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[2021年7月7日水曜日]鏡に映る誰かとは握手できない

 鏡に映る誰かとは。
 いつまでたっても永遠に。
 握手ができない。
 そんな誰かが自分の姿だって。
 信じてしまうのは、なんとも不可思議だ。

テツガクちゃん
 鏡に映る誰かとは。
 いつまでたっても永遠に。
 握手ができないことに。

 気づいてしまいました! 私!

 私がインクで汚れた右手を出せば。
 鏡に映る誰かは。
 私にとって右側の手を出します。

 そして、その手は。
 私と同じようにインクで汚れています。

 ですが、私の手とは違う気がします。
 

肯定
 気づきもしなかったよ。
 だけど、本当だね。

 鏡に映る誰かとは。
 握手もできやしない。

 おまけにそれが。
 どっちの手なのか。
 わかりやしない。

 そんな誰かが。
 自分の姿だと信じるなんて。
 随分と不可思議だね。


テツガクちゃん
 不可思議ですね。

 向かい合った、私と肯定さん。
 肯定さんが右手を差し出して。
 私も自分の右手を差し出せば。
 簡単に握手ができます。

 向かい合った時。
 私にとっての左は。
 肯定さんにとっての右。

 そんな当たり前に然り当然な平常は。
 鏡と向かい合った瞬間に。
 消えてしまいます。

 普段の当然では。
 わからない、そんな得体の知れない世界が。
 あの鏡の向こうには。
 果てしなく広がっています。

 それを恐れ怖れる。
 動物の気持ちもわかる気がします。


肯定
 そうだね、不気味だね。
 
 鏡に映る、握手もできない誰か。
 到底それが自分とは思えず、気味が悪い。
 そんな心情もわかる気がする。

 だけど、鏡に映る誰かよりも。
 不気味で恐ろしく怖いのは。

 鏡に映るのは自分だよ、と。
 いい加減なことを教わって。
 それを簡単に信じ続けてきた、自分自身。

 きっと、動物の反応は。
 何も変ではなくて。
 もし、ありもしない極普通があるとしたら。
 動物の反応が極普通なんだろうね。


テツガクちゃん
 限りなく極普通なのでしょうね。

 ですが、私達は。
 鏡に映る誰かは自分の姿って。
 よくわからないことを信じてしまう。

 それが、私達の当然な極普通ですね。
 

肯定
 そうみたい。

 物語に登場する人物を信じる。
 そんなドン・キホーテは変人で。
 だけど、鏡に映る誰かを自分だと信じて。
 身だしなみを整えている自分はまともで。

 なんとも不可思議だね。

 普段の当然では。
 わからない、得体の知れない世界の入り口の鏡。
 その向こう側で、向かい合う握手ができない誰か。

 あなたなら。
 その正体をなんと見ますか? 


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それでは、また次の機会にお会いしましょう。


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