事が小説化されている。
40代の自分にとって、SMAPはまだ生々しい過去としてあるけれど、解散から7年経ってリアルタイムではない世代が増えてきているのも事実。
ジャニーズ事務所の解体と著者本人の放送作家引退が重なり、最後の仕事の一つとして書かれたのだろう。
(2)「小説SMAP」
帯には「小説SMAP」とあるが、作中に「SMAP」という単語は1度も出てこないし、章タイトルに曲の一節が置かれているが、曲のタイトルは明記されません(JASRAC対策かとも思いましたが、巻末にはJASRACコードが記載されています)。
登場人物も「タクヤ」「リーダー」という呼称であり、スタッフも「イイジマサン」、「荒木(≒荒井昭博)」「黒林(≒黒木彰一)」と調べればすぐに分かる範囲で変えている。
限りなくノンフィクションに近く、限りなく「正史」に近いのが本書「もう明日が待っている」だろう。
(3)本書の文体
内容とは関係ないが、本書の文体に馴染むのに苦労した。内容の面白さに突き動かされて1日で読了したが、文体には最後まで疑問符が伴った。
たとえば。
私が書くならこのようにする。
1行書いて、何行か空けて、1行書いて、何行か空けて、というのは芸能人のブログやネットのライターがよくやるスタイルで私は全然好きじゃないからなじめないのかもしれない。ポエムかよ、と思ってしまうが、この「クサさ」は、熱量が生み出した文体なのだろう。
(4)印象に残る3名
著者のSMAPとの関わりは、タクヤのラジオ番組からで、結婚会見にも関わるからタクヤの発言や振る舞いが分量多く出てくるけれど、私がテレビで見たまんまの木村拓哉で、木村拓哉は裏表なく、どこまでも木村拓哉なんだと言うことがわかり、今までの像を超えてくることはなかった。
私が勝手に作り上げた像を超えてきたのは、イイジマサン、リーダー、ツヨシの3名。
① イイジマサン
本書の肝となる第8章以外で、終始印象に残るのはマネージャーであるイイジマサン。
イイジマサンの思想が伝わるところを引用したい。
第8章ではイイジマサンの「不在」が全編を覆う。
② リーダー
多くの番組が松本人志の不在を埋めることができないなか、唯一番組をパワーダウンさせなかったのは「まつもtoなかい」のみ。
「だれかtoなかい」と番組名を変え、タッグパートナーとして後輩、二宮和也を召還する。
中居正広はずっとピンチをチャンスに変えてきた人で、唯一変えれなかったのが2016年1月18日から始まる解散への流れだったのだろう。
グループをファンの期待するように終えられなかったことの後悔が、今も消化できないまま中居正広のなかにあるのだろう。だから、トニセンに靴を贈ったり、鈴木おさむに家族3人分のご飯茶碗を贈り電話をかけるように、節目を迎える人に餞を贈っているのだろう。義理堅いと言えばそうだろうけど、それだけではない気がする。区切りがつけられていないのかも知れない。一度限りの再結成がない、と言えるのだろうか。
モリクンの脱退会見に同席したり、結婚会見前のタクヤと二人きりで何かを話したり、と全編を通して中居正広が表に出してこなかった凄さが見えた。
③ ツヨシ
ツヨシが印象的な動きをするのは、2ヶ所。
その中でも自発的でポジティブな場面を引用する(もう一つは受動的でネガティブな場面)。
(5)読んで感じたこと
① 装画
表紙の装画は5つの風船が束になっているが、裏表紙では、3つ、赤、青とわかれている。
表紙が当時の5人で、裏表紙が現在の5人。
とはいえ、「まつもtoなかい」の初回ゲストは香取慎吾(2023年4月30日OA)で、2022年12月24日に草彅剛が木村拓哉の楽屋を訪ねた(文春オンライン、2023年7月12日付)ので、実際の関係は、もう少し親密なのだろうと思わせる。
② 解散から7年
2016年12月31日の解散から7年。
その後のメンバーの動きが第9章で触れられています。
そして、2024年2月15日に「SMAP×SMAP」のプロデューサーである黒木彰一さんが2月13日に54歳で死去されたことが報じられました。
(通夜には草彅剛、稲垣吾郎が参列し、中居正広、木村拓哉はそれぞれ個人名で供花を寄せたという)
③ 著者印税
「スマスマ」では最終回まで番組の最後には東日本大震災への義援金が呼びかけられていた。
それを継ぐかのような一文。
鈴木おさむはお金のためではなく、ただただ書き残しておきたくて本書を書いたのだろう。
(6)終わりに
「もう明日が待っている」。
過去を振り返るのではなく、未来を向いた一冊。
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