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雨森れに
2021年5月16日 02:16
朝起きると、小春の鳴き声がした。もともと吠えない子だったが、最近は体調のせいか全く聞いていなかった。元気になったのかもしれない。百合子は期待を胸に、慌てて庭へ出た。朝露で足を濡らしながら向かう。小さな茶色い背中がせっせと動くのが見えてきた。小春が穴を掘っていた。知識として犬が地面を掘ることは知っていたが、見るのは初めてだった。前足で一心不乱に掘り進めている。しばらく見ていたい
2021年5月9日 04:04
斎藤家の家は、いかにも日本の屋敷という雰囲気だった。元々地主の流れを汲む家柄のため、土地が広く造りも古い。駅からかなり離れているその場所は、東京都内とは思えない雰囲気だ。近隣住人から別名『猫屋敷』と言われていて、常に猫を多頭飼いしている。聞けば、何代か前の当主の妻からの言いつけで猫を可愛がっているそうだ。「言いつけで?」阿達はメモから視線を外し、斎藤百合子の顔を見つめた。「とにかく猫