部長

一緒に見ていた軽音楽部の友達に
あの人は誰かと尋ねると
軽音楽部の3年生の部長だ
という情報が得られ
ライブが終わるまでずっと
私は部長を目で追い続けた。

当時最先端だったドコモのガラケーの
粗すぎるカメラで
ライブの動画を撮っていたので
帰宅後もニヤニヤしながら
何度もその動画を見た。













私はそのお気に入り動画を
何人かの友人に見せたが
あまり良さを理解してもらえないことが
大半だった。


部長は一般的によくいう
イケメンの部類ではなかったが
細身で小柄な軽音部の部長は
憧れの先輩となった。

しかし
田舎の中学出身の
田舎感丸出しの私が
2こ上のバンドマンな先輩に
話しかけられる訳もなかった。

学年も違うので
見かける機会すら少なくて
見かけた日は幸せぐらいの毎日で

どうやら彼女がいるということもわかり

まぁ、いなかったところで
きっと何のアクションも
出来なかったにちがいないが

とにかく何の接点もないまま
3年生の部長は
あっさりと卒業してしまった。

卒業後は進学で他府県に引っ越したと
風の噂で耳にしていた。

Facebookで部長を見つけたけれど
何のメッセージも送れずに終わった。

もう一生
関わることの出来ない相手だと思っていた。

友人が紹介しようと言ってきたのは
その部長だった。