サブスクリプションビジネスを考えてみた その2
前回に続き、サブスクリプションビジネスについて考えてみたことを書いてみる。
一言にサブスクリプションといっても、身の回りにもいろいろなパターンがあり、少しグルーピングしてみると全然違っていて、それぞれにあった適切な戦略がいるように思う。
3つのサブスクリプションパターン
1.定期サイクルで物が送られてくるパターン
2.使いたい時だけ物を使って、不要なら返却するパターン
3.映画や音楽、IT関係などのサービスで物自体はないパターン
1.定期サイクルで物が送られてくるパターン
これにも2種類あり、ユーザが選んだ確実に消費するもの(洗剤やミネラルウォーターなど)が送られてくるタイプと、そのサービスのキュレーターなどが選んだものが送られてるタイプがある。
物にもよるが、比較的、月額は低額になる傾向にあると思う。
2.使いたい時だけ使って、不要なら返却するパターン
家具やデジタルガジェットなどがこのパターンに近いと思う。服などのファッションも該当するかもしれない。
物にもよるが、前回の理論でいくと、一時的な大金を払いたくないことへのアプローチも含むため、比較的、高額になる(できる)傾向にあるが、内容によってはただのレンタルサービスとも言える。
3.映画や音楽、IT関係などのサービスで物はないパターン
NetflixやSpotify、オンラインストレージやOffice365、AdobeのCCなどがこれに該当し、提供されるコンテンツや機能の追加で、その魅力を維持するか、ないと困る状況にまでもっていく必要がある。価格設定の難しさと、差別化の難しさがある。差別化という点では、同じサービスの無料版と有料版があると、同じサービスでの差別化がまず最初の壁になるかもしれない。
月額で考えると、これも比較的、低額になる傾向があると思える。
2と3に比べ、より難しく、かつチャーン率の高そうなのが1であり、ところが新規参入したがる傾向が多いのも、やはり1なのではないかと思い、1について思ったことを少し掘り下げてみる。
定期サイクルに物が送られてくるパターンに思うこと
Hitwise社のある調査によると、物が届くサブスクリプションは、食品・化粧品・アパレル・ライフスタイルの順に人気があり、特に食品と化粧品の割合が高いらしい。
食品で多いパターンが、食材とレシピがセットで届く系や、極端には食事が届くもの。化粧品で多いのが、サブスクリプションビジネスの元祖といわれるBirchboxや、現在人気のipsyに代表される化粧品のサンプルなどが毎月送られてきて、そこから気に入ったらフルサイズ版の購入につながるもの。
ところが、実は食品(特に食材とレシピが届くいわゆるミールキット)はチャーンが高いらしい。これは想像に難くなく、正直面倒くさいのだと思う。届いたものに対して、その日なり、限られた時間の中で、アクションをしなくてはいけないものは面倒くさい。買い物がなくても料理というアクションが嫌な日は必ずあるし、食べたくないものが届く日もある。どうなるかというと冷蔵庫にたまる。邪魔な上に、捨てるものもでてくるし、それがなぜかナマ物だった瞬間に罪悪感さえ生まれる気がする。
子供のころ、開いていない進研ゼミのテキストがたまっていった人はいないだろうか。あれ。あれにさらに罪悪感付き。
化粧品が上手なのは、アクションがユーザ任せになっている点。さらにipsyのようにインセンティブを設けることで、自主的なアクションが次の価値を生むように仕掛けられているところは良くできている。そして、なによりターゲット層とうまくマッチしている点が大きい。
一般に、サブスクリプションを好むのは、ミレニアル世代、比較的裕福、女性、実店舗よりオンラインショッピングを好む人、という傾向があるらしい。特にこの最後のオンラインを好むという点は大事だな、と思っていて、想像だけど、きっと面倒くさがりだったりコミュニケーションが好きじゃない人が多いのではないかと思っている。だから、デパートの1Fで店員と話しながら化粧品をお試しする人ではなく、そういう時間がもったいなかったり、出来れば店員と会話せずに、でも新しい物は試したいし、比較的良い物を使いたい、という心理とマッチしているのじゃないかと思う。
結局は、サブスクリプションであろうとなかろうと、オンラインであろうと実店舗であろうと、消費者心理やニーズとのマッチングなのは何をするにしても当たり前ということなのだと感じずにはいられない。
逆に言うと、本当にそこを捉えてさえいれば、売り方はなんだって良いのかもしれない。
文具とサブスクリプションの相性
さて、今回も文具にふれることが出来ずにここまできてしまったが、まさに文具でサブスクリプションを考えると、この1になりそうである。万年筆などの高級文具などでうまくやって2に繋がるかどうか。ただ、サブスクリプションを好む層から考えると、中古品と距離を置きたくなる人も一定数いるだろうから、相当2の敷居は高い気もする。
実際に、1の例としてSpotlight Stationeryというサービスがイギリスにあるが、これは月£25~(+送料)でキュレーターの選んだ文具セットが届くサービス。これは人のセンスや趣味、その国や地域の傾向によるところが大きいので一概には言えないが、少なくとも私に関して言えば、使いたい文具が1つも含まれていなかった。
低額のサービスは、薄利多売で、とにかくアクティブユーザー数が増えないといけないので、そのサービスが人のセンスに依存するものには難しいのではないかと感じる。とりあえず良さそう!っていう第一印象があって、その次に価格や必要性を吟味する順番なので、第一印象でなびかない確率が一定数あると、これはもうなかなか・・・。
そもそも文具っていうのは、私たちみたいな大好きなユーザのパイは小さく、しかも大好きな人ほど自分で選びたがるこだわりがあるし、そこに含まれない人はたまに&必要なときに機能ベースで買うっていう代物が多い。そのため、どうしても”誰かが選定した文具”との相性やニーズは極めて悪く、結果として、このビジネスモデルと相性が悪いのではないかなと。きっとこれは文具だけではなく、近い発想で合わないカテゴリはいくつか分かるのではないかという気はする。
逆に、この手のカテゴリがこのビジネスモデルを行う場合に価値があるのは、なかなか出来ない”お試し”という機会の提供、もしくはデザインとかキュレーションとかではなく、実用に特化して、法人向けに同じものを提供し続けるサービスなのではないかと思うようになってきた。
というわけで、お試しや法人向けというところを今度は考えてみようと思いつつ、本日はいったんここまで。
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