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たのしい地方創生

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地域活性化の業界で働く筆者の、日常のささい気づきを、まじめ風味でお届け。
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2022年11月の記事一覧

#10 『わらび餅』のチャネル的変化

2022年11月某日 軽自動車でロードサイドを走っているとパチンコ屋の駐車場に人だかりを発見。出玉の換金の行列かと一瞬目を疑ったが違った。行列の先には「わらび餅」の看板があり、老若男女多くの来店者が。これはと思い、行列に並んでみることにした。 しげしげとメニュー表を眺めていると、どうやらただのわらび餅ではない。「チョコレート」「ストロベリー」といったフレーバーのラインナップに加え、「わらび餅ドリンク」として、ほうじ茶や抹茶のドリンクも提供している。嗚呼、これはタピオカ的な

#9 『アントレプレナー』と『虎』

2022年11月某日 ふと、地方ビジネス界隈でのロールモデル像の変化を感じた。筆者が就職活動に精を出していた頃(リーマンショック前)は、「IT、六本木ヒルズ」などのキーワードが憧れの象徴かのごとく存在していたように思う。その後、リーマンショックを経て、2010年頃からは「newspicks」などのメディアの台頭もあり、「社会課題の解決」みたいなキーワードを耳にする機会が増えた。 その過程での地方ビジネスの様子はというと、正直、2010年代半ばくらいまでは、都市的なビジネス

#8 『学ぶ知識』『教える知識』の価値の不等価

2022年11月某日 とあるまちづくりの会合に参加した。人口減少に歯止めをかけるために、エリアが一体となり、どんな戦略をたてたらよいか、知恵を出し合おうという趣旨のものである。参加者の年齢は様々であった。事務方の対応からすると、暗黙的なヒエラルキー構造があるようにも感じた。 意見交換野中で、とある『有識者』が突然、『SWOT分析』だの、『5フォース分析』だの、マーケティングフレームワークについて解説を始めた。私を含めた他の参加者はポカンとしてしまい、少々気まずい時間と空間

#7 尖りと無能力の違い

2022年11月某日:まとめることの良し悪し パワポと向き合う一日。とある会議の結果をまとめ、方向性を整理する作業だ。整理のフレームをこしらえ、情報をカチカチまとめていくのは心地が良い。しかし、パワポは、枠に合わせて情報を整理しようとしすぎる手前、安易な情報の捨象が生まれやすい。そもそも、『端的に』『シンプルに』伝えるためのツールだから、しょうがないのだけれど。 膝を突き合わせた議論を何時間もしていると、一つのテーマについて、様々な角度から言語化を試み、解像度が増していく

#6 路上観察について

2022年11月某日 赤瀬川原平の『路上観察学入門』に目を通した。超芸術トマソンが世に知られるきっかけとなった一冊だ。本書では、生活動線上にある路上を毎日観察する事で、その変化を感じ取ることができ、面白いことを説いている。なんとなく理解して、なんとなく疑問が湧いた。一体なぜ、変化を感じることが面白いのか。 知覚できる変化への直面とは、希少な体験なのだと思う。『知覚できる』というのがポイントだ。なぜなら、家の前の道路は日々摩耗しているはずだし、近所のお婆さんの背骨は日々曲が

#5 固まった塊

2022年11月某日:『固まった塊』 中会議室での会議にて。ロの字で囲った机の前で、固まっているように見える男性が見える。寝ている訳ではなさそうで、よく見れば手元の赤のフリクションが動いている。配布された次第に何やらメモをしているようだ。議論のペースからして、記録する情報は限られているから、きっと自分のアイデアを文字でアウトプットしているのだ。立派な人だなと思った。 数分後、議論の流れを組みながら、少し話を振ってみた。名指しは避けたが、彼の立場から発言すべきテーマで。一瞬

#4 感受性のフィルター

2022年11月某日:『感受性のフィルター』 シャッター街を闊歩。物理空間には特段の目新しいコンテンツは見受けられない。田舎の生活では、よく『ウチのジモトには何もない』という話を聞くが、その多くは『物理×視覚』の空間に限定された議論であるように感じる。この『X*Y』の変数を色々と替えるだけで、地方の単位空間はより情報密度が高いものとなり、暮らしもまた豊かになるのではないか。 例えば、『物理×聴覚』ならば、環境音のユニークさに着目して、そのへんの音をサンプリングしてカッコイ

#3 『地域の声』を聞く技法と作法

本note『たのしい地方創生』では、ローカル・ビジネス・エッセイとして、地域活性化やまちづくりの現場からの考察をお届けしていきたい。 さて、今回は『声を聞く』というテーマを取り上げる。 地域経営の現場では、『声』という言葉を『①住民の声』『②顧客の声』という意味に分けて使用することが多い。 『①住民の声』とは、行政運営の領域の言葉である。行政機関が提供する住民サービスが、住民のニーズに沿ったものになっているかを検討する際に用いられる。 一方、『②顧客の声』とは、地域経営