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国際基軸通貨になるための条件 貿易赤字

国際基軸通貨になるための条件はMMT(現代貨幣理論)を学ぶと理解しやすい。

これから私が書く内容は、ランダルレイの本でもケルトンの本でも書かれているところを未だ私は見つけられていないので誰か教えて欲しい。ただ、「スペンディングファースト」の構造は、国内通貨の駆動力でも、国際基軸通貨の駆動力でも共通している。だから、MMTの文献でもどこかででているはずである。

国内通貨の駆動力は、租税貨幣論に見られるように、課税で与えられる。

税金を払わなければ捕まってしまう。
だから、お金(通貨)を常に持っているようにしなければならない。
だから、民間同士の決済にもお金が使われるようになる。

このように、国内通貨の駆動力は、租税によって与えられ、制度上、通貨は法貨として強制通用力を持つようになる。

しかし、国際通貨の駆動力は、国家が持つ強制力を背景にすることができない。
それではどうするか?

一つは帝国主義的に植民地にしてから自国通貨を流通させるという方法だ。
しかし、これは戦争をしなければならないので、二度の世界大戦を経験した諸国はこの方法を採れないことを認識した。

次の方法は、アメリカ合衆国が採った方法だ。それは、自国通貨ドルを世界中に貸し付け、自国通貨ドルで返させるという方法を採ることだ。この方法で、ドルは国際基軸通貨となる駆動力を得ることができた。

1945年の終戦時に、アメリカ合衆国は唯一残った西側超大国として、ブレトンウッズ体制を構築した。ドルだけが金と固定比率で交換ができる通貨として残り(これを「兌換」(だかん)という)、他国の通貨はドルとの固定レートの通貨となった。1971年まで続いた。

1971年にアメリカ合衆国はドルと金との兌換(だかん)を停止したのだが、1945年~1971年の間に、貿易収支の黒字国から赤字国への転換を果たした。その時にポイントになったのは、自国通貨建てで輸入を行う構造をデファクトスタンダード(事実上の標準)として作れるかどうかであった。

自国通貨ドルで支払う「スペンディングファースト」ができれば、世界中の人たちにドルを持ってもらうことができるようになる。第二次世界大戦後1945年以降の世界秩序では、領土・領海・領空ではなく、通貨の流通圏内が実質的な国土となる。

だから、当時、圧倒的な超大国であったアメリカ合衆国は、まずIMFや世界銀行などの国際機関を作って、ドルを中心とした国際的な貸付制度を作った。

借りている国はドルをアメリカ合衆国に返さなければならない。だから、アメリカ合衆国からドルを借りている国は、アメリカ合衆国に対する輸出の決済通貨をドルにしたいと望む。アメリカ合衆国への輸出でドルを得て、アメリカ合衆国への借金をドルで返すわけである。

アメリカ合衆国は自国内で生み出したドルを使って国際的な支払をする。そのドルは圏外居住者が保有するものであっても、国内決済に使われる。それによって、消費・投資両面に渡ってドル決済が活発になる。

その結果、消費は拡大し、消費に見合うように設備投資も拡大する。企業収益は改善するので、株価が上がる。資産価値は上昇。資産上昇により資産を担保にする銀行貸し出しも増え、信用創造が起きる。つまり、新しいドルが発行される。

このようなプロセスを経て、新たに生み出されたドルはアメリカ合衆国の国内に環流し、更なる消費と投資に充てられることになる。今度は、海外からの投資のために、ドル建て資産購入の決済通貨としてドルが世界中で必要とされるようになる。更にドルに対する世界の資金需要が増えることになる。

アメリカは用意周到にこのような構造を構築した。経常収支の黒字国、対外純資産国(国際純資産国)の地位にある国は、イギリスであれ、アメリカであれ、こういうことができるのである。

しかし、近代以降3番目の世界一の対外純債権国である国はその選択をしなかった。そう、我が国、日本だ。

日本は、実質的な宗主国であるアメリカに従属する道を選択したため、円建ての貸し出しや円建てでの輸入を進めなかった。その結果、世界一の対外純債権国である期間30年間とほぼ同期間、経済的な長期低迷にあえぐことになる。

さて、日本の次の純債権国はどのような戦略を採るのだろうか。
ドイツと中国、中華人民共和国である。

ドイツは、自国通貨マルクを国際基軸通貨にすることよりも、ユーロという共通通貨を作ることで欧州圏内での自国の支配力を強化することを選択した。世界第二位の国際純債権国が消極財政を選択するのはブラックジョーク以外の何ものでもないが、そのことによる経済的な弊害よりも、欧州圏内での支配を選択したわけである。同じ債権者であっても自国通貨を取り立てる債権者の立場は強い。積極国家化すれば景気はよくなるがユーロ圏内の諸国を借金漬けにはできない。だからドイツは今のような財政を抑制する方法を採っているわけである。

ドイツが「第3帝国」ならぬ「第4帝国」と揶揄されているのは、このような債権債務関係を使った支配の構造を構築してしまったことが背景にある。私は財政を共有しない多国籍通貨ユーロほど、倫理的に醜悪な通貨はないと言いたい。

もし、ドイツにそのような意図がないというのであれば、ユーロ圏内でも最強の債権国であるドイツは、圏内の債務国であるEU諸国に対して財政調整を行い、日本における地方交付税のように、EU諸国に対して毎年一定額のユーロを交付すべきだ。それをしないドイツは、ユーロ圏の盟主として倫理的に大きく欠落しているところがあると言うしかない。

話が脱線した。元に戻す。
このように、日本やドイツは3つ目の覇権国、自国通貨を国際基軸通貨にする国になることを選択しなかった。

でも、中華思想を持つ、次の純資産国、中国、中華人民共和国は違う。
戦略的に自国通貨元を国際基軸通貨にするための準備を整えている。

まず、アジアインフラ投資銀行AIIBを作った。多国通貨による貸し出しを意図しているが、中国の通貨、元の国際化を目指しているのは間違いない。AIIBが貸し出しを進める中で、元が決済通貨になっていく流れが作られる。

次に元借款の形で、二国間貸し出しを行うようになる。
そうするとその国が中国に輸出するときに元を決済通貨にすることに応じる、という形になる。

後は、アメリカ合衆国の通貨ドルが国際基軸通貨になったように、中華人民共和国の通貨元が国際基軸通貨になるまで事態を進めていくだけだ。
中国の経済的覇権はそこまで来ている。

中国の姿勢が案外フェアなのは、こういう狙いをきちんと日本においても伝えているからである。

閻学通教授(清華大研究院院長)が朝日新聞のインタビューで答えている(2014年4月11日)。
http://irohira.web.fc2.com/d68_Yen_Shueton.htm

「日本の円が、外貨準備に使われる国際的な通貨とならなかった大きな原因は、日本の貿易黒字にある。買うよりも売る方が多ければ、円は外に出て行かない。」

「米国のドルが強いのはその貿易赤字のためだ。人民元も同じ理由で世界に広がる。将来の米中の競争の一つは、どちらがより多く輸入をするかだ」

日本は明治時代以来の経済官庁である財務省が経済については無関心できているので現状の状態になってしまっている。ただ、財務省は国会が作った財政法によって縛られている。単純に財務省を非難することはできない。

私たち国民が非難すべきは、このような国際通貨の構造に目を背け、財務省の言うことに表面的に盲従する日本の国会議員だ。
さあ、これから私たちはどのような選択をすべきなのか。まもなく、今年の夏には参議院議員選挙がやってくる。

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