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福島県桑折町の「上町CHEERS」をチアするアイアン看板。

福島県伊達郡桑折町。「くわおり」と書いて「こおり」と読みます。
福島市から北に10km程のところに位置し、かつては佐渡金山・石見銀山と共に日本三大鉱山といわれた半田銀山で栄え、現在は皇室献上桃の名産地としても名高いところです。(画像は桑折町公式HPより)

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その地名の由来は、古代の郡衙(ぐんがと読む。郡役所のこと)が置かれたことから郡(こおり)から来ているという説や、伊達氏の入部後に養蚕が奨励されたからとする説もあるとのこと。(参考資料;桑折町歴史的風致維持向上計画より)
また、同資料を読むと、古代律令制の時代から江戸時代そして近現代に至るまで、この桑折町が交通の要衝であったことがよく分かります。

実はついこの前まで桑折町も半田銀山も知らなかった私。桑折町の皆さん、本当に申し訳ございません!そんな私も昨年、たまたまご縁があって桑折町を訪れることになりました。

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(株)Tファクトリー代表の八巻克さん(中央)を囲んで

私が友人達とお邪魔したのは、昨年2020年の8月に桑折町上町に誕生したクラフトビール醸造所「半田銀山Brewery(ブルワリー)」とその併設カフェ「上町CHEERS(チアーズ)」です。

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こちらを運営する(株)Tファクトリーは、茨城県古河市に拠点を置く液体調味料メーカーである(株)つくば食品の子会社なんですが、前社長だった八巻克さんが母体であるつくば食品の代表を息子の大介さんに譲り、新たにTファクトリーを設立して代表を務めていらっしゃるそうです。
克さん、現役引退後はビール造りが夢だったんでしょうか?いえ、決してそういう訳ではありません。実は克さんのご出身がこの桑折町で、

自分が生まれ育った故郷への恩返しとして地域活性化に貢献したい!

という熱い志のもとに新たな事業を起こされたというのです。その想いを聞いただけでも背筋がしゃんと伸びる気がします。

「誰でも立ち寄れる地域のコミュニティスポット」というコンセプトでオープンした「上町CHEERS」と、桑折町の新たな特産品づくりを目指す「半田銀山Brewery」、やはり気になるのはビールですね!一体どんなビールを作っているんでしょう?

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左(青)「半田銀山ペールエール」・・・モルトとホップの絶妙なバランスによるスッキリと飲みやすい​スタンダードなペールエール

中央(赤)「半田銀山IPA」・・・モルトとホップをたっぷり使用した旨味と風味が​しっかり味わえるIPA

右(緑)「王林ペールエール」・・・桑折町発祥りんご「王林」の果汁を加え爽やかな口当たりとほのかな甘みが特徴

なんと「王林」が桑折町発祥だったとは!初めて知りました。桑折町のポテンシャルに驚くばかり。そしてこの「王林ペールエール」、りんごの爽やかな香りと甘みが絶妙でゴクゴク飲んでしまいたくなる美味しさでした。ビールが苦手な人でもこれは「美味しい!」って感じて頂けるのでは。

Yahoo!ショッピングで飲み比べセットが販売されていますので、福島に行く前にまずはネットでお取り寄せもありですね。


続いては「上町CHEERS」の料理のご紹介ですが、ランチメニューがゴージャス!

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プレートランチはお肉もお魚も選ぶことができるし野菜もたっぷり!
野菜は敷地内の菜園で採れたものもふんだんに使われていて、例えばこちらはピクルス用のニンジン!

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そしてサラダに使うルッコラ!

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魅力的過ぎますね。こういうお店が家の近くに欲しい。切なる願いです。

レストランとブルワリーを立ち上げる際には地元の方々とも広く交流をはかり、農家さんとの繋がりやスタッフの採用などひとつひとつを丁寧に積み重ねていったそうです。
現地でお会いしたスタッフの皆さんはとても気持ちのいい笑顔で私たちを迎えてくれ、更には忙しい仕事の合間を縫ってブルワリーの醸造設備についても色々と説明をしてくれました。お世辞ではなく本当に気持ちのいい対応だったことを今も思い出します。
もともと母体である「つくば食品」は調味料製造メーカーですから「飲食店の立ち上げから店舗のオペレーション、そして接客トレーニング等はどうやって進めていったんだろう」「大変だったこともあるんじゃないか」と経営者としてはついついそういうところが気になってしまいます。

そこで、店舗の立ち上げ準備を父である克さんと共に進めてきた大介さんに話を伺うと、

「やっぱり人ですね。」という回答が。詳しく聞いてみると、

「今この土地に必要なことは何か、そしてこの町にどんな賑わいを作りたいのか、地域の課題をどう解決していくかという『魂』を地元のスタッフみんなに持って貰うこと、そこに今も一番注力してます。」ということでした。

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鮮やかなイエローパンツが似合うオシャレ星人・八巻大介さんと。

液体調味料メーカーである「つくば食品」と、地域の魅力づくりと発信に取り組む「Tファクトリー」。この2つの企業が一体となって向かう先は、「食」という領域での広範囲に渡る社会貢献であると感じました。「食」の「安心」と「安全」に責任を持つだけでなく「おいしさ」から生まれる豊かさ、そして循環する地域社会を追及する事業活動の中で「人材の育成」に大きな力を注いでいる姿が今回の店舗訪問で強く印象に残りました。

地域の魅力は名産や名所ではなく、人である。

これは私個人の考えですが、自分自身が地元の地域活性化に取り組んできた中で得た学びのひとつです。
今回初めて訪れた桑折町でしたが、その歴史を振り返れば町の人々がその地域の魅力を磨き続けてきたことを伺い知ることができます。
江戸から明治にかけて隆盛を極めた半田銀山ですが、大正以降その勢いは次第に衰えていきます。時を同じくして当時盛んだった養蚕業が不振となり、桑畑は桃を育てる果樹畑へと移り変わっていきました。この土地の特性を見極めて植える場所や品種そして栽培方法などを研究し、大きく変化する時代の中で様々な試行錯誤を何年何十年にも渡り繰り返した当時の人々の挑戦と努力は想像に難くありません。そうした先人達の努力の結晶が「桃の名産地」という称号に繋がっているのです。

だとすれば、きっとこの桑折町はそう簡単には崩れないと思いました。現にこうしてブルワリーとカフェレストランが誕生したのですから。桑折の遺伝子を受け継ぐ人が再びその場所へと戻り、新たな挑戦を始めたのです。

それはつまり、新たな果樹園に木を植えたことになります。

渋谷のBunkamuraに「Orchard Hall(オーチャードホール)」という劇場がありますが、「Orchard」とは果樹園のことを言います。公演を果実に見立て、果実がたわわに実る場所という想いをこめたネーミングだとBunkamuraのサイトにその由来が載っていました。

地域活性化という言葉はよく聞く言葉ですが、地域の「何」を「どう」活性化するのかという指針を明確にしている人は割と少ないのでないかと感じています。それぞれが好き勝手な音を出していては調和のとれたハーモニーなぞ生まれません。つまり指揮者が必要なんですね。束ねてこそチカラです。
近い将来、この新しい果樹園の木々には多くの実がなることでしょうし、そこでは様々な音が奏でられるでしょう。その一つ一つの音が人であり、どんな曲をどんなテーマでどう鳴らすかを指揮するのもやはり人です。
地域の魅力は人である。そしてそんな魅力的な人が実り、美しい音楽を奏でる果樹園が「上町CHEERS」である。私はそう感じました。


さて、ようやくアイアン看板のお話です(笑)。
今回は八巻大介さんからご依頼を頂き、「上町CHEERS」のオープンに合わせてエントランスのドアに設置する看板をアイアンで製作させて頂きました。

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製作の際にはロゴデータを支給して頂き、イラストレーターのデータをCADに変換しレーザー加工用に微調整。特にアルファベットの「A」や「R」の文字は、真ん中が抜け落ちてしまうのを防ぐためにジョイントで繋げる必要があるので、全体の雰囲気を壊さないよう出来るだけ細くしつつも十分な強度を保ちます。
また設置場所が屋外になるので、塗装は風雨に耐えられるようある程度の艶感は持たせながらもマットなテイストに。表面に若干のシボを出して風合いを高めています。
お客様がお店に入られる際に目にする重要なプレートなので梱包作業にも気を配り、入り口のドアに無事に設置された写真をみた時はホッとしました。



最後に。
つくば食品のホームページに「心味」という言葉がありました。
社内公募で生まれたというこの言葉には、「試み」という挑戦の意味と「心にとどく味」という2つの意味が込められているそうです。もしかすると桑折の先人たちも「試み」と「心味」で美味しい桃を育ててきたのかも知れませんね。

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宿場町の面影を残した町割りや復元された旧伊達郡役所。そしてほど近い場所には日本を代表する名湯・飯坂温泉。今度まとまった休みが取れた時には私も福島・桑折界隈でナイスなメロディーを奏でてこようかと思ってます。

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「上町CHEERS」へのアクセスはJR東北本線の桑折駅から徒歩5分、車だと東北自動車道の国見ICから10分程です。


アイアン看板の詳細はTexture web storeの商品ページをご覧ください。

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