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目の前に垂れる糸は、蜘蛛の糸か、無二の縁か。


「今回はご縁がなかったということで…」


ここから先の言葉は聞こえてこなかった。
何かを言っていたのかもしれないが、耳に入らない。

不採用。

最終面接まで進み、あと一歩のところであったが、その一歩が届かなかった。
「…をお祈りしています。」という、いかにも形式的な、自分が採用担当者であることを改めて誇示するような言葉で電話が切られ、その瞬間、僕と会社が繋がっていた縁もプッツンと切られてしまった。
しばらく呆然と立ちすくみ、考えることを放棄したくなったが、そんなときに限って思考が働く。明日の会社説明会。行くか、サボるか。
今後の就活のスケジュール。やめるか、続けるか、違う道を探すか。
今日の面接。何がいけなかったのか、どこを変えるべきなのか。
二択が三択に、そして疑問詞となり、頭の中を駆け巡る。自分の中でひとつひとつ整理しようとするが、まるで片付かない。出しっぱなしの疑問が山積みとなり、結局考えることを止め、溜息が出る。

「縁って何なのだろう。」

再び疑問が浮かび上がっていることに、僕は気付いていない。

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