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香港国家安全法の9つのポイント

香港国家安全維持法が施行されたとたん・・・

香港警察は7月1日に、その前日(6月30日)に施行された「香港国家安全維持法」に違反した容疑で男女あわせて10人を逮捕しました。

中国当局は国際社会の批判を気にして少しは遠慮するのかな、とか、市民への周知期間を設けて最初は口頭注意だけにとどめるのかなとか思っていたら、施行した日からわずか1日足らずで何のためらいもなくあっさりと逮捕しましたね。

これで、香港の統制強化を進める中国当局の強硬姿勢がはっきりしました。

結局、7月1日の逮捕者は、違法集会や武器所持など同法以外の容疑も含めて約370人にのぼったそうです。

警察は逮捕した10人の中には、「香港独立」や2019年の大規模デモのスローガンだった「光復香港 時代革命」と書かれた旗やプラカードを掲げただけの人もいたようです。

特に最初に逮捕された男性は、香港島の繁華街、銅鑼湾(コーズウェイベイ)で取り調べを受けた際、「香港独立」と書かれた旗をバックパックの中に持っていただけで、即、逮捕されたというんですから。

怖いですね!

動画で見たい方はこちらをどうぞ(↓)

国家安全法の9つのポイント

「報道やネット監督規制を明記、外国人・企業も対象(7月1日付日経電子版)」によると、今回の香港国家安全維持法には次の9つのポイントがあります。 

私なりの解釈を加えながら見ていきます。

ポイント① 国家分裂、政権転覆、テロ活動、外国勢力との結託を処罰する。最高刑は終身刑となる。
最高刑を死刑にしていないところに一応、国際社会への配慮が感じられなくもないですが、香港国家維持法違反だけではなく、他の法律違反と合わせ技で死刑ということもないとは言えないのではないでしょうか。

ポイント② 香港の企業や外国人、香港外の犯罪にも適用する
香港市民に限らず、たとえ外国人であっても、香港内外で国家安全に関わる犯罪をした場合も適用する規定を明記したことは看過できませんね。

例えば、日本人が香港においてはもちろん、日本国内で「香港独立」などの横断幕を掲げた場合も、香港旅行などの際に逮捕される可能性もないとは言えないではないでしょうか。日本のマスコミはもっとこの点をきちんと報道しないと、日本人の逮捕者も出かねません。

ポイント③ 捜査では通信傍受や秘密監察が可能となる
この法律の下では、市民のプライバシーも、個人情報保護もへったくれもないということですね。スマホでのやり取りだけで逮捕されることも十分あり得ますね。

ポイント④ 中国が国家安全維持公署を設置。署員は香港で捜査を受けず、香港警察はこの公署に必ず協力しなければならない
要は、中国の出先機関である国家安全維持公署が香港警察の上に君臨するということです。香港警察は中国の国家安全維持公署の、言葉は悪いですが、いわば「飼い犬」となり、その言いなりにならざるをえないということです。

ポイント⑤ 中国政府は外国勢力介入など特定の状況下で管轄権を行使でき、中国本土で起訴・裁判もできる
中国政府は外国人の介入があったと判断したら、その外国人や関連する香港市民を中国本土まで連れて行って裁くことになるというわけです。

ポイント⑥ 行政長官が判事を指名するが、国家安全に危害を加える言動をしたものは指名できない
行政長官も中国が推薦した人の中から選ばれるわけで、指名される判事もその筋の人になるということです。要は裁判で判決を書くのは中国共産党の信奉者に限られるということですね。これでは公正な裁判など全く期待できませんね。

ポイント⑦ 学校、メディア、インターネットなどの監督・管理を強化する
これは教育やSNSを含めたメディア規制の強化ということであり、言論の自由のはく奪を意味しますね。

習指導部が香港で報道機関やネットへの締めつけを強めるのは9月の立法会選挙(香港の国会議員選挙)が念頭にあるとみられます。2019年は香港の地方議会に当たる区議会議員選挙で民主派が8割以上を獲得したことを考えると、立法会選挙で民主派が大勝利する可能性は十分ありそうです。中国当局は、民主派が過半数を握れば中国による香港統治が不完全なものになることを恐れているのでしょうね。

ポイント⑧ 国家安全の罪で有罪判決を受けた者は選挙に立候補できない
これもポイント⑦同様、中国による香港統治を完全なものにするための条項と言わざる得ませんね。

ポイント⑨ 香港国家安全維持法は香港の他の法律より優先する
これはまさに極め付きですね。つまり香港国家安全維持法は憲法のような存在となり、香港の立法会でどんな民主的な法律ができようが今回の国家安全維持法の前ではまったく無力ということですからね。

まとめ

以上、今回、成立施行された香港国家安全維持法の9つのポイントを紹介しましたが、その中身を知れば知るほど、これでは、「香港自治は死んだ」「一国二制度は有名無実化した」と国際社会から厳しく非難されるのも当然というべきでしょう。

中国当局は、国際社会の非難に対して「内政干渉」と反批判を繰り返していますが、人権にかかわる問題に関しては「内政干渉」で済ませることはできないはずなんですけどね。

また1984年に出された1997年から50年間は一国二制度を保障すると定めた中英共同声明にも違反しているので、国際法違反ともいえるのではないでしょうか。

いずれにしても、今後米英等による制裁は相当厳しいものになりそうです。日本もこの問題については単なる傍観者にとどまらず、自由・民主・基本的人権・法の支配を標榜する大国の一つとしてもっと主体的な対応をとるべきだと思うんですけどね。



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