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祖父と農家の記憶を家具に繋いで。

noteをご覧頂きありがとうございます。
アイアン家具と雑貨を扱う「Texture」は「物語のあるものづくり」を目指して2021年4月に立ち上がったばかりのWEBストア。このnoteでは「Texture」がプロデュースする商品のことや仕事で関わる様々な人や場所について、日々少しずつですがご紹介していきます。

「Texture」を運営するNisseiは精密板金加工という金属加工の会社で、所在地は茨城県の河内町です。河内町というのは茨城の中でも南に位置しており、利根川を挟んで向こう側は千葉県、成田空港までは車で30分程の距離にあります。

この河内町、周りは見渡す限りの田園風景が広がるのどかな地域です。

田園風景河内

これは茨城県だけの言い方なのかも知れませんが、農機具や収穫したお米などをしまっておく蔵あるいは倉庫のような場所のことを、地元の人は昔から「までや」と呼んでいます。今回はその「までや」の奥で眠っていた古材のお話。

「までや」には、トラクターのような大型の機械から鍬や鎌のような小さなものまで、日々の農作業に必要となる様々な農機具が収納されていますが、それだけではなくお米も蓄えられていました。
秋に収穫したお米は大切な食糧。長期間貯蔵しておくためにはネズミなどの外敵からお米を守らなければなりません。そこで「までや」には高い壁のような羽目板式の収納庫がありました。言葉で説明するのは難しいですが、間口の左右にある溝の間に上から順番に板を落としていくと壁のように仕切りが出来上がります。この空間の中にしまっておくことで大切なお米を外敵から守っていたそうです。
また、この間仕切りは「までや」の中にいくつかあることが多く、外した板がどの仕切りの何番目かがわかるよう、各板には「は五」などの番号が書かれていました。

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この板の持ち主、実は「Texture」を運営するNisseiのご先祖で現専務のおじいさんです。おじいさんは左官職人として働く傍ら農業も兼業していたそうですが、おじいさんの長男である現社長が金属加工の仕事を始めると自分たちで農業をすることはなくなってしまい、使わなくなって老朽化した「までや」の解体が決まった時に、専務がおじいちゃんの思い出のひとつとして使えそうな板を取っておいたそうです。字が上手で優しい人だったというおじいさんが書いた文字をそのまま残せたことに専務も嬉しそうでした。

元々は農業が盛んだった河内町も、世代が変わるごとに人々の暮らし方や働き方も変わっていき、仕事と農業を掛け持ちする人は次第に少なくなっていきました。こうして残された1枚の板は、時代と共に移り変わっていった地域の暮らしの歴史を物語る存在ともいえるでしょう。

そんな「までや」の物語を今回は棚としてリプロダクトすることになりました。板の表面に残された筆文字をそのまま生かすために、文字が消えないよう気を使いながら水拭きして板の汚れを取り除き、それからオイルステインを使って深みのあるダークブラウンに着色。

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棚を受ける金具は「クロカワ」という鉄独特の風合いを生かすためにシンプルなアングル材を選び、つや消しクリア塗装で仕上げています。

私たち日本人にとって大切な食糧であるお米を「までや」の中で守り続けた板。ただの板といえばそこまでですが、米を取り出すために枠から外してまた元に戻す、という労働作業と共に何十年という時を重ねてきたこの板からは、「それっぽく」加工したエイジング処理では決して表現することのできない、リアルな時間軸の中で刻まれたキズや欠けを感じ取ることができます。それはまさにおじいちゃんの皺のよう。

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茨城の片田舎にあった「までや」はもう取り壊されてしまいましたが、そこで使われていた1枚の板は新たなプロダクトへとカタチを変え、商品を気に入って下さった誰かの暮らしの中で存在していく。
こうした経緯の商品ですので、数量限定となります。現在すぐお出しできる在庫は2個で、未加工の板の在庫が3枚。未加工分についてはお好きなサイズに合わせてお作りすることも可能です。
もしご興味を持って頂けましたら当ストアからお買い求め、またはお気軽にお問合せください。

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Texture Web Store

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