[2023年9月19日火曜日]触りたい本能

　肉球、あご肉、お腹。
　それらを触りたくなる、本能。
　人は動物の前では本能のままに。
　だけど、同じ他人の前では。
　それができなくなる、不思議さ。
　きっと、人の天敵は他人だから。



テツガクちゃん
　猫の肉球、犬のあご肉、アヒルのお腹。
　それらを触りたくなる、本能。

　ぷにぷに、もふもふ、すべすべ。
　そんな想像を確かめたくなる、本能。

　食べられそう、なぎ倒されそう。
　そんな危険を避けたくなる、本能。

　人は動物の前では。
　本能のまま、触れ合えますが。

　同じ他人同士だと。
　それができなくなる。
　なんとも不思議なものだと。
　気づいてしまいました！　私！


肯定
　不思議だね。
　まあ、アレじゃないかな？

　羊が狼に触れたいと思わないように。
　人も他人に触れたいとは、思わないのかも。


テツガクちゃん
　つまり……。
　人の他人は、同じ他人ということですか？

　それはそれで。
　変わらずに、不思議ですね。


肯定
　他人は不思議が多いんだよ。
　だから、『ハラ、ハラ、ハラ』って。
　秘密の暗号無線が聞こえるのかも。

　動物の前では。
　触りたい本能のまま。
　もふもふ、ぷにぷに、すべすべ。
　それらを確かめたいって思うけど。

　目の前の他人の温度は。
　知りたくもない。
　もし、冷たかったら。
　夜、眠れなくなっちゃうから。


テツガクちゃん
　そんな理由でしたか！？
　私だったら、尚のこと。
　その温度を知りたくなってしまいます！

　もし、本当に冷たかったら。
　幽霊の正体見たり他人です。

　果たして、肯定さんの温度は……。


肯定
　僕、平熱が低いんだ。
　詐欺師だからさ。
　いや、吸血鬼だから？

　とにかく、低いんだ。
　だから、驚くことはないよ。
　想像通り、冷たく冷酷冷徹でも。


テツガクちゃん
　肯定さんは冷たい、と……。
　さて、それを確認する、その前に。

　肯定さんの本能は。
　今、私のどこに触れたいのでしょうか？
　遠慮なさらず、素直に正直にお願いします！　

　…………。
　……そんなに考え込まなくても。
　えっ、なんですか？　幽かな小さな声で。
　私の……手ですか？
　それなら、私の右手でよろしいですか？

　あっ、肯定さんの手、あったかいですね。
　さっきは、冷たいって言うから。
　やっぱり、触れてみないと。
　本当のことは、わからないですね。

　目の前いる、その人が。
　本当に存在しているのか、存在していないのか。
　それを確認するまでは。
　『存在と同時に存在しない』でしたよね？

　あなたなら。
　私のどこに触れたいのでしょうか？
　遠慮なさらず、素直に正直に本能のままに。

　触れられないものは。
　信じられないのですよね？
　それでしたら、あの『ハラ、ハラ、ハラ』だって。
　今、この瞬間には存在しません。
　誰もアレに触れたことがないのですから。

　いつか、本能のまま。
　触れ合うのが当たり前な今がきたら、と。
　そんなことを思うのは。
　やっぱり、変なことでしょうか？

　このまま、羊と狼のような関係が。
　人と他人の良好な関係なのでしょうか？
　SOSです、私はアリスさんではありませんが。
　助けていただけますか？

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それでは、また次の機会にお会いしましょう。

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